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59,魔改造の真髄。
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魔改造鍬〈スーパーコンボ〉の復活は劇的──なものではなく、鶏が卵を産むようにあっさりしていた。
いや鶏が卵を産むのに、生命の神秘を見ることもできるのだ。
とにかく、ポンという音とともに、〈スーパーコンボ〉が復活。
一方、私は出血多量で倒れた。このときも、まだ両手首からは血がだらだら流れている。あれ、このまま死ぬパターン入ったのでは?
われわれのギルド本拠地内からは、激しい戦闘音が轟き、さらに複数の悲鳴が聞こえてきた。壊滅ギルドという、まったく捻りのないギルド名と傍若無人だけが取り柄の連中さんたちが、攻め込んできたようだ。
「ギルドマスター! ギルドマスターはいらっしゃいますか!?」
と、サラさんが駆けこんでくる。
ところで私は、血が足りないせいか、こんなことを考えていた。なぜギルド長のことをギルドマスターと呼ぶのだろう。カッコいいからだろうか。ちなみに、ここいにるギルドマスターは失血死一歩手前でございます。
サラさんが私に気づき、駆け寄ってきた。
「ギルドマスター! 誰がこんなことを!」
「私です…………血、血が足りない、血」
「まずは止血を、止血しますから!」
サラさんが応急手当で止血し、私を抱え上げて医務室まで運んでくれた。そこでは、どこかの従属ギルドから加入した医師さんが慌てて対応。輸血を開始。
ところが、すぐに全身を灼熱の痛みが駆けまわる。
私は輸血の針を抜いて、飛び起きた。ダメだ。人間の血はもう受け付けない。
そういえば魔物化してからは、基本的にエルフの里の病院にしか入院していなかった。魔素の血でも輸血してくれていたのだろうか。
魔素──魔素──魔素の血が必要。私に、血をください。廊下に飛び出し、なかば錯乱しながら、地下室に入ってドアの鍵をしめた。
体内から、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんが這い出してくる。
「キミは世話が焼けるなぁぁ。いつになったら、アタシの弟、殺してくれるの~?」
私は、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの二本ある角(つの)の片方をつかんだ。
全血液量の3分の1はすっかり出ていってしまった。かなりのショック状態で、私は立っているのもやっと。というか全身の痙攣が甚だしい。
それでも、角(つの)から手は離さないのだ。
「角(つの)と、血を、ください」
〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さん、困惑した様子。
「……血はあげるけど、角(つの)まで~? なんで?」
私はぐっと身を乗り出し、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの左眼球を舐める。いやいや自分でも、なんでそんなことしたのか、意味不明だけども。でも人は、死にかけると、美人さんの眼球をぺろぺろしたくなるのだい。
「強化素材が、欲しいの、です」
「おお……………えーーー、本当に? アタシたちのような最上位個体の魔物は、死んだら復活することはないんだよね~。つまりさ、腕を失えば、その腕は戻ってこないあたり、キミたち人間と不便さは同じ。だから角(つの)だって、失ったら、もう生えてこないんだよね~」
「角(つの)を寄こすのです。私を強くするために、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)は、スターターキットと、なるのです」
〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんは深ーく、深ーく呼吸した。
「アタシは、ただのんびり生きたいだけなんだよね~。わかるかな、スロウライフが望みなの。日がな一日、寝ていたいの。何万年だって寝ていたいの。アタシの人生プランに、自分の角(つの)を引き抜くはないんだよね~」
「よ・こ・せ!!!!!」
※※※
3分後。
地下室から上がると、サラさんたちが心配そうな面持ちで立っていた。
「ギルドマスター、お体のほうは大丈夫なんですか? 早く輸血を」
「いえ輸血はもういいんです。血はもう足りています」
いまや、私の全身を〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんから輸血してもらった、最上位魔物の血が走っている。
そして私の右手には、角(つの)。
〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんが半泣きになりながら、みずからの額より引き抜いた最強の強化素材。
「ギルドマスター! いま我々のギルド本拠地は急襲を受けています! ロクウさんたちが奮闘していますが──敵が、あまりに強くて」
ロクウさんでも苦労するなんて。壊滅ギルドとは、どんな人たちなのか。
「分かりました。私が、すぐに行きますから」
まずは自室に戻り、〈スーパーコンボ〉を手に取る。
さて。強化素材を得たが、どうやって使うのだろう。
と、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)が、暗黒粒子に変換され、〈スーパーコンボ〉に降り注ぐ。つづいて〈スーパーコンボ〉の形態が少し変わる。
全体的に、いかつくなった。
Lv.241だった武装レベルが、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)という強化素材によって、一気に跳ね上がる。
武装Lv.1032へ。
わぁ、いきなり四桁突入とは。〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さん、角(つの)一本でここまでとは。998階の魔物は伊達ではない(なんか半泣きになっていて可愛かったけども)。
また武装Lv.が爆上がりしたことで、一気に7324ものスキルポイントをゲット。
さらに新たなスキルツリー領域、『怠惰』が開かれる。『怠惰』領域のひとつ目の未解放パネルを、さっそく必要な500スキルポイントを使って、開く。
《怠惰心地》──『バトル中ものんびり行こう。自分が急がないために、自分以外の時間の流れを緩慢にする。スキル使用者の体感時間で、30秒連続して発動できる』
ほう。少しですが、時を操れるようになったようで。
私も出世したものだなぁ。
いや鶏が卵を産むのに、生命の神秘を見ることもできるのだ。
とにかく、ポンという音とともに、〈スーパーコンボ〉が復活。
一方、私は出血多量で倒れた。このときも、まだ両手首からは血がだらだら流れている。あれ、このまま死ぬパターン入ったのでは?
われわれのギルド本拠地内からは、激しい戦闘音が轟き、さらに複数の悲鳴が聞こえてきた。壊滅ギルドという、まったく捻りのないギルド名と傍若無人だけが取り柄の連中さんたちが、攻め込んできたようだ。
「ギルドマスター! ギルドマスターはいらっしゃいますか!?」
と、サラさんが駆けこんでくる。
ところで私は、血が足りないせいか、こんなことを考えていた。なぜギルド長のことをギルドマスターと呼ぶのだろう。カッコいいからだろうか。ちなみに、ここいにるギルドマスターは失血死一歩手前でございます。
サラさんが私に気づき、駆け寄ってきた。
「ギルドマスター! 誰がこんなことを!」
「私です…………血、血が足りない、血」
「まずは止血を、止血しますから!」
サラさんが応急手当で止血し、私を抱え上げて医務室まで運んでくれた。そこでは、どこかの従属ギルドから加入した医師さんが慌てて対応。輸血を開始。
ところが、すぐに全身を灼熱の痛みが駆けまわる。
私は輸血の針を抜いて、飛び起きた。ダメだ。人間の血はもう受け付けない。
そういえば魔物化してからは、基本的にエルフの里の病院にしか入院していなかった。魔素の血でも輸血してくれていたのだろうか。
魔素──魔素──魔素の血が必要。私に、血をください。廊下に飛び出し、なかば錯乱しながら、地下室に入ってドアの鍵をしめた。
体内から、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんが這い出してくる。
「キミは世話が焼けるなぁぁ。いつになったら、アタシの弟、殺してくれるの~?」
私は、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの二本ある角(つの)の片方をつかんだ。
全血液量の3分の1はすっかり出ていってしまった。かなりのショック状態で、私は立っているのもやっと。というか全身の痙攣が甚だしい。
それでも、角(つの)から手は離さないのだ。
「角(つの)と、血を、ください」
〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さん、困惑した様子。
「……血はあげるけど、角(つの)まで~? なんで?」
私はぐっと身を乗り出し、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの左眼球を舐める。いやいや自分でも、なんでそんなことしたのか、意味不明だけども。でも人は、死にかけると、美人さんの眼球をぺろぺろしたくなるのだい。
「強化素材が、欲しいの、です」
「おお……………えーーー、本当に? アタシたちのような最上位個体の魔物は、死んだら復活することはないんだよね~。つまりさ、腕を失えば、その腕は戻ってこないあたり、キミたち人間と不便さは同じ。だから角(つの)だって、失ったら、もう生えてこないんだよね~」
「角(つの)を寄こすのです。私を強くするために、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)は、スターターキットと、なるのです」
〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんは深ーく、深ーく呼吸した。
「アタシは、ただのんびり生きたいだけなんだよね~。わかるかな、スロウライフが望みなの。日がな一日、寝ていたいの。何万年だって寝ていたいの。アタシの人生プランに、自分の角(つの)を引き抜くはないんだよね~」
「よ・こ・せ!!!!!」
※※※
3分後。
地下室から上がると、サラさんたちが心配そうな面持ちで立っていた。
「ギルドマスター、お体のほうは大丈夫なんですか? 早く輸血を」
「いえ輸血はもういいんです。血はもう足りています」
いまや、私の全身を〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんから輸血してもらった、最上位魔物の血が走っている。
そして私の右手には、角(つの)。
〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんが半泣きになりながら、みずからの額より引き抜いた最強の強化素材。
「ギルドマスター! いま我々のギルド本拠地は急襲を受けています! ロクウさんたちが奮闘していますが──敵が、あまりに強くて」
ロクウさんでも苦労するなんて。壊滅ギルドとは、どんな人たちなのか。
「分かりました。私が、すぐに行きますから」
まずは自室に戻り、〈スーパーコンボ〉を手に取る。
さて。強化素材を得たが、どうやって使うのだろう。
と、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)が、暗黒粒子に変換され、〈スーパーコンボ〉に降り注ぐ。つづいて〈スーパーコンボ〉の形態が少し変わる。
全体的に、いかつくなった。
Lv.241だった武装レベルが、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)という強化素材によって、一気に跳ね上がる。
武装Lv.1032へ。
わぁ、いきなり四桁突入とは。〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さん、角(つの)一本でここまでとは。998階の魔物は伊達ではない(なんか半泣きになっていて可愛かったけども)。
また武装Lv.が爆上がりしたことで、一気に7324ものスキルポイントをゲット。
さらに新たなスキルツリー領域、『怠惰』が開かれる。『怠惰』領域のひとつ目の未解放パネルを、さっそく必要な500スキルポイントを使って、開く。
《怠惰心地》──『バトル中ものんびり行こう。自分が急がないために、自分以外の時間の流れを緩慢にする。スキル使用者の体感時間で、30秒連続して発動できる』
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