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96,女王陛下の──。
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頭からかぶった吐瀉物が固まりかけたところ、カブギルドに到着。
ここまで来るあいだ酔っ払いサンディさんは讃美歌を歌っていたが、プロ歌手なみの美声だった。酔いどれ修道女、恐るべし。
カブギルド本拠地の前には、5人の守護パーティが控えており、私たちに向かって敵意の視線。
「貴様たち何者だ?」
と誰何されたが、ここで『広場に銅像建っているアリアです』とは言えない。絶対に嘘だと思われるからね。これも銅像の美少女度が6割増しのため。そこで何者か名乗らず、用件だけ伝えた。
「カブギルドに用があるんですが」
「カブギルドだと? それは古いギルド名称だ。いま我々は、カブ冒険者ギルド!!」
「………………は?」
「冒険者ギルドを吸収し、国家最大にして、唯一の女王陛下直轄ギルドとして誉れ高い地位を得ている。それが、我らカブ冒険者ギルド!!」
「カブ、いりますかそれ? 名称、気持ち悪くないですか? もう冒険者ギルドだけで良くないですか?」
するとなぜか守護パーティ全員からの殺意を浴びるハメになった。
「愚か者が!! 初代ギルドマスターにとって、カブは人生を捧げる全てであった!! その思いを、二代目ギルドマスターは引き継いだのだ! 余所者の貴様に何が分かる!!」
二代目ギルドマスターって、誰だろう。サブマスだったサラさんか、ロクウさんあたりかな。
「いまのギルマスって、お名前はなんでした?」
「ベロニカ様だ!」
ベロニカさん、出世したなぁ~。カブギルドが冒険者ギルドを吸収したというが(ギルド同盟とかではなくて)、その裏にはベロニカさんの工作が潜んでいそう。
まぁ、こうしてギルマスの地位を移譲できたので、結果オーライかな。私も英雄として奉られてしまった以上は、いまさら『生きていましたよ』と世間に名乗り出るつもりもないし。生きていると、一部の友人たちに知らせるだけでいい。
だが今は、そのタイミングではないのかも。ベロニカさんはギルマスとして忙しそうだし。そういえば、女王陛下というのだから──?
「えーと。いまの女王さまのお名前って──?」
「そんなことも知らぬのか余所者が。ミリカ様だ!」
聞きたいことを、適格に答えてくれる守護パーティさん。いい人たちだなぁ。
ところで──計画を立てた身とはいえ、ちゃんとミリカさんが王位に就けていたので、実は驚き。ミリカさんに王の素質はあるとみていたけど、問題は王位継承順位の低さ。偽りの王である〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉排斥後は、かなりの手順と裏工作が必要だと思っていたけど。
私がいなくても、ちゃんとやってくれたんだね。あとミリカさんを、ちゃんと説得してくれたんだね。良かった良かった。
まてよ。それなら、もう私はいなくて良いのでは?
カブ冒険者ギルド(気持ち悪い名称だなぁホント)のギルマスに、ベロニカさん。アーテル国王にミリカさん。
この二人ならば、アーテル国は任せられる。
だから私がいまやるべきことは、【覇王魔窟】を完全攻略することだ。それが全てを解決する。
その1,完全攻略とは〈攻略不可能体〉を全撃破することだ。さすれば、この国から〈攻略不可能体〉の脅威も去るよね。
その2,〈攻略不可能体〉の一体である〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉を殺すことで、ベロニカさんの体内に仕込まれた魔素爆弾も解除されるよね(私の再創造に時間がかかったため、残り猶予がだいぶなくなってきてしまったなぁ)。
その3,そして私は、【覇王魔窟】完全攻略によって、セシリアちゃんと同性婚できるようになるのですっっっ!
ミリカさんが国王になったのだから、同性婚OK法案可決を頼めばいいのに、という意見もありそうだ。が、それは論外。
私は【覇王魔窟】完全攻略した暁に、同性婚OKにしてもらい、そしてセシリアちゃんのもとへ行き、プロポーズすると心に決めているのだ。
これが私の覇道である。
「分かりました。いろいろと教えてくださり、ありがとうです。私はこれで帰りますが──カブ冒険者ギルドという名前、本当に改名したほうがいいですよ。気持ち悪いです」
「帰れ、帰れ、余所者がぁぁ!」
「はい」
泥酔サンディさんを抱え直して、私は元カブギルドから踵を返した。
手持ちがなかったので、サンディさんのお財布から借りて、近くの宿に投宿。サンディさんをベッドに寝かせてから、私は深夜営業中の公衆浴場で、身体を綺麗にした。
そして部屋に戻る。サンディさんは死んだように爆睡中。そんなサンディさんを眺めていたら、不可解なことに気づいた。
寝息が二重奏だ。
つまり二人分の寝息が聞こえてくる。サンディさんとそして──
「えぇ、〈倦怠艶女ミスティナ〉さん?」
とたんサンディさんの中から、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが這い出してきた。体内突破の方法ではないので、サンディさんは無事。
そして〈倦怠艶女ミスティナ〉さんは、両手を広げた。
「アリア! わたしのベッド!! 戻ってきた!!!」
「〈倦怠艶女ミスティナ〉さん! あなたの寝息が聞こえないと、夜も熟睡できぬ日々でした!!」
感動のハグ──からの、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが私の体内に入り、すぐに寝息が聞こえてきた。さすが〈倦怠艶女ミスティナ〉さんである。
するとサンディさんががばっと起き上がり、涙を流しながら叫んだ。
「やったぁぁぁぁ!! わたしの体内から、悪魔が消えたよぉぉぉぉぉ!!!!」
あー。それで浴びるほどお酒を飲んでいたんだ。
ここまで来るあいだ酔っ払いサンディさんは讃美歌を歌っていたが、プロ歌手なみの美声だった。酔いどれ修道女、恐るべし。
カブギルド本拠地の前には、5人の守護パーティが控えており、私たちに向かって敵意の視線。
「貴様たち何者だ?」
と誰何されたが、ここで『広場に銅像建っているアリアです』とは言えない。絶対に嘘だと思われるからね。これも銅像の美少女度が6割増しのため。そこで何者か名乗らず、用件だけ伝えた。
「カブギルドに用があるんですが」
「カブギルドだと? それは古いギルド名称だ。いま我々は、カブ冒険者ギルド!!」
「………………は?」
「冒険者ギルドを吸収し、国家最大にして、唯一の女王陛下直轄ギルドとして誉れ高い地位を得ている。それが、我らカブ冒険者ギルド!!」
「カブ、いりますかそれ? 名称、気持ち悪くないですか? もう冒険者ギルドだけで良くないですか?」
するとなぜか守護パーティ全員からの殺意を浴びるハメになった。
「愚か者が!! 初代ギルドマスターにとって、カブは人生を捧げる全てであった!! その思いを、二代目ギルドマスターは引き継いだのだ! 余所者の貴様に何が分かる!!」
二代目ギルドマスターって、誰だろう。サブマスだったサラさんか、ロクウさんあたりかな。
「いまのギルマスって、お名前はなんでした?」
「ベロニカ様だ!」
ベロニカさん、出世したなぁ~。カブギルドが冒険者ギルドを吸収したというが(ギルド同盟とかではなくて)、その裏にはベロニカさんの工作が潜んでいそう。
まぁ、こうしてギルマスの地位を移譲できたので、結果オーライかな。私も英雄として奉られてしまった以上は、いまさら『生きていましたよ』と世間に名乗り出るつもりもないし。生きていると、一部の友人たちに知らせるだけでいい。
だが今は、そのタイミングではないのかも。ベロニカさんはギルマスとして忙しそうだし。そういえば、女王陛下というのだから──?
「えーと。いまの女王さまのお名前って──?」
「そんなことも知らぬのか余所者が。ミリカ様だ!」
聞きたいことを、適格に答えてくれる守護パーティさん。いい人たちだなぁ。
ところで──計画を立てた身とはいえ、ちゃんとミリカさんが王位に就けていたので、実は驚き。ミリカさんに王の素質はあるとみていたけど、問題は王位継承順位の低さ。偽りの王である〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉排斥後は、かなりの手順と裏工作が必要だと思っていたけど。
私がいなくても、ちゃんとやってくれたんだね。あとミリカさんを、ちゃんと説得してくれたんだね。良かった良かった。
まてよ。それなら、もう私はいなくて良いのでは?
カブ冒険者ギルド(気持ち悪い名称だなぁホント)のギルマスに、ベロニカさん。アーテル国王にミリカさん。
この二人ならば、アーテル国は任せられる。
だから私がいまやるべきことは、【覇王魔窟】を完全攻略することだ。それが全てを解決する。
その1,完全攻略とは〈攻略不可能体〉を全撃破することだ。さすれば、この国から〈攻略不可能体〉の脅威も去るよね。
その2,〈攻略不可能体〉の一体である〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉を殺すことで、ベロニカさんの体内に仕込まれた魔素爆弾も解除されるよね(私の再創造に時間がかかったため、残り猶予がだいぶなくなってきてしまったなぁ)。
その3,そして私は、【覇王魔窟】完全攻略によって、セシリアちゃんと同性婚できるようになるのですっっっ!
ミリカさんが国王になったのだから、同性婚OK法案可決を頼めばいいのに、という意見もありそうだ。が、それは論外。
私は【覇王魔窟】完全攻略した暁に、同性婚OKにしてもらい、そしてセシリアちゃんのもとへ行き、プロポーズすると心に決めているのだ。
これが私の覇道である。
「分かりました。いろいろと教えてくださり、ありがとうです。私はこれで帰りますが──カブ冒険者ギルドという名前、本当に改名したほうがいいですよ。気持ち悪いです」
「帰れ、帰れ、余所者がぁぁ!」
「はい」
泥酔サンディさんを抱え直して、私は元カブギルドから踵を返した。
手持ちがなかったので、サンディさんのお財布から借りて、近くの宿に投宿。サンディさんをベッドに寝かせてから、私は深夜営業中の公衆浴場で、身体を綺麗にした。
そして部屋に戻る。サンディさんは死んだように爆睡中。そんなサンディさんを眺めていたら、不可解なことに気づいた。
寝息が二重奏だ。
つまり二人分の寝息が聞こえてくる。サンディさんとそして──
「えぇ、〈倦怠艶女ミスティナ〉さん?」
とたんサンディさんの中から、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが這い出してきた。体内突破の方法ではないので、サンディさんは無事。
そして〈倦怠艶女ミスティナ〉さんは、両手を広げた。
「アリア! わたしのベッド!! 戻ってきた!!!」
「〈倦怠艶女ミスティナ〉さん! あなたの寝息が聞こえないと、夜も熟睡できぬ日々でした!!」
感動のハグ──からの、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが私の体内に入り、すぐに寝息が聞こえてきた。さすが〈倦怠艶女ミスティナ〉さんである。
するとサンディさんががばっと起き上がり、涙を流しながら叫んだ。
「やったぁぁぁぁ!! わたしの体内から、悪魔が消えたよぉぉぉぉぉ!!!!」
あー。それで浴びるほどお酒を飲んでいたんだ。
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