農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

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67,未来予知。

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美少女巫女さんには、未来予知スキルがあるという。

 一方、待ち伏せで潜んでいた聖ルーン騎士団の人たち、数はざっと200名ほど。
 総力戦で来たのかな? それにしても、これほどの人数が潜んでいて気づかなかったなんて。向こうも隠密スキルを使っていたのかな?

 とにかく未来予知スキルとは、凄いなぁ。
 美少女巫女さんは、私がこの時間に神殿まで来ることを未来予知したので、こうして罠を張っていたと。

 問題は、その後だよね。
 はたしてこの美少女な巫女さんは、その後まで予知できるのだろうか。

 巫女さんの立場から仮説を立ててみると。
 仮説1,『アリアが神殿まで来る』ことを予知したので、聖ルーン騎士団を潜ませた。そこから先の予知はできない。なぜならば、『アリアが神殿まで来る』という予知に対するアクションを起こしての待ち伏せなので、その待ち伏せの結果までは予知の範囲に入らない。

 仮説2,仮説1に対する反対意見。つまり、『アリアが神殿まで来る→と予知したので聖ルーン騎士団を潜ませた→その結果までも予知済み』ということ。
 仮説2の場合、私はここで敗北しないとならない。私が敗北する、つまり美少女巫女さん側が勝利するからこそ、聖ルーン騎士団を潜ませるようなことをしたのだから。

 よって、ここで私が勝ってしまうと、美少女巫女さんは『聖ルーン騎士団を潜ませて罠を張る』ことをしない。だからこの神殿で、私が美少女巫女さんと会うこともなくなり、結論からしてこの現在が変わってしまう。
 あれー、ややこしいなぁ、もう。

 やっぱり仮説1のほうがすっきりする。
 未来予知スキルによって、未来の『A』という事象を見る。その上で『A』事象に対するアクションを起こす行動をとることにした場合、その『B』となる事象までは未来予知できないはずだ。
 なぜなら『B』をやると決めたからこそ『B』という未来は成立するが、その『B』が気に入らないからといって『B』をやめてしまった場合、『B』は成立せず、成立しない未来を予知するなんてことはできないから。
 えーい、やっぱりややこしいぞい。

「ひとまず、考えるのはやめました! ここからは実践で試しましょう」

 私は魔改造くわ〈スーパーコンボ〉を構え、フル稼働に入ろうとする。
 すなわち── 
 まず基本状態として、《鎧装甲:地獄》+《怠惰心地》+《視界不良》の三つを同時発動。
《鎧装甲:地獄》で全身防御力を爆上げし、敵からの単純な物理攻撃は気にせず突破できるようにする。
《怠惰心地》で周囲の時の流れを緩慢にすることで、通常速度で動ける私は、いわば神速移動を可能にする。
《視界不良》を使うことで、敵からは『視認しづらくなる』。確実に姿を消すまではいかずとも、私への攻撃などが外れやすくなるだろう。

 この基本状態の上で、《阿吽竜巻》を中央に発動するつもりだ。暴虐なる竜巻は直接攻撃ではなく、聖ルーン騎士団員たちの動きをさらに鈍らせるため。
 スキル発動者の私は、《阿吽竜巻》の影響を受けないので。
 あとは、打撃スキルのバランス型《桜吹雪打》で、一人ずつ確実に片付けていくのみ。壊滅ギルドの皆さんにしたように、生首収穫だね。

「はーい、いくよー!!」

 いざ動きだそうとしたとき、

「ま、まつのじゃ!!」

 と、美少女巫女さんが叫んで停止を命じた。
 これは聖ルーン騎士団たちへの命令だったようだ。騎士団の皆さんは、ぴたりと動きを止める。巫女さんが、確実に指揮権を持っているようだ。

 そんな美少女な巫女さんは、顔面蒼白になっていた。どうやら、改めて未来予知スキルを使ったようだね。
 このバトルの行きつく先を、未来予知で見たと。
 やはり未来予知スキルにも限界があったわけだ。私がこの神殿に来ることまでは予知できたので、聖ルーン騎士団を待ち伏せさせることにした。
 しかし、その後──私を襲撃させてのバトルの結果については、その時点では予知できなかった。いまこの時までは。
 そして巫女さんは予知できる段階に達したので、バルト結果を予知したわけだ。

「う、うぬは、何者なんじゃ。わらわの精鋭たちを、ああも容易く皆殺しにするとは──しかも、なんじゃ! 収穫とは! あれはただの殺戮じゃろうが! うぬは頭がイカれておるのか!」

 予知した未来のことで、文句を言われても困る。
 ほら、聖ルーン騎士団の人たちも動揺している。
 その中で、見知った顔があった。先週、夜中に私の家を襲撃してきた騎士団の一人、そのときの唯一の生き残りで、名前はウースさん。

 そのウースさんが、美少女巫女さんに言う。

「クラウディア様、何も恐れることはありません! この悪しき魔物を、どうか我らに狩り取らせてください!」

「痴れ者が。こやつは、わらわの想定を遥かに凌駕した化け物じゃった。うぬらが何百人でかかろうと、敵う敵ではない。じゃが、バトルにさえ入らなければ『収穫』という殺戮は行われない。そうじゃな?」

 どうやら、後半は私への問いかけだったようだ。私は約束した。

「もちろんです。私は、暴力ダメダメの人ですから」

 美少女巫女のクラウディアさんは、いまにも地団駄を踏みそうだった。だが、ここはいったん引くべきと決断したようで、ウースさんたちに撤退指令を出そうとした。

 だがクラウディアさんの瞳が、またも清冽に輝く。未来予知した? 

「な、なんじゃと! よ、よすのじゃぁぁ!!」

 悲痛な叫び。クラウディアさんはいま、未来の何を見たのだろう。

 私が怪訝に思っているとふいに──私の身体から、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんが滑り出て来た。不愉快そうに周囲を見回すと、右手を持ち上げて──

「う・る・さ・い・なぁっ! 《終焉輪舞》!」

 この場にいた、約200人ほどの騎士団の皆さんが、空中に浮いた。
 次の瞬間には全員が、ただの灰燼となってしまった。『燃える』という過程は飛ばして、いきなり灰燼。そよ風が吹いて、200人分の灰燼が飛んでいく。

 私はつくづく思った。
 無茶苦茶すぎるよね。

 こうして残ったのは、私とクラウディアさん、そして〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さん。
〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの視線が、クラウディアさんに向けられる。

 私はハッとして、〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの肩をつかんだ。

「せめてその美少女さんは、殺さないでください。世界の美少女人口を、減らさないためにも!」
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