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第1章
Ⅰ―Ⅷ
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早く行かなきゃと思ったものの、どこに?という話で。霧深い道ともいえぬ道を進む。
実質、僕は本当に迷子になっている。
足はとりあえず前へ前へと進むけど、この先に何があるのか、自分はどこに向かっているのか、全くもって分からない。
「おい、人間」
何か声が聞こえてきたけど…。幻聴かな?幻聴だよね?
こんなとこで、絡まれるとかそんな最悪な状況ありえないよね?
「無視するな、人間」
ありえないと思いたかった人生でした。
声がする方をチラッと見てみる。岩だ。岩から声がする。
「…な、何かご用でしょうか?」
相手がどんなヒトなのか、分からないので下手に出てみる。我ながら、間抜けな行動だ。
「お前…顔は貧相か?」
何かこの岩、失礼なこと聞いてきたんですけど。
貧相か?と聞かれても、僕には分からないし。人それぞれですよ感じ方は…
「何でそんな事を聞くんです…?」
「貧相な顔で黒髪の人間を探している」
なるほど、黒髪の人間という見た目は当てはまっているけど顔があまり見えないから聞いてきたのか…。
にしても、貧相な顔って他にいくらでも言い方があるだろう…。
あのヒトなら言いそうだけども。
「魔王に頼まれたんですか…?」
「人間に答える義理は無いが、お前がその貧相な人間だな?」
貧相な顔から、貧相な人間に。僕って他の人からそんな風に見えてたの?
「はい、僕が……その人間です」
自分で貧相って言っちゃったら、色々失くしてしまいそうだから言わなかった。普通に悲しい。
「魔王様の元へ連れて行く」
僕の悲しみと引き換えに、迷子から解放されるなら嬉しいよ。うん…。
「ついてこい」
岩から、モンスターが飛び出してきた。
鬼の様な面を被っていてミノをはいている。僕の膝ぐらいの高さで意外と小さい。
言われるがまま、僕はついていった。
*****
あれから結構歩いた。霧は相変わらず濃いまま。
「あ…!」
霧の中に人影…というか角の生えた人影が…!
疲れを忘れ、かけだす。
ここまで連れて来てくれたモンスターの子は、すぐに霧の中に消えていった。
「お…?相棒か?」
霧の中で見えたのは、僕を置いて行った張本人。
「悪いな!置いて来てしまっていた!」
ニカッと笑う魔王。全く悪いと思ってなさそうだ。
でも、その笑顔につられて笑ってしまう。苦笑いだけど。
「…………………あ」
魔王が突然、固まった。どうしたんだろう。
「まだ、お前には謝らねばならない事がある…」
何だろう、僕を置いていく事より悪いと感じるような事なのか?
「……その…昼食をな……相棒の分まで食べてしまった…のだ」
見せられたのは、魔王の手に乗っている空の弁当箱。確か村の人に昼食用に貰ったものだ。
村を出発する前は、しっかり僕の分もあった。
「……………………」
グウゥゥ…
僕のお腹は、空腹を訴えるために間抜けな音を立てた。
その瞬間、空腹と疲労とショックで僕は意識を失い倒れ込んだ。
実質、僕は本当に迷子になっている。
足はとりあえず前へ前へと進むけど、この先に何があるのか、自分はどこに向かっているのか、全くもって分からない。
「おい、人間」
何か声が聞こえてきたけど…。幻聴かな?幻聴だよね?
こんなとこで、絡まれるとかそんな最悪な状況ありえないよね?
「無視するな、人間」
ありえないと思いたかった人生でした。
声がする方をチラッと見てみる。岩だ。岩から声がする。
「…な、何かご用でしょうか?」
相手がどんなヒトなのか、分からないので下手に出てみる。我ながら、間抜けな行動だ。
「お前…顔は貧相か?」
何かこの岩、失礼なこと聞いてきたんですけど。
貧相か?と聞かれても、僕には分からないし。人それぞれですよ感じ方は…
「何でそんな事を聞くんです…?」
「貧相な顔で黒髪の人間を探している」
なるほど、黒髪の人間という見た目は当てはまっているけど顔があまり見えないから聞いてきたのか…。
にしても、貧相な顔って他にいくらでも言い方があるだろう…。
あのヒトなら言いそうだけども。
「魔王に頼まれたんですか…?」
「人間に答える義理は無いが、お前がその貧相な人間だな?」
貧相な顔から、貧相な人間に。僕って他の人からそんな風に見えてたの?
「はい、僕が……その人間です」
自分で貧相って言っちゃったら、色々失くしてしまいそうだから言わなかった。普通に悲しい。
「魔王様の元へ連れて行く」
僕の悲しみと引き換えに、迷子から解放されるなら嬉しいよ。うん…。
「ついてこい」
岩から、モンスターが飛び出してきた。
鬼の様な面を被っていてミノをはいている。僕の膝ぐらいの高さで意外と小さい。
言われるがまま、僕はついていった。
*****
あれから結構歩いた。霧は相変わらず濃いまま。
「あ…!」
霧の中に人影…というか角の生えた人影が…!
疲れを忘れ、かけだす。
ここまで連れて来てくれたモンスターの子は、すぐに霧の中に消えていった。
「お…?相棒か?」
霧の中で見えたのは、僕を置いて行った張本人。
「悪いな!置いて来てしまっていた!」
ニカッと笑う魔王。全く悪いと思ってなさそうだ。
でも、その笑顔につられて笑ってしまう。苦笑いだけど。
「…………………あ」
魔王が突然、固まった。どうしたんだろう。
「まだ、お前には謝らねばならない事がある…」
何だろう、僕を置いていく事より悪いと感じるような事なのか?
「……その…昼食をな……相棒の分まで食べてしまった…のだ」
見せられたのは、魔王の手に乗っている空の弁当箱。確か村の人に昼食用に貰ったものだ。
村を出発する前は、しっかり僕の分もあった。
「……………………」
グウゥゥ…
僕のお腹は、空腹を訴えるために間抜けな音を立てた。
その瞬間、空腹と疲労とショックで僕は意識を失い倒れ込んだ。
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