23 / 83
第1章『名もなき奇跡の始まり』
11.希うもの-2
しおりを挟む
(ど、どうなんだろ……見てない場所っていうか、見ていい場所って、あったかな……って、
なんか変態さんみたい……他に考え方ってないのかなぁ、うぅ……)
ロゼッタは勝手に変なことを考え、勝手に恥ずかしくなっていた。
(あー、もう! よく分かんないこと考えるくらいなら、聞いちゃえば良いか!)
意を決し、ロゼッタはレヴィに視線を向ける。
彼女は身体を洗い終えたらしく、苦笑しながら浴槽に近づいてきた。
「ロゼッタさん。絶対に変なこと考えてましたよね?」
「き、き、気のせい! 気のせいです!!」
「まあ、あの流れだと気になりますよねぇ……」
レヴィは一方的に『ロゼッタはラザラスのタトゥーの位置を考えていた』と決め打ちしてきたようだが、残念ながら何も間違っていない。
彼女はロゼッタから少し距離を取った状態で浴槽に入る。ざぶり、という音が響き、湯が溢れ出した。
「……ラズさんは、どこにも入れてないんですよ」
「あっ、そうなんですね!?」
そもそも“答えがない”が正解だったようだ。
見たことがなくて当然だ、とロゼッタはゆるゆると頭を振るう。そんな彼女を見て、レヴィはくすくすと笑った。
「全力で阻止したんですよ。ラズさんには、入れさせちゃダメかなって」
「えっと……」
「何となくの雰囲気で話しますけど、エスラさんから聞きましたか?
ラズさんがボクらと一緒に戦い始めたのは3年前、厳密に言うと2年前くらいの話なんです。
それまで、ちょっとだけ怪しくはありますが……ラズさんは普通に一般人やってたんですよ」
「そう、ですね……ちょっとだけ怪しく、の部分は気になりますが、3年前からだって話は聞きました。なるほど、準備期間が1年くらいあったんですね?」
「ですね」
ちょっとだけ怪しい、の部分は気になる……が、それが示すものに心当たりはある。
まず“病院を想起させるものがすべてダメ”というとんでもないトラウマを抱えた状態で、普通に暮らせるとは思えないからだ。
そして「ラザラスは人が怖いのではないか」というロゼッタの読みはきっと、間違っていない。
(何がどうなったらそうなるのか、は気になるけどね……)
考え込むロゼッタの姿を見て、レヴィは浴槽の中で身体を伸ばしながら口を開く。
「んー……ちょっと、話しときましょうかね。ラズさんもステフィリオン関係者なら、必要に応じて色々話してもらっても構わないってスタンスですし」
「……?」
「タトゥーを入れさせなかった理由、なんですけど……僕ら全員、ラズさんが昔、追いかけてた夢のことを知ってたんです。
その夢を追うなら、タトゥーって絶対に邪魔になっちゃうんで」
「将来の夢ってやつ、ですか?」
将来の夢。
単語としてはよく聞くが、ロゼッタ自身にとっては無縁なものだ。
だが、一般人であったラザラスに“それ”があるのは当たり前なのかもしれない。
問えば、ぱちゃり、とレヴィの翼が水面に顔を出す。
浴槽の縁にもたれ掛かりながら、彼女はどこか寂しそうに話し始めた。
「あの人、元は俳優志望なんです。まあ、本人の中では、完全に“過去形”になっちゃってるんですけどね」
「は、俳優!?」
それは、架空の物語の登場人物を演じる仕事——キラキラとした、芸能界の花形。
ロゼッタの中では、“俳優”とはそんなイメージだ。
改めて、ラザラスの姿を思い浮かべる。
顔もそうだが、長身で引き締まった体躯の持ち主だ。彼は“花形”に相応しい見た目をしているように思う。
とんでもない職業が出てはきたが、何も不思議ではない、むしろ当たり前だとすら思えてしまう。
「ふふ、すごくイメージできますよね。何せ、あの見た目ですからねぇ」
プカプカと湯に浮きながら、レヴィは深く息を吐き出す。
当たり前だが、疲れているのだろう。
「しかも見た目だけじゃなくて、普通に才能もあったみたいですよ?
それこそ、俳優育成ドキュメンタリー番組の出演者として抜擢されたり、大手事務所が揃いも揃って名刺渡してきたりするくらいには」
「えぇっ!? それ、凄いことなんじゃ……!」
「らしいですね。ボクがちゃんと理解できてるかどうかは怪しいんですけど……もう、ほんの一握り。100年に1度出てくるかどうか、レベルの逸材だったっぽいです」
言葉が、少し途切れた。
湯気の向こうで、レヴィは微かに目を伏せている。
「だから、とんでもなく嫉妬されて……襲われちゃったんですよ。
夜の公園に呼び出されて、いきなりナイフで斬りつけられたあげく、タコ殴りにされたそうです」
「え……」
酷い話ですよね、とレヴィは静かに呟いた。
「今日、あの黄金眼の竜人さんがラズさんの上に跨ってるのを見た時は、正直かなり焦りましたね。それはダメだろう、耐えられないだろうって、察していたので」
レヴィの予想通り、案の定ラザラスは動けなくなってしまったのだ。
ラザラスが病院を想起するものは一律でダメだという話も、この出来事に関連しているのだろう。
もしかすると、暴行を受け、病院送りになり……そこで、何かあったのかもしれない。
「……。正直に言うとあの時、ロゼッタさんが出てきてくれなかったら。ボクは、竜人さんを射殺する気でした」
「それは……」
当然だ、と言い掛けて、ロゼッタは口を閉ざす。
(この人達の前で、“命の選択”の話は、したくない)
復讐のついでなのかもしれないが、それでも彼女達、ステフィリオンの活動は、紛れもなく命を救う活動だ。
そんな人達の前で——酷い話題は、出したくない。
「ふふ、ボクは本当に、あなたに感謝してるんです。
射殺とか、そういうのは……かなり昔からやってるんで慣れてはいますが、一応、好き好んでやっているわけではないので」
「レヴィさん……」
「せめて、奪わなくて良い命は奪いたくはないですし、救える命は、救いたいんです」
あの黄金眼の男は、話せば分かってくれた。
最後は泣きながら謝ってもいた。
明らかに彼は、“奪わなくて良い”命だった。
彼の姿を思い出しているのか、レヴィはもう一度深く、息を吐き出す。
「ボクはせめて、理不尽に命が奪われないように、傷つけられないように、守りたいなーって思って、戦っています」
そして彼女はロゼッタの方に向き直り、どこか悲し気に笑った。
「まあ、やってることは人殺しですし、褒められたことじゃないんですけどね?」
人を殺してはならない、と誰かが言う。
復讐は何も生まない、と誰かが言う。
その人達はきっと「殺されていく人」や「理不尽に何かを奪われた誰か」のことを考えていない。
そういう存在がいることを、「知らない」とは言わせない。
なのに、知らないフリをして、上から目線でそんな偉そうなことを言っている。
——それはあまりにも、無責任ではないだろうか?
(わたしだって……)
ロゼッタは、過去を思い返す。だが、何故か靄がかかったように、思い出しきれない。
切り捨てられる同胞や、不必要だと繁殖場の隅に転がされた自身のことはおぼろげに思い出せるのに。
……ただ、それだけだった。感情が、乗らない。
考えても分からないものに縋りついても仕方がないと判断し、ロゼッタは口を開く。
「話聞いてる感じだと……レヴィさんは、復讐が目的じゃないんですね」
「あれ? そういう話も聞いてたんですね? エスラさんでしょうか?」
「……ですね」
ふふ、とレヴィが笑った。
「そう、ボクは違います。ステフィリオンの人達に助けてもらったので、その恩返しです。
あとはそれこそ、理不尽に傷つけられた人達の存在を知ってしまうと、動かずにはいられなかったんです」
復讐を、希うほどの絶望。
彼女の傍にいる存在は、耐えきれないほどの絶望を経て、ここに集っている。
だからこそ、彼女は戦うことを選んだのだろう。
「ただ、力になりたかった。それだけです。
ちょうどボクは戦えましたし、他にすることも無いですしね……でも、強いて言えば、」
そこで、レヴィは言葉を止める。
続きを待っていると、彼女は手から勢いよくお湯を飛ばしてきた。
「わっ!?」
飛ばされたのは、間違いなくお湯だった。
それなのに、その中に何故かひんやりとした感覚があった。行為そのものもそうだが、その違和感に心の底から驚いてしまった。
ドクドクと、心臓が跳ねている。本当にびっくりした。
「い、いきなり何するんですか!?」
「手遊び水鉄砲ってやつです。こうやるんですよ」
そう言ってレヴィはやり方を教えてくれたが、上手くできない……というか、レヴィ“が”上手すぎる!
「レヴィさん……こんなのも得意なんですね……」
「まあ、銃撃戦に関しては鍛えてもいますが、魔術も使ってますし?」
「えぇ!?」
全く気がつかなかった。もしかして、今も使っていたのだろうか?
「無属性魔術の『魔装弾』っていいます。弾道に軽く補正を入れてくれる術なんです」
そう言って、レヴィはロゼッタがいない方向に向けて、再びお湯を飛ばす。
確かに、真っ直ぐ綺麗に飛んでいるように見えた……とはいえ、彼女の技量に左右されている部分も大きそうだ。
あくまでも“補正”を入れる魔術なのだから、当然である。
「へぇ……! 便利ですね……!」
「それがそうでもないんですよ。魔力持ちが弾を撃つと、何故か絶対に術が乗っちゃうんです。
詠唱するしないの問題じゃないし、こういう“遊び”ですら術が乗っちゃうんです……だから、痕跡を消す方法も一緒に学ぶ必要があるんです」
先ほどの『お湯なのにひんやりとした感覚』がまさにそれなのだろうか。
そうだとすれば、少々危うい気がする。
「ほら、弾に残った魔力で狙撃手判明! とか笑えないですし?」
「ですよねぇ……」
魔力持ちが弾を撃つと、勝手に術が乗ってしまう——一体、どんな理論でそうなるのかは不明だ。
魔術を研究している人々の間でも解き明かされていない、“謎”の一つでもあるらしい。
(銃ってすごく集中しないと当たらないだろうから、その時に、無意識に魔術を発動しちゃうのかなぁ?)
解き明かされていない時点で、何をどうやっても“無理”なのだろう。
思っていた以上に、魔術というものは奥が深いんだな、とロゼッタは思った。
なんか変態さんみたい……他に考え方ってないのかなぁ、うぅ……)
ロゼッタは勝手に変なことを考え、勝手に恥ずかしくなっていた。
(あー、もう! よく分かんないこと考えるくらいなら、聞いちゃえば良いか!)
意を決し、ロゼッタはレヴィに視線を向ける。
彼女は身体を洗い終えたらしく、苦笑しながら浴槽に近づいてきた。
「ロゼッタさん。絶対に変なこと考えてましたよね?」
「き、き、気のせい! 気のせいです!!」
「まあ、あの流れだと気になりますよねぇ……」
レヴィは一方的に『ロゼッタはラザラスのタトゥーの位置を考えていた』と決め打ちしてきたようだが、残念ながら何も間違っていない。
彼女はロゼッタから少し距離を取った状態で浴槽に入る。ざぶり、という音が響き、湯が溢れ出した。
「……ラズさんは、どこにも入れてないんですよ」
「あっ、そうなんですね!?」
そもそも“答えがない”が正解だったようだ。
見たことがなくて当然だ、とロゼッタはゆるゆると頭を振るう。そんな彼女を見て、レヴィはくすくすと笑った。
「全力で阻止したんですよ。ラズさんには、入れさせちゃダメかなって」
「えっと……」
「何となくの雰囲気で話しますけど、エスラさんから聞きましたか?
ラズさんがボクらと一緒に戦い始めたのは3年前、厳密に言うと2年前くらいの話なんです。
それまで、ちょっとだけ怪しくはありますが……ラズさんは普通に一般人やってたんですよ」
「そう、ですね……ちょっとだけ怪しく、の部分は気になりますが、3年前からだって話は聞きました。なるほど、準備期間が1年くらいあったんですね?」
「ですね」
ちょっとだけ怪しい、の部分は気になる……が、それが示すものに心当たりはある。
まず“病院を想起させるものがすべてダメ”というとんでもないトラウマを抱えた状態で、普通に暮らせるとは思えないからだ。
そして「ラザラスは人が怖いのではないか」というロゼッタの読みはきっと、間違っていない。
(何がどうなったらそうなるのか、は気になるけどね……)
考え込むロゼッタの姿を見て、レヴィは浴槽の中で身体を伸ばしながら口を開く。
「んー……ちょっと、話しときましょうかね。ラズさんもステフィリオン関係者なら、必要に応じて色々話してもらっても構わないってスタンスですし」
「……?」
「タトゥーを入れさせなかった理由、なんですけど……僕ら全員、ラズさんが昔、追いかけてた夢のことを知ってたんです。
その夢を追うなら、タトゥーって絶対に邪魔になっちゃうんで」
「将来の夢ってやつ、ですか?」
将来の夢。
単語としてはよく聞くが、ロゼッタ自身にとっては無縁なものだ。
だが、一般人であったラザラスに“それ”があるのは当たり前なのかもしれない。
問えば、ぱちゃり、とレヴィの翼が水面に顔を出す。
浴槽の縁にもたれ掛かりながら、彼女はどこか寂しそうに話し始めた。
「あの人、元は俳優志望なんです。まあ、本人の中では、完全に“過去形”になっちゃってるんですけどね」
「は、俳優!?」
それは、架空の物語の登場人物を演じる仕事——キラキラとした、芸能界の花形。
ロゼッタの中では、“俳優”とはそんなイメージだ。
改めて、ラザラスの姿を思い浮かべる。
顔もそうだが、長身で引き締まった体躯の持ち主だ。彼は“花形”に相応しい見た目をしているように思う。
とんでもない職業が出てはきたが、何も不思議ではない、むしろ当たり前だとすら思えてしまう。
「ふふ、すごくイメージできますよね。何せ、あの見た目ですからねぇ」
プカプカと湯に浮きながら、レヴィは深く息を吐き出す。
当たり前だが、疲れているのだろう。
「しかも見た目だけじゃなくて、普通に才能もあったみたいですよ?
それこそ、俳優育成ドキュメンタリー番組の出演者として抜擢されたり、大手事務所が揃いも揃って名刺渡してきたりするくらいには」
「えぇっ!? それ、凄いことなんじゃ……!」
「らしいですね。ボクがちゃんと理解できてるかどうかは怪しいんですけど……もう、ほんの一握り。100年に1度出てくるかどうか、レベルの逸材だったっぽいです」
言葉が、少し途切れた。
湯気の向こうで、レヴィは微かに目を伏せている。
「だから、とんでもなく嫉妬されて……襲われちゃったんですよ。
夜の公園に呼び出されて、いきなりナイフで斬りつけられたあげく、タコ殴りにされたそうです」
「え……」
酷い話ですよね、とレヴィは静かに呟いた。
「今日、あの黄金眼の竜人さんがラズさんの上に跨ってるのを見た時は、正直かなり焦りましたね。それはダメだろう、耐えられないだろうって、察していたので」
レヴィの予想通り、案の定ラザラスは動けなくなってしまったのだ。
ラザラスが病院を想起するものは一律でダメだという話も、この出来事に関連しているのだろう。
もしかすると、暴行を受け、病院送りになり……そこで、何かあったのかもしれない。
「……。正直に言うとあの時、ロゼッタさんが出てきてくれなかったら。ボクは、竜人さんを射殺する気でした」
「それは……」
当然だ、と言い掛けて、ロゼッタは口を閉ざす。
(この人達の前で、“命の選択”の話は、したくない)
復讐のついでなのかもしれないが、それでも彼女達、ステフィリオンの活動は、紛れもなく命を救う活動だ。
そんな人達の前で——酷い話題は、出したくない。
「ふふ、ボクは本当に、あなたに感謝してるんです。
射殺とか、そういうのは……かなり昔からやってるんで慣れてはいますが、一応、好き好んでやっているわけではないので」
「レヴィさん……」
「せめて、奪わなくて良い命は奪いたくはないですし、救える命は、救いたいんです」
あの黄金眼の男は、話せば分かってくれた。
最後は泣きながら謝ってもいた。
明らかに彼は、“奪わなくて良い”命だった。
彼の姿を思い出しているのか、レヴィはもう一度深く、息を吐き出す。
「ボクはせめて、理不尽に命が奪われないように、傷つけられないように、守りたいなーって思って、戦っています」
そして彼女はロゼッタの方に向き直り、どこか悲し気に笑った。
「まあ、やってることは人殺しですし、褒められたことじゃないんですけどね?」
人を殺してはならない、と誰かが言う。
復讐は何も生まない、と誰かが言う。
その人達はきっと「殺されていく人」や「理不尽に何かを奪われた誰か」のことを考えていない。
そういう存在がいることを、「知らない」とは言わせない。
なのに、知らないフリをして、上から目線でそんな偉そうなことを言っている。
——それはあまりにも、無責任ではないだろうか?
(わたしだって……)
ロゼッタは、過去を思い返す。だが、何故か靄がかかったように、思い出しきれない。
切り捨てられる同胞や、不必要だと繁殖場の隅に転がされた自身のことはおぼろげに思い出せるのに。
……ただ、それだけだった。感情が、乗らない。
考えても分からないものに縋りついても仕方がないと判断し、ロゼッタは口を開く。
「話聞いてる感じだと……レヴィさんは、復讐が目的じゃないんですね」
「あれ? そういう話も聞いてたんですね? エスラさんでしょうか?」
「……ですね」
ふふ、とレヴィが笑った。
「そう、ボクは違います。ステフィリオンの人達に助けてもらったので、その恩返しです。
あとはそれこそ、理不尽に傷つけられた人達の存在を知ってしまうと、動かずにはいられなかったんです」
復讐を、希うほどの絶望。
彼女の傍にいる存在は、耐えきれないほどの絶望を経て、ここに集っている。
だからこそ、彼女は戦うことを選んだのだろう。
「ただ、力になりたかった。それだけです。
ちょうどボクは戦えましたし、他にすることも無いですしね……でも、強いて言えば、」
そこで、レヴィは言葉を止める。
続きを待っていると、彼女は手から勢いよくお湯を飛ばしてきた。
「わっ!?」
飛ばされたのは、間違いなくお湯だった。
それなのに、その中に何故かひんやりとした感覚があった。行為そのものもそうだが、その違和感に心の底から驚いてしまった。
ドクドクと、心臓が跳ねている。本当にびっくりした。
「い、いきなり何するんですか!?」
「手遊び水鉄砲ってやつです。こうやるんですよ」
そう言ってレヴィはやり方を教えてくれたが、上手くできない……というか、レヴィ“が”上手すぎる!
「レヴィさん……こんなのも得意なんですね……」
「まあ、銃撃戦に関しては鍛えてもいますが、魔術も使ってますし?」
「えぇ!?」
全く気がつかなかった。もしかして、今も使っていたのだろうか?
「無属性魔術の『魔装弾』っていいます。弾道に軽く補正を入れてくれる術なんです」
そう言って、レヴィはロゼッタがいない方向に向けて、再びお湯を飛ばす。
確かに、真っ直ぐ綺麗に飛んでいるように見えた……とはいえ、彼女の技量に左右されている部分も大きそうだ。
あくまでも“補正”を入れる魔術なのだから、当然である。
「へぇ……! 便利ですね……!」
「それがそうでもないんですよ。魔力持ちが弾を撃つと、何故か絶対に術が乗っちゃうんです。
詠唱するしないの問題じゃないし、こういう“遊び”ですら術が乗っちゃうんです……だから、痕跡を消す方法も一緒に学ぶ必要があるんです」
先ほどの『お湯なのにひんやりとした感覚』がまさにそれなのだろうか。
そうだとすれば、少々危うい気がする。
「ほら、弾に残った魔力で狙撃手判明! とか笑えないですし?」
「ですよねぇ……」
魔力持ちが弾を撃つと、勝手に術が乗ってしまう——一体、どんな理論でそうなるのかは不明だ。
魔術を研究している人々の間でも解き明かされていない、“謎”の一つでもあるらしい。
(銃ってすごく集中しないと当たらないだろうから、その時に、無意識に魔術を発動しちゃうのかなぁ?)
解き明かされていない時点で、何をどうやっても“無理”なのだろう。
思っていた以上に、魔術というものは奥が深いんだな、とロゼッタは思った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】秀才の男装治療師が女性恐怖症のわんこ弟子に溺愛されるまで
禅
恋愛
「神に祈るだけで曖昧にしか治らない。そんなものは治療とは言わない」
男尊女卑が強い国で、女であることを隠し、独自の魔法を使いトップクラスの治療師となり治療をしていたクリス。
ある日、新人のルドがやってきて教育係を押し付けられる。ルドは魔法騎士団のエースだが治療魔法が一切使えない。しかも、女性恐怖症。
それでも治療魔法が使えるようになりたいと懇願するルドに根負けしたクリスは特別な治療魔法を教える。
クリスを男だと思い込み、純粋に師匠として慕ってくるルド。
そんなルドに振り回されるクリス。
こんな二人が無自覚両片思いになり、両思いになるまでの話。
※最初の頃はガチ医療系、徐々に恋愛成分多めになっていきます
※主人公は現代に近い医学知識を使いますが、転生者ではありません
※一部変更&数話追加してます(11/24現在)
※※小説家になろうで完結まで掲載
改稿して投稿していきます
一匹狼と、たったひとりのラナ
揺木しっぽ
恋愛
絶滅危惧種となった「人間」のラナ。 その希少さゆえに、あらゆる種族から欲望の対象として狙われる日々に、彼女は心を擦り減らしていた。
そんな彼女を救ったのは、一人の狼男・リゲル。 他の男たちとは違う、彼の大きくて温かな手に、ラナは初めて希望を抱くが――。
獣の本能と、孤独な少女。 密やかに育まれる、甘く濃密な執着の物語。
※本作には一部、経血に関する執着描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
毎日21時頃、全12話完結まで更新いたします。
俺様上司と複雑な関係〜初恋相手で憧れの先輩〜
せいとも
恋愛
高校時代バスケ部のキャプテンとして活躍する蒼空先輩は、マネージャーだった凛花の初恋相手。
当時の蒼空先輩はモテモテにもかかわらず、クールで女子を寄せ付けないオーラを出していた。
凛花は、先輩に一番近い女子だったが恋に発展することなく先輩は卒業してしまう。
IT企業に就職して恋とは縁がないが充実した毎日を送る凛花の元に、なんと蒼空先輩がヘッドハンティングされて上司としてやってきた。
高校の先輩で、上司で、後から入社の後輩⁇
複雑な関係だが、蒼空は凛花に『はじめまして』と挨拶してきた。
知り合いだと知られたくない?
凛花は傷ついたが割り切って上司として蒼空と接する。
蒼空が凛花と同じ会社で働きだして2年経ったある日、突然ふたりの関係が動き出したのだ。
初恋相手の先輩で上司の複雑な関係のふたりはどうなる?
表紙はイラストAC様よりお借りしております。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる