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61,後始末もろもろ。
しおりを挟むせっかく収穫した生首だが、胴体とともに火葬することになった。
この火葬作業を、われわれのギルドは総がかりで行い、すっかり壊滅ギルドの方々が骨だけになったころ──二つのことが起きた。
夜が明け、サラさんが「壊滅ギルドの生き残りを捕まえましたので、公開処刑にいたしましょうか」と言ってきたのだ。
「公開処刑? サラさん、私たちは暴力的なギルドではないのですよ。処刑などもってのほかです。博愛精神を忘れるべからずです」
サラさん、口をぽかんと開ける。それから、ごにょごにょと言う。
「あの、ですが、さっきの収穫と称した首チョンパ祭は──」
「はい? 収穫が、なんですか?」
ロクウさんが咳払いすると、サラさんはハッとした様子で土下座した。
「私が浅はかでした! 申し訳ございません!」
「いえいえ、いいんですよ分かってくださったのならば。それでは、その生き残りの方に、少し聞きたいことがあるので、監禁している部屋へ案内してください。あ、それと念のため、炭酸飲料を用意しておいてくださいね」
その後。
壊滅ギルドの生き残りさんは、はじめこそ敵対的だった。しかし、鼻から炭酸飲料を飲んでいただいたら、すぐに協力的になってくれた。
「ななな、なんでも話しますからあぁぁ、もう鼻から炭酸飲料はやめでぐだざぃぃぃぃ!!」
「では、話してください。壊滅ギルドという、あなたが属していたギルド。もう、本当の意味で『壊滅』いたしましたが。
少々、動機が不明ですね。もちろん壊滅ギルド員のほとんどは、他ギルドを略奪できるから、という悪辣な理由で参加していたことでしょう。ギルマスさんも、暴力で蹂躙するのが好きそうな方でしたしね。
ただ、そのためだけでここまでの規模のギルドが生まれたとは、思えないのですよ。ウラで糸を引いている者がいるような気がしてならない。黒幕がいるのならば何者で、真の目的とはなんなのか。ご存じでしたら、話してはいただけませんか?」
生き残りさんは、炭酸飲料の樽を見てから、ガタガタ震えながら言う。
「すすすすすすすすすすすいまままません、ほほほほ本当に、俺はなななななにもししし、知らないんですよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「そうですか。まぁ、あなたは下っ端さんのようですし、黒幕的なものがいても知りようがありませんか。ではせめて、壊滅ギルドの本拠地、活動拠点をお教えください」
ところが生き残りさんは、それさえも知らないという。
壊滅ギルドの一般構成員は、普段は別の仕事をしている。
まぁ大手ギルドと違って、小規模から中規模ギルドの人たちは、ギルド活動が副職であり、本職は別というパータンも多いらしいが。それに略奪行為が本職となったら、それはもうただの盗賊ではないの、という話だし。
そういえば盗賊がギルドを名乗らないのは、彼らが非合法な集まりだから。政府公認の組織だけがギルドを名乗れる。
だから厳密には、壊滅ギルドは『ギルド』ではない。さすがに、いまの王政府が混乱気味だからといって、『他ギルドを壊滅するのが目的のギルドです』が公認されるとは思えないので。
とにかく生き残りさんの話では、壊滅ギルドが活動するときは、それぞれの構成員のもとに使者がやってくる。そして集合場所の書かれたメッセージカードを渡してくるのだと。
そこに定められた時間までに集合し、あとは壊滅ギルドのお仕事。他ギルドの本拠地に乗りこみ、乱暴狼藉を働くと。
ここで生き残りさんが、ゾッとした様子でいう。
「あの、ギルドマスター様。今から申すことは、嘘偽りではございません。ですから、もう炭酸飲料はお許しください!」
「一体、なにを話してくれるのですか?」
「その……壊滅ギルドの使者は、ギルド員とは違うようなのです。壊滅ギルドとして活動しているとき、見たことはありませんし、何よりあれは子供……子供のゾンビ、なんです」
「子供のゾンビ、ですか」
子供ゾンビには、以前に出会ったことがある。あのときは助けることになったのだが──善をなしたつもりが、悪に手を貸してしまったのだろうか?
ふーむ。人生はままならない。
という思いで廊下に出ると、サラさんが男の人を連れて待機していた。男の人は肉体労働者らしい逞しい筋肉をつけており、巨大なハンマーを装備していた。
サラさんが、その人を紹介しながら説明。
「ギルド・マスター。あの生き残りですが、こちらの大工のドンさんの娘さんを強姦したということです」
大工のドンさんが前に出てきて、私の前に跪(ひざまず)いた。そういうのはいらないのに。
「偉大なるギルド・マスター。どうか、あの生き残りと俺を二人だけにしてはいただけませんでしょうか?」
「ふむ。まぁ、了解です。では二人でじっくり話し合って、和解するといいです」
「ありがとうございます!」
大工のドンさんは、生き残りさんの前までずんずん進むと、その頭にハンマーを振り下ろした。で、生き残りさんの頭をぐしゃりと潰して、殺してしまった。
「まぁ、これも和解の一形態といえますね。サラさん、後片付けは頼みましたよ」
「はい。ギルド・マスター、もうひとつご報告があります。痴女としか思えない冒険者ギルドの女が、ギルド・マスターに合わせろと言っているのですが、どういたしましょう?」
「その痴女は、友達です」
もちろん、手紙で呼んだベロニカさんだ。
想像以上に早い到着。そして想像以上に──薄着だった。一応はローブを纏っているが、その下は──ひとことでいうと、エロい下着。
「……なぜに、そんな薄着で来たんですか?」
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