異世界冒険のご褒美は、大陸の覇権⁉︎

圭太郎

文字の大きさ
3 / 4
第1篇 : ケモナー男子高校生、ケモナー冒険者にJob-change!

3≪俺、王国に歓迎されり≫

しおりを挟む
 「ふぁーあ、よく寝た」俺が起きて伸びをしていると、2人も起きたらしく、寝ぼけ眼ねぼけまなこを擦りながら辺りを見回していた。すると、2人はサッと飛び起きて俺の側へ来るとそっと耳打ちした。「おい、キョウスケ、どうやらオレ達は囲まれている様だぜ」そう言うとレイはスッと短剣を構え、俺の横で身構えた。ヒナタも同じく片手剣ハンドアックスを構えると同じ様に俺の横で身構えた。対する俺はと言うと、まだ状況があまり掴めてない上に丸腰である。これでは戦えないので足元に運良く落ちていた、鉄パイプを持って構えることにした。

 俺は小声で2人にだけ聞こえる様にそっと聞いた。「レイ、ヒナタ相手はどれぐらいだ」と言うのも、あたりは早朝であるから、まだ薄暗いままなのだ。それにレイは、囲まれていると言っていたが、俺は何の気配も感じなかった。まぁ、レイはダークエルフといえど立派な妖精種フェアリー・エルフィンつまり、その場の妖精達の声を聞けるのだろう。一方ヒナタは獣人種、つまり半分は人だが、あと半分は獣なのである。だから、野生の勘というものが働いたのだろう。

 「そうだな、数はざっと15程だろうな」これじゃあこっちが不利じゃないか。「キョウスケは戦った事あるか」おもむろにレイは聞いてきた。当然、日本にいたときは、戦うなんて事あり得なかったし、戦ったこともない。「いや、すまんが戦ったことはない」「なら、仕方ねぇな。オレに任しときなァァァ!!!」そう言いながらレイは暗闇の中へ走り去って行った。本当に情けないことに俺はビビって丸くなっていた。当然敵は丸腰の俺に手を出してきたが、俺に近づいてきた敵は全てヒナタが請け負ってくれているようだった。耳元では、金属器同士の激しくぶつかり合う音がずっと続いていた。俺は最初は2人と共に戦うつもりでいたが今は怖くて丸まっている。

 2人には悪いが、俺はそのまま目を瞑って丸まっていた。いったいどれぐらいの間そうしていただろう、目を開けるとあたりはすっかり明るくなっており、敵の全容がはっきりと映し出されていた。そこに転がっていたむくろ達は、立派な鎧を着込んだ鳥人ハーピーや、戦闘兎人ヴォーリアバニーさらには、背丈はゆうに3メートルを超えるだろう鬼人種オーガ達であった。

 そしてその骸の中心にヒナタとレイは立っていた。「ひとまず、終わったな…。」レイはそう言うとヒナタを抱えて俺の方に来て、「まだ、外にやつら残ってるみてぇだからオレ行ってくるわ」「ヒナタをよろしくな!」そう言ってヒナタを俺に預け、またもや一瞬のうちに走り去って行ってしまった。

 俺はヒナタを見やった。その身体からだには、おそらく敵の爪や牙でつけられたであろう引っ掻き傷が無数に点在し、ヒナタは軽装だったためか、腹部に深い傷を負っていた。とりあえず、ヒナタは安静にさせなければならない、とりあえず俺はヒナタを座らせて、上着を脱いだ。そしてその上着を下に敷き、その上にヒナタを寝かせた。これは、傷口に少しでも細菌や、埃が入らないようにするためである。とは言え、これはあくまで応急処置。すぐに病院に連れて行きたい。だが、今のヒナタでは自力で移動する事は難しそうだ。それに、まだレイが帰ってこない、よって此処ココから動く事が出来ない。

 仕方がないので、俺はヒナタのためにできることをしてやろうと思った。まず、ヒナタには悪いが、彼女の服を脱がせることにした。彼女の服は、どこも血でベットリしていて、コレでは埃なんかが引っ付いてしまう。俺はこっちの世界に来た時に鞄を持って来ていた。その中を探ってみると筆箱があったのでハサミを取り出し、腹部の装備を一部だけ切り取った。その次にタオルを取り出し、これを持って来ていた水筒の水で濡らしヒナタの腹部の傷口にあてた。

 そして、このままでは止血出来ないので、着ていたシャツを脱いで、ヒナタを起こしその細く華奢きゃしゃな体を支える様に正面から抱き、彼女の腰に手を回して背後から正面へ来る様にシャツの両腕部分を少しきつめに結んだ。コレで少しは止血出来るはずだ。とりあえず、コレでしばらくはもつはずだ…。

 ~一方、ヴィースタその他のギルド街を擁する王立国家ヴィースティアの中央王都では、第19代神王<ガルフ・ジルーゼ・アルベリオ>と、その配下の守護次官達が、大騒ぎしていた。「オイ!どうなっているんだ!」「なぜ、SP達は戻ってこんのだ!あの者達は我が王国でも選りすぐりの≪特級守護神ガーディアン・オブ・フロスティー≫眷属のSP達であろうが!」「誰か訳を知る者はらぬか!」「申し上げます!今しがた、偵察兵による敵の情報が入ってきました!」「ほう、それで?」「はい、敵の数は3、人種ヒトシュの男、獣人キャット・ピープル種の女、そして、精霊種であるダーク・エルフの女です」

 その報告に、神王ガルフは、唸って言った。「それは、この街の者ではないのか?」「はい、先ほど守護特務官にこの街の冒険者、並びにSP達の出自などを詳しく調べさせました」「ですが、その者達の情報は調べさせたどの情報にも一致しなかったとのことです」

 これを聞いた神王ガルフは、感心したようにうなづくと、そばに居た守護次官達にこう命じた。「その者らを我が帝国に迎えようぞ」「よってそなたらにはあの者達をなんとしてでも此処へ連れて参って欲しい」「よいか?しかと命じたぞ」

 こうして、3人を王国に迎え入れるべく、守護次官達による守護防衛特務隊が結成され、3人の歓迎特任のため15人程の騎馬の小隊が王都を出立した。

 時を同じくして、その頃キョウスケ、ヒナタ、レイの3人はレイがSP達を倒したため荷物をまとめ、王国へ向かってその場を後にした。「ふぅ、この街はいつからこんな危なっかしくなっちまったってんだよ…」と、レイがぼやき、キョウスケはというと、ヒナタがまだ回復していないので、抱きかかえて歩いていた。
俗に言う"お姫様だっこ"というやつだ。
それはさておき、最初に口を開いたのは、キョウスケだ。「なぁ、レイ」「ん、何だ?」「さっき俺たちを襲ってきたアイツラは何だったんだ?」そう尋ねたキョウスケにレイは、あっけらかんと答えた。「ああ、#彼奴__あいつ__#らはな、オレの仲間だった奴らだよ。オレが殺したやつら全員がな」それを聞いたキョウスケは、自分で聞いてなんだったがなんと言えばよいか分からなかった。それほどにレイの言ったことは、この世界に来るまで平和且つ安全に暮らしていたキョウスケにとっては衝撃的なコトだったのだ。いくらこの世界には冒険者稼業や傭兵稼業があると言っても、年の近い彼女からはそんな言葉を聞きたくはなかった。だが、異世界にいる以上そんなことは言ってられないのが現実だ。そんな事を考えながら歩いてると何かにぶつかった。「痛え、今度はなんだよ」ふと気づけば俺の前には大きな壁がっ!と思いきや、「おい、しっかり前見て歩け若造」と、大地を揺るがすような野太いそんな声が上から降ってきた。見上げれば、俺の背の4倍はあろうかという巨人が見下ろしていた。俺が壁だと思ったのは、この巨人の持つ盾だったのだ。さて、他のみんなは大丈夫かと見渡してみれば、なんと優雅にお茶を飲んでいるではないか。コイツら囲まれてるってのによく平気だな。まぁみんな大丈夫そうなので、俺は立ち上がり聞いた。「おい、おっさんあんたら誰だよ、なんで俺らを囲ってるんだよ!」「俺らは王都に用があるんだ、だからさっさとどいてくんねぇかな」すると、俺の前にいた巨人の足元から「これはすまない青年よ」「我等は君たちを王国に迎える為派遣された、守護防衛特務隊だ!君たちを丁重に王国まで送迎させてもらう」「では君もあのお嬢さん方と同じ様にその馬車に乗ってくれたまえ」「ちょっと待って下さい、いきなりそんな話されても怪しすぎてついて行けませんよっ!」そう反抗していると、「この人達は信頼しても良さそうだにゃ~」と、側からそんな声が聞こえ振り向くと、視線の先に居たのはついさっきまで立ち上がることすら出来なかったヒナタだった。そのヒナタが馬車の中からにこやかに手を振りながら言っていたのだ。唖然としている俺にその男は「我々の王国にお越し下されば長旅の疲れや戦いの傷を癒す事もできましょう」「いや、俺は別に大丈夫なんで」そう言って立ち去ろうとした俺にその男はこう続けた。「貴方は大丈夫かも知れませんが、そちらのもう1人のお嬢様はどうでしょうか?」「あの方は気丈に振る舞っておられますが実際はどうなのでしょうか?」「見た目の外傷は少なそうですが、あの方のお顔をご覧下さい、笑ってはおられますがお疲れになっているご様子ではございませんか?」「少なくとも私はそう思いますが」そう言ってその男は椅子に腰掛け紅茶らしきものを一口飲んだ。そこで、俺はヒナタやレイが俺を助けるために傷を全て肩代わりしてくれていた事を思い出した。「そうだよな、元はと言えば俺が戦わなかったもんだからあの2人が助けてくれてたんだよな」「それなら、あの2人にはしっかりと休んでもらわねぇとな」「その通りでございます」俺の言葉に男は即座に反応した。そして俺達は男に言った。『それでは、どうぞよろしくお願いします‼︎』「承りました」男は満足そうに頷くと馬に飛び乗り側に控えていた衛兵達に告げた。「我々はこれよりこの御三方を王国へお連れする!」「お前達の任務はこの御三方を無事に王国までお連れする事だ!各自SPとしての誇りを持ち気を引き締め任務へ当たるのだ!よいな!」『オオオオオオーーー!』その言葉に呼応するが如く衛兵達は少数ながらも大地を揺るがさんばかりの声で応答した。こうして俺らは王国へと赴く事となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...