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106,劣化〈未来予知〉。
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宗教違いではあったけども、サンディさんはすっかり観光モードとなった。
なるほど、たしかに聖都ローズは、観光地としてもレベルは高いかも。料理は美味しいし、いつも何かしら祭はしているし、お土産を探すだけでも一日では足りないくらいだし。
観光客と化したサンディさんといったん別れ、私はローズ教の神殿に向かった。アリエル女神像があるところで、ここで私は〈未来予知〉スキル持ちのクラウディアさんと出会ったのだ。
クラウディアさんの〈未来予知〉ならば、私が来ることも『視えて』いるだろう。つまり私はただ神殿入りするだけで良い。そうしたら、クラウディアさんが何かしらの出迎え方法を取ってくれるはず。おそらく形ばかりは友好的な。
ところが、案に反して、敵対的な出迎えが待っていた。
神殿に入るとたん、足元に魔法陣が発動する。それを見て、私は地味に感動した。ふむ。これが初めての魔法攻撃だぞ、と。
瞬間、急激に眠くなる。
強制的に睡眠を誘発する魔法か。〈倦怠艶女ミスティナ〉さんじゃあるまいし。
片膝ついて、あくびする。周囲から、新生聖ルーン騎士団(?)らしき者たちがやって来る。前回の騎士団は白い鎧だったが、今回は真っ黒だ。
ところで旧聖ルーン騎士団についていうならば、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが全滅瞬殺してしまったことは、今も申し訳なく思っている。
黒騎士の一人が、私の前にやって来た。眠たくて、まぶたが重いが、なんとか見返す。その騎士さんが言うには、
「どれほど恐ろしい化け物かと思ったが、単純な睡眠魔法にかかるとはな。よく聞け、魔女よ。お前が眠ったら、われわれはお前を解体し、魔女の心臓を潰してくれる。だから、これが最期の現世の景色だ。よーく拝んでおけ」
私は魔女ではないというのに。最近、よくその手の勘違いをされる。なぜだろう。魔女っぽいところなんて、まったく出していないのに。
それで気づいた。とんでもないことに気づいた。
とりあえず眠すぎるので、《鎧装甲:状態異常》を発動。
魔法による睡魔状態も結局は状態異常に過ぎない。よって《鎧装甲:状態異常》で解除されるわけだ。
眠気すっきりで立ちあがり、伸びをする。
私はいま気づいたことを問いかけねばならない。
「飛びかた、ですか? 魔女は箒ほうきにまたがって飛びますが、私は魔改造鍬〈スーパーコンボ〉にまたがって飛びます。まさか、その見た目が似ているので、魔女という誤解を生むのですか? それじゃぁ、〈スーパーコンボ〉に立って飛行したら、サーファーと呼ばれるんですかね?」
私は素朴に問いかけているのだが、向こうはそれどころではなかった。黒騎士さんたちが、慌てふためきながら攻撃を仕掛けてくる。
「なぜだぁぁ! なぜ睡眠魔法が無効化されるんだぁぁぁ!!」
「状態異常を引き起こす攻撃方法があるのならば、それを解除する方法もあるのではないか? そこまで考えておかないとダメですよ」
「くらぇぇぇ、魔女めぇぇ!!」
はじめに斬りかかってきた黒騎士さんの右足を、〈スーパーコンボ〉の通常攻撃で『収穫』する。右足を切断されたその黒騎士さんは、倒れ込んでから、叫んだ。
「なぜだぁぁぁぁ! 〈漆黒鎧〉は防御Lv.30だというのにぃぃ、なぜ防御しきれないんだぁぁぁ!!」
「私の打撃Lv.が50だからではないですかね。ダメですよ。自分の防御力を上回る攻撃は、つねに想定しておかないと。さぁ、その切断面をちゃんと止血しないと。出血多量で死んじゃいますよ」
「貴様ぁぁ! 魔女が、わが同胞に触るなぁぁ!!」
と、せっかく止血してあげようとしたのに、別の黒騎士さんがまたも攻撃してくる。
風牙を纏った斬撃の一撃で。
私はその斬撃を〈スーパーコンボ〉で弾いてから、そっちの黒騎士さんは、左足を『収穫』した。
「ぐぁぁぁああああ!! 私の左足がぁぁぁぁぁ!!」
「止血する人が増えましたね。私では手に負えません。衛生兵のかた、連れていってください」
ところが黒騎士さんたちは、隊長らしき人が「退却だ! 退却!」と命令すると、逃げてしまった。仕方ないので、右足切断騎士と左足切断騎士の止血を、私がすることに。その間、なんかやたらと叫ばれていたが。
さてと。
ここでも何か、異変が起きているようだ。
私の推測は、巫女の首がすげ替えられたというもの。
別に、騎士の鎧の色が変わったから、というわけではないよ(それも根拠のひとつではあるけれども)。
結局、同じことをやってきたからだ。つまり向こうは、私がこの神殿に来ることを未来予知し、黒騎士たちで罠を張っていた。だが、私が彼らを撃退するところまでは未来予知できていなかった。
クラウディアさんが、以前に犯した間違いと同じではないか。
とするならば、巫女がクラウディアさんでは筋が通らない。クラウディアさんは、同じ間違いを繰り返すタイプには見えなかったし──。
そう、たとえば新たな巫女は、これも未来予知できなかった。
神殿の外では、先ほど退却した黒騎士さんたちが転がっている。死んではいないと思うけど、みな重傷だ。
私は、実にシンプルなことをした。
黒騎士さんたちの退却ルートに、《阿吽竜巻》と《大地愛暴》を同時発動したのだ。これさえも予知できなかったのならば、新たな巫女の〈未来予知〉スキルは、クラウディアさんに劣る。劣化〈未来予知〉というところかぁ。
黒騎士の隊長さんが、「ううう」と呻いている。
私は、隊長さんのむきだしの喉に、〈スーパーコンボ〉の柄頭をおいた。力は加えていない、いまのところは。
「クラウディアさんは、どこですか?」
「……」
「少し疲れたので、この〈スーパーコンボ〉に体重をかけてみましょうかね。(打撃Lv.50)の力で。すると柄頭の下がどうなるかは、なんとも言えませんね。大地は砕けるでしょう。いや、いまは大地ではなく、誰かの喉に押し付けてあるのでしたね」
隊長さん、顔面蒼白になる。
それから、むがむがと口を動かし、ある監獄の名を口にした。その監獄がどこにあるかは知らないけれど、それは聖都MAPでも探せばいいよね。
なるほど、たしかに聖都ローズは、観光地としてもレベルは高いかも。料理は美味しいし、いつも何かしら祭はしているし、お土産を探すだけでも一日では足りないくらいだし。
観光客と化したサンディさんといったん別れ、私はローズ教の神殿に向かった。アリエル女神像があるところで、ここで私は〈未来予知〉スキル持ちのクラウディアさんと出会ったのだ。
クラウディアさんの〈未来予知〉ならば、私が来ることも『視えて』いるだろう。つまり私はただ神殿入りするだけで良い。そうしたら、クラウディアさんが何かしらの出迎え方法を取ってくれるはず。おそらく形ばかりは友好的な。
ところが、案に反して、敵対的な出迎えが待っていた。
神殿に入るとたん、足元に魔法陣が発動する。それを見て、私は地味に感動した。ふむ。これが初めての魔法攻撃だぞ、と。
瞬間、急激に眠くなる。
強制的に睡眠を誘発する魔法か。〈倦怠艶女ミスティナ〉さんじゃあるまいし。
片膝ついて、あくびする。周囲から、新生聖ルーン騎士団(?)らしき者たちがやって来る。前回の騎士団は白い鎧だったが、今回は真っ黒だ。
ところで旧聖ルーン騎士団についていうならば、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが全滅瞬殺してしまったことは、今も申し訳なく思っている。
黒騎士の一人が、私の前にやって来た。眠たくて、まぶたが重いが、なんとか見返す。その騎士さんが言うには、
「どれほど恐ろしい化け物かと思ったが、単純な睡眠魔法にかかるとはな。よく聞け、魔女よ。お前が眠ったら、われわれはお前を解体し、魔女の心臓を潰してくれる。だから、これが最期の現世の景色だ。よーく拝んでおけ」
私は魔女ではないというのに。最近、よくその手の勘違いをされる。なぜだろう。魔女っぽいところなんて、まったく出していないのに。
それで気づいた。とんでもないことに気づいた。
とりあえず眠すぎるので、《鎧装甲:状態異常》を発動。
魔法による睡魔状態も結局は状態異常に過ぎない。よって《鎧装甲:状態異常》で解除されるわけだ。
眠気すっきりで立ちあがり、伸びをする。
私はいま気づいたことを問いかけねばならない。
「飛びかた、ですか? 魔女は箒ほうきにまたがって飛びますが、私は魔改造鍬〈スーパーコンボ〉にまたがって飛びます。まさか、その見た目が似ているので、魔女という誤解を生むのですか? それじゃぁ、〈スーパーコンボ〉に立って飛行したら、サーファーと呼ばれるんですかね?」
私は素朴に問いかけているのだが、向こうはそれどころではなかった。黒騎士さんたちが、慌てふためきながら攻撃を仕掛けてくる。
「なぜだぁぁ! なぜ睡眠魔法が無効化されるんだぁぁぁ!!」
「状態異常を引き起こす攻撃方法があるのならば、それを解除する方法もあるのではないか? そこまで考えておかないとダメですよ」
「くらぇぇぇ、魔女めぇぇ!!」
はじめに斬りかかってきた黒騎士さんの右足を、〈スーパーコンボ〉の通常攻撃で『収穫』する。右足を切断されたその黒騎士さんは、倒れ込んでから、叫んだ。
「なぜだぁぁぁぁ! 〈漆黒鎧〉は防御Lv.30だというのにぃぃ、なぜ防御しきれないんだぁぁぁ!!」
「私の打撃Lv.が50だからではないですかね。ダメですよ。自分の防御力を上回る攻撃は、つねに想定しておかないと。さぁ、その切断面をちゃんと止血しないと。出血多量で死んじゃいますよ」
「貴様ぁぁ! 魔女が、わが同胞に触るなぁぁ!!」
と、せっかく止血してあげようとしたのに、別の黒騎士さんがまたも攻撃してくる。
風牙を纏った斬撃の一撃で。
私はその斬撃を〈スーパーコンボ〉で弾いてから、そっちの黒騎士さんは、左足を『収穫』した。
「ぐぁぁぁああああ!! 私の左足がぁぁぁぁぁ!!」
「止血する人が増えましたね。私では手に負えません。衛生兵のかた、連れていってください」
ところが黒騎士さんたちは、隊長らしき人が「退却だ! 退却!」と命令すると、逃げてしまった。仕方ないので、右足切断騎士と左足切断騎士の止血を、私がすることに。その間、なんかやたらと叫ばれていたが。
さてと。
ここでも何か、異変が起きているようだ。
私の推測は、巫女の首がすげ替えられたというもの。
別に、騎士の鎧の色が変わったから、というわけではないよ(それも根拠のひとつではあるけれども)。
結局、同じことをやってきたからだ。つまり向こうは、私がこの神殿に来ることを未来予知し、黒騎士たちで罠を張っていた。だが、私が彼らを撃退するところまでは未来予知できていなかった。
クラウディアさんが、以前に犯した間違いと同じではないか。
とするならば、巫女がクラウディアさんでは筋が通らない。クラウディアさんは、同じ間違いを繰り返すタイプには見えなかったし──。
そう、たとえば新たな巫女は、これも未来予知できなかった。
神殿の外では、先ほど退却した黒騎士さんたちが転がっている。死んではいないと思うけど、みな重傷だ。
私は、実にシンプルなことをした。
黒騎士さんたちの退却ルートに、《阿吽竜巻》と《大地愛暴》を同時発動したのだ。これさえも予知できなかったのならば、新たな巫女の〈未来予知〉スキルは、クラウディアさんに劣る。劣化〈未来予知〉というところかぁ。
黒騎士の隊長さんが、「ううう」と呻いている。
私は、隊長さんのむきだしの喉に、〈スーパーコンボ〉の柄頭をおいた。力は加えていない、いまのところは。
「クラウディアさんは、どこですか?」
「……」
「少し疲れたので、この〈スーパーコンボ〉に体重をかけてみましょうかね。(打撃Lv.50)の力で。すると柄頭の下がどうなるかは、なんとも言えませんね。大地は砕けるでしょう。いや、いまは大地ではなく、誰かの喉に押し付けてあるのでしたね」
隊長さん、顔面蒼白になる。
それから、むがむがと口を動かし、ある監獄の名を口にした。その監獄がどこにあるかは知らないけれど、それは聖都MAPでも探せばいいよね。
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