農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

文字の大きさ
61 / 119

61,後始末もろもろ。

しおりを挟む


せっかく収穫した生首だが、胴体とともに火葬することになった。

 この火葬作業を、われわれのギルドは総がかりで行い、すっかり壊滅ギルドの方々が骨だけになったころ──二つのことが起きた。
 夜が明け、サラさんが「壊滅ギルドの生き残りを捕まえましたので、公開処刑にいたしましょうか」と言ってきたのだ。

「公開処刑? サラさん、私たちは暴力的なギルドではないのですよ。処刑などもってのほかです。博愛精神を忘れるべからずです」

 サラさん、口をぽかんと開ける。それから、ごにょごにょと言う。

「あの、ですが、さっきの収穫と称した首チョンパ祭は──」

「はい? 収穫が、なんですか?」

 ロクウさんが咳払いすると、サラさんはハッとした様子で土下座した。

「私が浅はかでした! 申し訳ございません!」

「いえいえ、いいんですよ分かってくださったのならば。それでは、その生き残りの方に、少し聞きたいことがあるので、監禁している部屋へ案内してください。あ、それと念のため、炭酸飲料を用意しておいてくださいね」

 その後。
 壊滅ギルドの生き残りさんは、はじめこそ敵対的だった。しかし、鼻から炭酸飲料を飲んでいただいたら、すぐに協力的になってくれた。

「ななな、なんでも話しますからあぁぁ、もう鼻から炭酸飲料はやめでぐだざぃぃぃぃ!!」

「では、話してください。壊滅ギルドという、あなたが属していたギルド。もう、本当の意味で『壊滅』いたしましたが。
 少々、動機が不明ですね。もちろん壊滅ギルド員のほとんどは、他ギルドを略奪できるから、という悪辣な理由で参加していたことでしょう。ギルマスさんも、暴力で蹂躙するのが好きそうな方でしたしね。
 ただ、そのためだけでここまでの規模のギルドが生まれたとは、思えないのですよ。ウラで糸を引いている者がいるような気がしてならない。黒幕がいるのならば何者で、真の目的とはなんなのか。ご存じでしたら、話してはいただけませんか?」

 生き残りさんは、炭酸飲料の樽を見てから、ガタガタ震えながら言う。

「すすすすすすすすすすすいまままません、ほほほほ本当に、俺はなななななにもししし、知らないんですよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「そうですか。まぁ、あなたは下っ端さんのようですし、黒幕的なものがいても知りようがありませんか。ではせめて、壊滅ギルドの本拠地、活動拠点をお教えください」

 ところが生き残りさんは、それさえも知らないという。

 壊滅ギルドの一般構成員は、普段は別の仕事をしている。
 まぁ大手ギルドと違って、小規模から中規模ギルドの人たちは、ギルド活動が副職であり、本職は別というパータンも多いらしいが。それに略奪行為が本職となったら、それはもうただの盗賊ではないの、という話だし。
 そういえば盗賊がギルドを名乗らないのは、彼らが非合法な集まりだから。政府公認の組織だけがギルドを名乗れる。
 だから厳密には、壊滅ギルドは『ギルド』ではない。さすがに、いまの王政府が混乱気味だからといって、『他ギルドを壊滅するのが目的のギルドです』が公認されるとは思えないので。

 とにかく生き残りさんの話では、壊滅ギルドが活動するときは、それぞれの構成員のもとに使者がやってくる。そして集合場所の書かれたメッセージカードを渡してくるのだと。
 そこに定められた時間までに集合し、あとは壊滅ギルドのお仕事。他ギルドの本拠地に乗りこみ、乱暴狼藉を働くと。
 ここで生き残りさんが、ゾッとした様子でいう。

「あの、ギルドマスター様。今から申すことは、嘘偽りではございません。ですから、もう炭酸飲料はお許しください!」

「一体、なにを話してくれるのですか?」

「その……壊滅ギルドの使者は、ギルド員とは違うようなのです。壊滅ギルドとして活動しているとき、見たことはありませんし、何よりあれは子供……子供のゾンビ、なんです」

「子供のゾンビ、ですか」

 子供ゾンビには、以前に出会ったことがある。あのときは助けることになったのだが──善をなしたつもりが、悪に手を貸してしまったのだろうか?

 ふーむ。人生はままならない。
 という思いで廊下に出ると、サラさんが男の人を連れて待機していた。男の人は肉体労働者らしい逞しい筋肉をつけており、巨大なハンマーを装備していた。
 サラさんが、その人を紹介しながら説明。

「ギルド・マスター。あの生き残りですが、こちらの大工のドンさんの娘さんを強姦したということです」

 大工のドンさんが前に出てきて、私の前に跪(ひざまず)いた。そういうのはいらないのに。

「偉大なるギルド・マスター。どうか、あの生き残りと俺を二人だけにしてはいただけませんでしょうか?」

「ふむ。まぁ、了解です。では二人でじっくり話し合って、和解するといいです」

「ありがとうございます!」

 大工のドンさんは、生き残りさんの前までずんずん進むと、その頭にハンマーを振り下ろした。で、生き残りさんの頭をぐしゃりと潰して、殺してしまった。

「まぁ、これも和解の一形態といえますね。サラさん、後片付けは頼みましたよ」

「はい。ギルド・マスター、もうひとつご報告があります。痴女としか思えない冒険者ギルドの女が、ギルド・マスターに合わせろと言っているのですが、どういたしましょう?」

「その痴女は、友達です」

 もちろん、手紙で呼んだベロニカさんだ。
 想像以上に早い到着。そして想像以上に──薄着だった。一応はローブを纏っているが、その下は──ひとことでいうと、エロい下着。

「……なぜに、そんな薄着で来たんですか?」

 ベロニカさんは目の中♡で、私にはりついてくる。

「えー? だってアリア、あたしに夜這いのお誘いをしてくれたんでしょ? あの手紙は、そういう文章だったわぁ」

 読解力って大事だよね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...