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第1章

Ⅰ―ⅩⅣ

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 赤いカーペットが敷いてある廊下を行く。
 
 廊下の端には左右ともに格調が高そうな調度品や、豪華なツボが置かれている。
 
 流石、国王の住む城。ぬかりない豪華さだ。
 
 
 (………やばい、緊張してきた…)
 
 
 元から、人と話す事が苦手な僕は出来れば王様と会話をしたくないんだけど…それもそれで、失礼なやつになるよな…。
 
 急に話を振られたりしたら、絶対にキョドって変な事言う自信あるよ。うん。
 
 
 「謁見の準備が出来ましたらお呼びしますので、それまでこちらでお待ち下さい」
 
 
 え…。案内されていたのは王様がいる王座では無く待合室だったみたいだ。
 まぁ…緊張がピークだったから良かったかもしれない。待合室のソファにおずおずと腰掛ける。思ったより硬かった。
 
 待ってる間に少し緊張を和らげよう…。
 
 えぇ…っと、手のひらに人書いて…。あれ?でもこれって効果無いって聞いたことあるな。
 
 
 「相棒よ、我は少し手洗いに行ってくる」
 
 
 僕が手のひらと見つめ合っていると、魔王がそう言って部屋を出て行った。
 
 ………僕は…大丈夫かな…
 
 あぁ、意識してしまうと行きたくなってくる。でも生憎、お手洗いの場所が分からないや。
 
 ……どうしよう。
 
 
 「………………」
 
 
 いや、もしかしたら意外と近くにあるのかもしれない…!
 
 まずは一旦、廊下に出て……
 
    ガチャ
 
 扉が開いた。いや、僕が開けたわけじゃない。
 僕がドアノブに手をかけようした瞬間、開いたから。
 

 もしかして、魔王が帰ってきた?それならお手洗いの場所も聞けるし、きっと近くに――
 
 「誰じゃお主」
 
 
 扉を開けたのは魔王では無かった。

 僕の目の前には幼い女の子がこちらを見ている。
 
 というか、ガンをとばしている。
 
 一体、この子は誰なんだろうか。
 高貴そうな服装から考えて王様のお子さんなのかな…。
 
 
 「えっと…魔王のお供の人間です」
 
 
 きっと僕なんかより、身分が高いだろうから敬語で話す。でも相手が子供だからか、緊張したりはしなかった。
 
 
 「ほう…お主みたいな貧相な顔の奴が魔王のお供とな?」
 
 
 あれ?なんか今、どっかで聞いたようなワードが…。
 
 
 「はい、魔王のお供です」
 
 
 満面の笑みで答えた。子供の言動に、落胆してしまっては僕の自尊心が崩壊しちゃう。粉々になっちゃう。
 
 
 「ぬwかwしwおwるww」
 
 
 女の子は急に腹を抱えて笑いだした。
 
 ………………………………
 ………………………………
 …………………………え?
 
 僕は満面の笑顔のまま固まった。
 
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