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110,落ちてきた。
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「では、アリア。お主の武運を祈っておるぞ」
クラウディアさんが手を差しだしてきたので、反射的に握手した。それから、「えっ」となる。
「ここで別れるんですか? バードンとの対決はどうするんです?」
「わらわは、ひとまず聖都を去る。じゃが勘違いするな。わらわは何も、バードンを恐れて逃げるわけではない。わらわが危惧しているのは、もう一つの存在じゃ」
「なるほど、偽アリエルですか」
偽アリエルが【覇王魔窟】内にいないのならば、どこに現れてもおかしくはない。この聖都にも。だからクラウディアさんは、とんずらするわけか。自分の信徒を置いて? だがクラウディアさんは、すでにその答えも用意していた。
「わらわを信ずる信徒たちは、わらわのもとに集うじゃろう。いわば、これは選別じゃ。わらわのもとに来るか、それともバードンを信ずるのか。最後に女神の祝福を得られるのは、さてどちらじゃろうな?」
クラウディアさんを止める手立てもないので、見送ることになった。一応は、聞きたいことは聞いたし。もちろん監獄から救出した返礼として、ちょっと手伝ってくれても良かったのだけども。たとえばクラウディアさんが聖都内にとどまってくれるだけで、バードンの〈未来予知〉の妨害役として機能してくれたのに。クラウディアさんが聖都から離れるとなると、それは期待できそうもない。
クラウディアさんが歩き去る。
私の右手には、紙片があった。クラウディアさんが握手のさい、私の右手に入れてきた紙片。いつこの紙片に書いたのだろう。おそらく監獄を出るときに、賭けポーカーで巻き上げられているサンディさんを眺めていたとき。
紙片には、住所が書かれていた。おそらく大神官バードンの居所。利害の一致。クラウディアさんとしては、打倒バードンは『いいね!』。私も未来予知スキルのための人体素材をゲットできるので『いいね!』。
「サンディさん。未来予知ができる敵と戦うには、どうしたらいいかと思いましてね」
サンディさんは周囲を見回しながら、なぜかそわそわしている。
「アリアちゃん。酒場はどこだろう? なんだか、わたしはお酒を飲まないと心がざわざわすることに気づいたよ。これって、ざわざわ病?」
「それはアルコール依存症」
「またまたぁ~」
「……確かさっき、通りに酒場がありましたが」
「よーし行こうよ、アリアちゃんっっ!!」
しかし未来予知スキルは、そこまで万能なのだろうか。万能ではない、とクラウディアさんは断言したわけだけど。
たとえば、ある朝起きて、こんな未来予知をする。
〔家の前の通りで、バナナの皮を踏んで滑って転ぶ〕と。そこで『よし、バナナの皮を迂回しよう』と思い、実行するだろう。ところがバナナの皮を迂回したところ、暴走馬車に轢かれて死ぬかもしれない。
または〔バナナの皮を踏まずに左へ迂回したところ、暴走馬車に轢かれてしまった〕というところまで未来予知できたとする。そこでバナナの皮の右へと迂回する。バナナの皮は踏まず、未来予知した者も無事だった。
その半日後、未来予知した者の奥さんが、放置されていたバナナの皮を踏んで転び、頭を打ってご臨終。
未来予知者はガッカリするよね。ああ、自分がバナナの皮を踏んでいれば、妻が死ぬこともなかったのに、と。まぁバナナの皮を掃除しろよ、という落ちではあるけれども。
結論からいうならば、未来予知スキルは、万能なのだ。
問題は、人間の脳にある。人間の脳では、未来予知スキルを完全に使いこなすことなどできない。そこを突けばいいのかも。
「酒場は後回しです。行きますよ、サンディさん」
「えー、どこに行くのアリアちゃん?」
「もちろん、大神官バードンさんのお家です」
クラウディアさんから得た住所を頼りに、聖都内を移動。貴族もびっくりな大豪邸へとたどり着いた。神官って、こんな豪勢に暮らしていいものなのかな。敬虔なる信者は、財産を慈善活動とかでつぎ込むものでは? まぁ、なんでもいいけども。
上空へと《波動砲Lv.3》を打ち上げてから、豪邸内に侵入。
豪邸内を移動していくと、やたらとでかい寝室に出た。汗だくの裸の女性が、5人ほどベッドで寝ている。
サンディさんがフムフムとうなずく。
「ここで『一戦』あったようだね。しかし、5人相手にするとは、バードンという大神官──やるね」
「……」
サンディさんに呆れていたら、バードンさんがその後ろから現れる。未来予知によって、私たちの侵入を予知していた? ふむ、それくらいはできて当然だよね。
「魔女よ。ここにやってくるとはな──この神聖なる我が部屋に」
「はい、どうもです」
私が挨拶し、サンディさんが小声で「神聖なるというか、ただのヤリ部屋では」と呟いた。
バードンさんは右手に持っていた、厳かな槍を突き出す。
「これが分かるかね? この槍は、稀少価値SSSランクアイテム〈神の槍〉。どのような防御力を有していようとも、どのような防御スキルを使おうとも、〈神の槍〉を回避することはできぬ。さぁ、死ぬがいい魔女よ。そして、そっちの女は、余が可愛がってやろう」
サンディさんが「えーキモい」という反応。
ここで、先ほど打ち上げた波動砲が降ってきた。
屋根を突き抜け、バードンさんの頭上に落ち、着弾。バードンさんの頭蓋骨を吹き飛ばし、脳味噌を飛び散らせる。
「ふむ。未来予知の限界を見ましたね、サンディさん」
「あ、アリアちゃん。あそこに酒瓶があるよ」
クラウディアさんが手を差しだしてきたので、反射的に握手した。それから、「えっ」となる。
「ここで別れるんですか? バードンとの対決はどうするんです?」
「わらわは、ひとまず聖都を去る。じゃが勘違いするな。わらわは何も、バードンを恐れて逃げるわけではない。わらわが危惧しているのは、もう一つの存在じゃ」
「なるほど、偽アリエルですか」
偽アリエルが【覇王魔窟】内にいないのならば、どこに現れてもおかしくはない。この聖都にも。だからクラウディアさんは、とんずらするわけか。自分の信徒を置いて? だがクラウディアさんは、すでにその答えも用意していた。
「わらわを信ずる信徒たちは、わらわのもとに集うじゃろう。いわば、これは選別じゃ。わらわのもとに来るか、それともバードンを信ずるのか。最後に女神の祝福を得られるのは、さてどちらじゃろうな?」
クラウディアさんを止める手立てもないので、見送ることになった。一応は、聞きたいことは聞いたし。もちろん監獄から救出した返礼として、ちょっと手伝ってくれても良かったのだけども。たとえばクラウディアさんが聖都内にとどまってくれるだけで、バードンの〈未来予知〉の妨害役として機能してくれたのに。クラウディアさんが聖都から離れるとなると、それは期待できそうもない。
クラウディアさんが歩き去る。
私の右手には、紙片があった。クラウディアさんが握手のさい、私の右手に入れてきた紙片。いつこの紙片に書いたのだろう。おそらく監獄を出るときに、賭けポーカーで巻き上げられているサンディさんを眺めていたとき。
紙片には、住所が書かれていた。おそらく大神官バードンの居所。利害の一致。クラウディアさんとしては、打倒バードンは『いいね!』。私も未来予知スキルのための人体素材をゲットできるので『いいね!』。
「サンディさん。未来予知ができる敵と戦うには、どうしたらいいかと思いましてね」
サンディさんは周囲を見回しながら、なぜかそわそわしている。
「アリアちゃん。酒場はどこだろう? なんだか、わたしはお酒を飲まないと心がざわざわすることに気づいたよ。これって、ざわざわ病?」
「それはアルコール依存症」
「またまたぁ~」
「……確かさっき、通りに酒場がありましたが」
「よーし行こうよ、アリアちゃんっっ!!」
しかし未来予知スキルは、そこまで万能なのだろうか。万能ではない、とクラウディアさんは断言したわけだけど。
たとえば、ある朝起きて、こんな未来予知をする。
〔家の前の通りで、バナナの皮を踏んで滑って転ぶ〕と。そこで『よし、バナナの皮を迂回しよう』と思い、実行するだろう。ところがバナナの皮を迂回したところ、暴走馬車に轢かれて死ぬかもしれない。
または〔バナナの皮を踏まずに左へ迂回したところ、暴走馬車に轢かれてしまった〕というところまで未来予知できたとする。そこでバナナの皮の右へと迂回する。バナナの皮は踏まず、未来予知した者も無事だった。
その半日後、未来予知した者の奥さんが、放置されていたバナナの皮を踏んで転び、頭を打ってご臨終。
未来予知者はガッカリするよね。ああ、自分がバナナの皮を踏んでいれば、妻が死ぬこともなかったのに、と。まぁバナナの皮を掃除しろよ、という落ちではあるけれども。
結論からいうならば、未来予知スキルは、万能なのだ。
問題は、人間の脳にある。人間の脳では、未来予知スキルを完全に使いこなすことなどできない。そこを突けばいいのかも。
「酒場は後回しです。行きますよ、サンディさん」
「えー、どこに行くのアリアちゃん?」
「もちろん、大神官バードンさんのお家です」
クラウディアさんから得た住所を頼りに、聖都内を移動。貴族もびっくりな大豪邸へとたどり着いた。神官って、こんな豪勢に暮らしていいものなのかな。敬虔なる信者は、財産を慈善活動とかでつぎ込むものでは? まぁ、なんでもいいけども。
上空へと《波動砲Lv.3》を打ち上げてから、豪邸内に侵入。
豪邸内を移動していくと、やたらとでかい寝室に出た。汗だくの裸の女性が、5人ほどベッドで寝ている。
サンディさんがフムフムとうなずく。
「ここで『一戦』あったようだね。しかし、5人相手にするとは、バードンという大神官──やるね」
「……」
サンディさんに呆れていたら、バードンさんがその後ろから現れる。未来予知によって、私たちの侵入を予知していた? ふむ、それくらいはできて当然だよね。
「魔女よ。ここにやってくるとはな──この神聖なる我が部屋に」
「はい、どうもです」
私が挨拶し、サンディさんが小声で「神聖なるというか、ただのヤリ部屋では」と呟いた。
バードンさんは右手に持っていた、厳かな槍を突き出す。
「これが分かるかね? この槍は、稀少価値SSSランクアイテム〈神の槍〉。どのような防御力を有していようとも、どのような防御スキルを使おうとも、〈神の槍〉を回避することはできぬ。さぁ、死ぬがいい魔女よ。そして、そっちの女は、余が可愛がってやろう」
サンディさんが「えーキモい」という反応。
ここで、先ほど打ち上げた波動砲が降ってきた。
屋根を突き抜け、バードンさんの頭上に落ち、着弾。バードンさんの頭蓋骨を吹き飛ばし、脳味噌を飛び散らせる。
「ふむ。未来予知の限界を見ましたね、サンディさん」
「あ、アリアちゃん。あそこに酒瓶があるよ」
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