終わりを願った者への鎮魂歌

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第七話 遥かなる昔【希望】だった者

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 周りが白く何もない空間の中に男が一人だけいた。
 そう‥‥俺‥‥本間求である。
 確か俺は宿で寝ていたはずなのにいつの間にかこんな何もない空間にいた。

「いや‥これどうゆうこと?」

 まじで意味の分からない状況である。
 最近よくわからない状況に巻き込まれているのに、ここにきてさらに意味の分からない状況は勘弁願いたいのに。
 だが、さすがにこれはただの夢の中だろう。
 だってベッドに入って寝ていただけなんだからこれはさすがに夢だろう。
 しかし夢の中でこんなに意識がはっきりしているのは、生まれて初めての経験だ。
 そんな初めての経験の中、ただ白いだけの空間にいるのは少し残念であった。
 どうせなら夢の中ぐらい幸せな気持ちになれる楽しい夢の中で意識があればよかったのに。
 はぁ‥とため息を漏らしながら白い空間を少し歩くことにした。
 ただ見渡す限り何もなくただただ白い空間なので歩かなくてもよかったが、夢の中でも寝るとゆうシュールな事をしてもなぁ~と思ったからである。
 前?に向かって歩いていくが行けども行けども何もなくやがて歩くのをやめて座り込んだ。

「なんにもない‥なんだここ?」

 本当によくわからない場所だ。
 なぜ俺はこんな夢を見ているんだ?
 もしこれが俺の心理状態の影響で見ているとしたら‥‥

「俺‥相当疲れているんだな‥‥」

「つまり俺は心理的に何にも考えたくなかったって事なのかな?」

 仕方ないので独り言をつぶやいてぼ~としていると、突然目の前に穴が現れた。

 俺は「うわ!」と言いつつビックリして飛び上がってしまった。
 心臓が飛び出そうなくらいビックリしたのはいつぶりだろうか‥‥
 あと誰もいなくて良かった~!
 今の見られていたらめちゃくちゃ恥ずかしくなるとこだった。
 そんな謎のプライドを守ることができた俺は手で冷や汗を拭うとようやく目の前の現れた穴の事を思い出した。
 ぽっかりと空いた穴の中は、奥まで真っ暗で何も見えなかった。
 だがいつまでもこの白い空間の中にいた所で、何にもならないだろうし
 それにそんな空間に急に穴が開いたのだ。
 とゆうことは【ここに入れ】とゆう無言のメッセージだろう。
 少なくとも俺はこの現象をそう受け取ることにした。
 それにただの夢の中だと思うので、仮にここで死んでも現実世界の俺が死ぬわけでもないしな!
 とりあえず俺はそう思うことにして自分を勇気づけたのだったが‥‥
 やっぱり怖かったのでそれから体感時間的には1時間くらい「入ろうかな?やっぱりここにいようかな?」とうろうろしながら考えていたのだった。
 そしてようやく踏ん切りがついたのか、穴の中に入ってみることにした。

「行くぞーーー!!」

 勇ましい声を上げながら、穴の中に飛び込んでゆくその背中は1時間もうろうろしながら考え込んでいた人間にはとても見えなかった。
 穴に飛び込んだ求はそのまま垂直に落下してゆき、情けない声を出しながらどんどん下へと落ちてゆくのだった‥‥。

「ガハッ!?」

 やがて顔面に何か固いものがあたり落下が終わった。
 感覚はないので痛くはなかったが、かなりの速度で落下していたので夢の中とはいえ正直死ぬかと思った。
 顔をさすりながら、前を向くとなんとゆうか目の前に人が座っていた。
 人がいたんだが‥‥なんかおかしい
 いや所詮夢の中なのでおかしくても普通なのだが、そうゆうおかしいではないのだ。
 雰囲気が異常なのである。
 普通の人間がもつ雰囲気とは何か違うようなモノをこの人は纏っている。
 それにさっきから俺の事を全く見ていない‥‥いやこれこっちにそもそも気付いているのか?
 目は虚ろで前を向いているはずなのに、その瞳には俺のことなど全く映っていなさそうだった。

「あの~すみませんここってどこですかね?」

 声をかけてはみるが、全く返ってこなかった。
 この男、金色の髪に青い瞳、顔立ちは西洋風のイケメンである‥‥羨ましい。
 服装はまるでゲームの勇者みたいな格好をしている。
 俺の夢スゲーな‥‥
 無口な女の子が出てくる夢ならまだしも、こんな真っ暗な場所で返事も返さなければこっちを見る事すらしない勇者風のイケメンと二人きりの状況って相当ヤバい気がする。
 元の世界に帰ったらまずカウンセリングを受けようと心に強く決めたのであった。
 もう一度声をかけるが、一向に返事もなければこっちを全く見ない。
 視界に確実に入っているはずなのにこちらを見ておらずただまっすぐ暗闇を見ている。
 意識が無さそうなので男の肩を揺さぶり意識を確認しようとした瞬間、電撃が右手を伝って体中を巡る。
 ビリっとした感覚の中で不思議な情景が頭の中に浮かんでくる。
 自然溢れる森の中で鳥が優雅に鳴き、木々は穏やかに揺れ、整地された道を進むと
 そこには小さな家がポツンと一つだけ建っていた。家はレンガ造りでまるで中世の家のような見た目であった。
 庭には小さいものの野菜の畑があり、その家では誰かが生活しているような雰囲気があった。
 家の中に入ると、長い髪で金髪の緑の目をした女性がこちらに満面の笑みで笑いかけてきた。

「おかえりなさい」

 とても嬉しそうな笑顔でそう言った。
 だが突然彼女の顔から血が流れ出たかと思えば、怪物へと姿を変えたのだった。
 それはとてもおぞましい姿であった。
 そして怪物が俺に襲い掛かろうとした瞬間に俺は意識を取り戻した。
 シャツはびっしょりと濡れており、今も汗が止まらない。
 慌てて今いる場所を確認するために周りを確認すると、ここは宿屋のベッドの上であった。

「なんだったんだあれ‥‥?」

 どうやら目覚めることができたらしい‥‥が最悪の気分である。
 窓を見るとまだ外は暗く、眠りについてからそんなに時間が経っていないようであった。
 しかしさすがにあんな夢を見た後にもう一度眠りにつけるほど、俺は神経が図太くはない。
 仕方がないので、外に出て散歩に出かけようと思ったが突然轟音が鳴り響いた。
 それと同時に窓の外は夜だとゆうのにオレンジ色に染まり明るくなっていた。

「一体何が起こったんだ!?」

 俺は状況を確認するために外に出ようとするが、その前にゲラニウムが扉を強く開けて部屋に入ってきて俺に告げた。

「敵だ!!起きろ!」

 ゲラニウムの発した聞きなれない言葉に俺はただ茫然としていた。
 脳の処理がまるで追いついていなかった。
 それは現代の日本人として生まれた者であれば仕方のない当然の反応でもあった。

「ボーとするな!!プルヌスを連れて急いで逃げるんだ!」

 ゲラニウムの言葉をようやく理解した俺は、急いでプルヌスのいる部屋へとゲラニウムと共に向かうのであった。
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