農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

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66,美少女巫女さん。

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 ラザ帝国への不法入国に、すんなりと成功。
 あとは国内旅行者のフリで移動し、これという問題さえ起こさなければ良し。隠密スキルは聖都侵入のために取っておこう。

「ところでベロニカさん、聖都ってどっちの方角にあるんですか?」

「うーん。知らない」

「だけど、いちど行ったことがあるんですよね?」

「あるけどねぇ、アリア。そのときは、アーテルの使節団に冒険者ギルドの代表その6、くらいの立場で加わったわけで、移動用の豪華な馬車も向こうさんが用意してくれて、あたしは──別になんでもない」

「なんです?」

 反省の仕草で白状するベロニカさん。

「……接待の女の子とイチャついてました」

 とりあえず、街道をみつけたので、それに沿って移動することにした。途中、かなり大きな乗合馬車の停留所を発見。ここで聖都行きに乗るとしよう。
 ところがラザ帝国では、一般市民以上(つまり奴隷身分ではない者)は、身分証携帯が義務付けられており、それがないと馬車に乗れない。というより公けの場で身分証を提示できないと、脱走奴隷の疑いで逮捕される嫌がらせシステムだった。

 ミリカさんが、乗合の御者を指さしながら、ベロニカさんに言う。

「貴様の色仕掛けで落としてこい」

「なんで、あたしが? あんな汚いおじさん相手に」

「貴様の得意分野だろ」

「ミリカちゃーん、帝国の土に埋まる覚悟あっての発言よねぇ?」

 低次元ないさかいに付き合っているヒマはないので、【隠密領域】より《視界不良》を発動。《視界不良》は『敵から発見されにくくなる』スキル。
 この場合、敵にレベル概念があるのならば、それが低いほうが《視界不良》効果は強かろう。まず御者さんを敵に認定したならば、Lv.1だろう。《視界不良》をパーティ仲間(ミリカさんとベロニカさん)にかければ、私たちは透明人間のようなものだ。
 また乗合馬車の乗客にまで使う必要はない。私たちが堂々と座っていれば、こちらが身分証を御者に提示したものと疑うこともないだろうから。

 にしても、こんなところで入手したての隠密スキルを使うハメになるなんて。人間社会において騒ぎを起こさず任務を遂行するということは、【覇王魔窟】中層階を攻略するより難しかったりするのかも。

 何はともあれ、無事に聖都まで運んでもらえた。
 栄えある聖都さん。
 当然、聖都内に入るためには、聖都の警備兵(通称、聖兵)に身分証提示は必須。そこで《視界不良》を維持したまま、《操縦》飛行で聖都内へと飛んでいくことにした。飛行となれば、いくら《視界不良》を使っていても目立つので、日が沈んでからにする。

 ただ《操縦》で飛ばす魔改造くわ〈スーパーコンボ〉からして、私と一度に運べるのは一人まで。つまり、どちらかを先に運んでから降ろし、またもう一人を運ぶため戻る手順だ。それを説明したところ、驚くべきことに、揉めた。

「あたしが、先にアリアに運んでもらうから。ミリカはここで待ってなさいねぇ。躾けられたワンちゃんのように、『待て』よ『待て』」

「ベロニカ。貴様は、あそこに落ちている馬糞に顔を沈めているのが、最もお似合いだぞ。私がアリアさんと聖都侵入している間、貴様はあそこの馬糞にダイブしていろ」

「なんですって!」

「なんだと!」

 なるほど。冒険者ギルドの腕利きと、次期領主の伯爵令嬢が、こんな下らないことで揉めるのだ。世界がいつまでたっても平和にならないわけだよねぇ。
 仕方ないので、二人を同時に運んだ。〈スーパーコンボ〉には苦労かけます。聖都内の路地裏に着地。

「さてと。ダメ元で尋ねますけど、ベロニカさん。聖ルーン騎士団の居所に当てはありますか?」

「ごめんなさいアリア。あなたのためなら、心臓でも差し出せるあたしだけれど、知らないことは教えられないわぁ」

 ミリカさん、あからさまな舌打ち。

「役に立たない女だな」

「うるさいなぁ、ミリカちゃん。腋臭ちゃん」

「貴様、それをまだ言うか! 名誉棄損で訴えるぞ」

 喧嘩するほど仲がいいは幻想なのか。
 二人が仲悪く言い争っている間に、私は移動を開始。

 聖都の中央には、大きな神殿がある。聖都そのものがダンジョンならば、ダンジョンボスが鎮座しているのは、あの神殿だろう。
 単身、《操縦》で飛んで、神殿内へ。
 ほう。無宗教の私でさえも、厳かさを感じさせる空間だ。中央には、巨大な女神像が立っている。それを眺めていたら、後ろから気配がした。
 ゆっくりと振り返ると、巫女装束の少女が滑るようにしてやって来る。桜色の髪に、透き通る蒼い瞳。まさしく美少女さんです。

 そんな美少女巫女さんが言う。

「どうじゃ、高貴なる御姿じゃろう。わらわたちローズ教徒が崇める女神、アリエル様を模った像じゃ」

「アリエルですか? その名前は──」

「ほう。やはりうぬは、【覇王魔窟】内でアリエル様のお声を聞いていたか」

 すると、攻略記録ポイントの設定などしてくれる、あのサポート担当のアリエルさんが? あの美人な声のお姉さん、女神さまだったとは。

「女神さまなのに、【覇王魔窟】内でこき使われている印象でしたけど?」

 巫女さんは顔をしかめた。

「うぬに指摘されるまでもない。アリエル様は、【覇王魔窟】に囚われておられる。アリエル様を解放するのが、わらわたちの務めじゃ。そのために、うぬの体内を流れる魔素、頂戴するぞ」

 とたん、潜んでいた聖ルーン騎士団の方々が、飛び出してきた。
 ほう、罠だったのか。しかし、なぜ私がこの時間、ここに来ると分かったのだろう? 仮にずっと尾行していたとしても、この神殿にやって来るとまでは、読めなかったはずでは?

 私の疑問に、巫女さんが親切に応えてくれた。

「わらわの未来予知スキルのなせる業じゃ」

 そうして巫女さんの瞳が、とても清冽に輝くのだった。
 わぁ、より美少女度が増すっ!
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