農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

文字の大きさ
60 / 119

60,地獄の収穫モード。

しおりを挟む


 建物の外に出て、本拠地内を歩いていく。逃げ惑う私のギルド員たち。その向こうでは、壊滅ギルドの下っ端たちが仮設住宅などに火をつけている。

 一方、壊滅ギルドの幹部格たちと戦っていたロクウさんが吹き飛ばされ、私の足元まで転がってきた。

「ロクウさん、ご苦労様です」

「せ、先生! お恥ずかしいところをお見せしました──しかしながら、壊滅ギルドという連中、どうやら実力は本物のようで」

「そのようですね。ロクウさんを手こずらせるなんて」

 私は前に進み、壊滅ギルドの幹部さんたちと対峙。
 なるほど。彼らが〈挑戦者(ディファイアンス)〉のパーティであることは、明確だ。5人という数からしても、それぞれに役割分担されていることが、戦わずとも明らかなことからも。
 確かに、この5人相手では、ロクウさんも苦戦せざるをえない。

 壊滅ギルド幹部の中央にいる者、つまりギルドマスターの男が言った。

「お前が、この女戦士ギルドのギルマスか。『女戦士』といいつつ、なぜか戦っていたのは、刀をもった男だったがな。いずれにせよ、お前たちに未来はない。大人しく、俺たちに狩られろ。安心しろ。見目のよい女とガキは、殺さずに奴隷商に売ってやるからな。はっはっはっはっ」

「あのですね、聞いてください。私はカブ畑を栽培しているだけで幸せだったんです。いえ、違いますね。一部不満があったのです。この国では、同性婚ができない、なんてバグがあるのか、と。セシリアちゃんと新婚ライフが送れないなんてと。
 そこで私は、【覇王魔窟】完全攻略に挑んだわけです。そして、それからさまざまな出会いがありました。今でも私は、ソロプレイこそが至高というスタンスでいます。しかしながら、必ずしもそれだけが人生ではないということも理解しました。
 私はいま、このギルドの長を務めているわけです。ギルドメンバーに責任があるのです。ですから、ここは黙って引き下がってくれませんか?」

 壊滅ギルドの幹部さんたち、そろって大爆笑。私は、よくよく人を笑わせるのが得意らしい。
 壊滅のギルマスさんが言う。

「バァァカか、お前は? 命乞いしたら、お前は生かしておいてやろう。顔の半分がグロいが、まぁスタイルは悪くないし、貴族の中には物好きがいるからな。立派な性奴隷として働けよ」

「私は、入りたくないのです。かつて、いまは亡きパパが命名した、に。『地獄の収穫モード』には。だから、お願いします、部下を連れて帰ってください」

 あれは8歳のとき。
 いまは亡きパパと、パパのお友達のロソンさんという人のジャガイモ畑へ、収穫の手伝いに行った。ところがそのジャガイモ畑、広大も広大。うちのカブ畑とは比較にならない規模。
 これはのんびりと収穫していたら、終わらないぞ。
 その切迫さが、私に異常な集中力を与えた。

 無心になる。無心になる。無心になって収穫するのだ。
 気づけば、収穫は終わり、山となったジャガイモのそばに私は立っていた。そしてパパとロソンさんが、呆然としている。
 パパが言うには、私がすべてのジャガイモを、有り得ぬ速度と正確さで収穫していったのだという。パパは、そのとき言ったものだ。

 ──「アリアの収穫への異常な集中力は、人外の域だ。まるで『地獄の収穫モード』だなぁ」

 そしていま、入りそう。
 ああ、ダメだ。もう入ってしまう。『地獄の収穫モード』に。
 
《怠惰心地》を発動。
 世界の時の流れが緩慢になる。その中を全力疾走すれば、他者から見たら神速移動と同じこと。
 壊滅のギルマスさんは、驚愕の表情を浮かべるくらいはできた。だが防御する時間はないのだ。その顔を、首のところから《爆雷舞》をぶち当て、爆砕。
 引きちぎれた生首を、私はキャッチ。

 生首一個目、収穫。

 ひとまず《怠惰心地》を解除し、他の壊滅ギルドの幹部さんたちを見る。彼らはまず、私を見て、私が手にしているギルマスさんの生首を見た。

「……な、な、なんでだぁぁぁぁボガぁぁぁぁツ!!」
「ボガーツがぁぁ、どうしてぇぇぇこんなことにいぃぃ!!」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「てめぇぇ、このクソ女ぁぁぁ、俺たちのギルマスになんてことしてくれてんだぁぁぁぁあ!!」

 ボガーツ? ああ、この生首のギルマスさんのことか。
 まぁいいや。もっと収穫しなければ、収穫を。再度、『地獄の収穫モード』に入る。幹部さんたちの生首を《爆雷舞》で粉砕していき、収穫、収穫、収穫。

 しかし最後の幹部さん、唯一の女性さんの前で、いったん《怠惰心地》を解除。

「はい?」

「ま、まままままって。あの、わたし、ボガーツの子供が、お腹にいるの。だから命だけは助けて!!」

「本当ですか?」

 真偽を確かめるため、その人の腹を裂いて、子宮の中を確認。空っぽだ。嘘つきさんだなぁ、もう。
 生首粉砕。収穫。

 それから、私は周囲を見回す。壊滅ギルドの一般ギルドメンバーは、ざっと180人はいる。彼らは全員が武装し、私のギルドメンバーを襲っている。
 なかにはレイプしている人たちも。

 私は、彼らを収穫しないといけない。
 改めて『地獄の収穫モード』へ。同時に《怠惰心地》発動。一般の壊滅ギルド員は《爆雷舞》を使うまでもなさそう。通常攻撃で、その生首を収穫できそうだ。
 頑張るぞい。

「収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫」

「ひぃぃぃぃぃぃなんだいきなりぃぃぃた、た助けてぇぇぇぇ!!」「やだぁぁやだぁぁぁぁ死にたくなぃよぉぉぉ!!」「ママぁぁぁぁぁ!!」「ま、まままてください、もうやりませんから命だけはぁあ!!」「ああぁぁなんでぇぇ、なんでぇぇみんなの首が飛んでいくのぉぉぉぉ!!!」

「収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫」

「もうじまぜんから許してぇぇぇ!!」「好きで入ったギルドじゃないんでずぅぅうだからあぁ!!」「殺さないで殺さないで殺さないで殺さないでぇぇぇぇ!!」「なんでぇぇえレイプしただけじゃんんんんん誰も殺してないじゃんんんんんん!!!」「やだぁぁぁぁぁぁ死ぬのはやだぁぁぁあ!!」「死にたくないです死にたくないで死にたくないですぅぅぅぅ!!」「ごめんなざぁぁぁぃぃぃぃぃぃぃぃぃああぁぁぁぁやだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫、収穫…………………」

 気づくと、収穫を終えていた。私のそばには、壊滅ギルドの皆さんの生首が、うずたかく積もっていた。生首の山。

 私は額の汗をぬぐった。さわやかだ。

「これが労働の歓びですっっ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...