「リスポーン地点は魔王の城でした。」

師芭

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第1章

Ⅰ―XV

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 目の前の女の子は依然として笑い続けている。
 
 僕、そんな面白いこと言ったかな…。まぁ何にしろ、僕は今この女の子に馬鹿にされているらしい…。
 別に僕には小さい女の子に罵倒されて喜ぶという趣味はないから、嬉しくは無いんだけど。
 

 どんな表情をすれば良いのかわからないので、とりあえず僕は満面の笑みを顔に貼り付けたままだ。やばい、ちょっと泣きそう。
 

 そして、そんな事を考えている間に女の子はようやく笑い疲れたようで息を整えている。
 一体、何がそんなに面白かったのか謎だ。
 
 
 「のう、お主」
 
 
 あ、話しかけて来た。
 
 
 「は…はい」
 
 
 自分でも驚くぐらい、怯えた様な返事をしてしまう。……子供相手に。
 
 
 「その魔王はどこにおるのじゃ?」
 
 
 この子はどうやら、魔王をご所望の様だ。
 
 
 「お手洗いに行ってますよ…」
 
 
 魔王が部屋から出て行かなければ、僕がこんな思いをすることも無かったのでは…。ため息が出そうになる。
 

 それにしても遅い……場所が遠いのかな。
 
 
 「ほう…魔王でもトイレはするのだな」
 
 
 子供らしい疑問だなぁ。まぁ見た目はそんなに人間と変わらないから、するだろうね。
 
 
 
 ………………あ。
 
 そういや僕も、お手洗いに行こうとしてたんだ。
 あまりにショッキングな体験をしたせいで忘れてた。
 
 あぁ…思い出すと、もよおしてきた。どうしようどうしよう。


 ちょっとしゃくだけど、この子に場所を聞いてみるか…?
     
           また馬鹿にされそうだ…。
 
 でも、このまま王様に会うわけにもいかない。
 
 
 うぅ、背に腹は替えられないや……。
 
 
 「……あの僕もお手洗いに行きたいのですが、場所とか…教えてもらえませんか…?」
 
 
 出来るだけ笑顔を崩さず話してみる。冷汗が背中につたってきた…。どうしよしんどい。
 
 
 「ん?…良いぞ。暇だったしな」
 
 
 お、おぉ。良かった……。罵倒とかも浴びせられない様だ。…本当に良かった。
 
 
 「有難う御座います!」
 
 
 ついてこいとだけ言うと、女の子は部屋を出て行く。僕もそれにノコノコとついていく。
 

 僕って、割と誰にでもノコノコとついていくなぁ…。あ、でも誘拐犯とかにはお菓子貰ってもついていかないよ?
 
 
 「ここだ。忘れるなよ」
 
 
 あれ?割と…っていうか、すごい僕達がいた部屋の近くじゃん。
 

 え…じゃあ、もしかして魔王が遅いのは…………。
 

 いや、考えるのはよそう。魔王だってするよ。うん。
 
 
 「じゃあ私は待ってるな」
 
 
 何か待っていてくれるそうだ。
 でも、待たれると急がないとっていう気持ちになってしまうなぁ。
 

 女の子に感謝の言葉を述べて、トイレに向かう。やっぱり国王の城の中ともなると、トイレも豪華で綺麗そして何より広い。
 
 
 「…………奥に行こう」
 
 
 何故か、僕はこんなに広い空間でも奥の方に行きたくなる。
 

 あれ?でもおかしいなぁ…。
 

 何がおかしいのかというと、見えた限りでは閉まっているトイレは無かったんだ。
 じゃあ、魔王は一体どこに行っているんだ。
 
 「………………………」
 

 トイレから出る。そして手を洗う。
 
 
 「お、早いな」
 
 
 先程の通り、女の子は待っていた。正直、冗談だと思ってたよ。
 

 魔王がご所望らしい女の子にトイレにはいなかったと伝える。
 
 
 「は?じゃあどこにいるのだ」
 

 僕もまさにそう思ったよ。一体、どこまで行ってるんだろうあの人。
 
 まさか迷子……とかじゃないよね?

 
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