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第2章『黙した傷の在処、語らぬ想い』
17.マスコミ禁止区域-1
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——その頃。
エスメライ、ルーシオ、ヴェルシエラが会議室で頭を抱えていた、まさに同じ日のこと。
控えめに言っても“とんでもない目”にあっただけに、案の定ラザラスは寝込んでいた。
影から抜け出し、ロゼッタは彼の顔を覗き込む。
(うーん……毒は抜けたって言ってたし、多少はマシになってるの、かなぁ……?)
彼の顔は包帯と湿布で隠されており、本当に、露出している部分の方が少ないと言ってもいいほどだった。しかし、毒々しく変色していた肌は、ほんのわずかではあるが、元に戻っているようにも感じられる。
(元々が色白さんだから、余計に目立っちゃうのもあるんだろな)
ラザラスの家には種族の違いだけでなく、各国の情報が載った書物も置いてあった。
彼の父親の出身地であるアズラ聖国は北の地にある宗教国家で、特有の神を崇めているらしい。それ以外にも独特な文化があるようだが、ロゼッタは「民族衣装が可愛いなぁ」くらいの感想しか持っていない——というより、書籍自体が難しすぎたのである。
(他にも難しそうな本、いっぱいあったし……ラズさんって頭が良いんだろうなぁ。ちょっと、羨ましい……)
他の国に関する書物もあった筈だ。次は、時々話題に出てくる“オブシディアン共和国”に関する本でも読んでみようか?
そんなことを考えていると……ふと、クロウが言っていた言葉が、脳裏を過る。
『普通に生きていける人間が、悪戯にこっち側に踏み込んでくる……オレはそれが、とにかく嫌いだ。迷惑だ』
「……」
当然、ラザラスに悪戯の意図は無いだろう。絶対に無い、と断言さえできる。
だが彼は明らかに『普通に生きていける人間』であった筈だと、ロゼッタも感じている。
しかも彼が過去に負った傷を今もなお引きずり、日常生活にすら支障が出てしまっていることを考えれば、残酷な裏社会の現実を見せつけることが、決して良いとは思えない。
クロウがラザラスに対して「納得がいかない」という気持ちを抱いてしまうのも、理解できる。
(まあ、それはそれで何か、腹が立つんだけど……まあいいや……)
ラザラスが寝ていると、何もすることがない。
暇な時間を有効活用しようと、ロゼッタはオブシディアン共和国に関する記載のある本を探すため、影の外に出る。
『識読』を使用し、本棚を眺める。指で本の背をなぞっていると——ふいに、ラザラスのスマートフォンが『ムー、ムー』という音を立てて震え始めた。
「!?」
その音を聞き、ラザラスが慌てて飛び起きた。ロゼッタも慌てて影に飛び込むが……はたと、気づく。
(ラズさん、何も見えてないんだし……今は『感影』使ってないし……覗き込んでも良いんじゃないかな……)
にゅるりと影から出て、ラザラスの様子を眺める。
スマートフォンの画面には『カミーユ社長』という文字が表示されている。
「もしもし? ……どうされましたか?」
ロゼッタはすかさず自身に『聴力強化』を発動させ、盗聴を開始した。
『その声……ラズ君、寝てたね?』
「すみません、社長……」
声からして、中年の男——ラザラスが「社長」と呼んだその人は、どうやら穏やかな人柄らしい。
社長が偉い、というのはロゼッタも何となく知っている。それこそ、奴隷を購入するような人間もいるはずだ。
だが、ラザラスと交流がある時点でその可能性は無いと言いきっても良いほどに薄いだろうとロゼッタは判断した。
『いやいや、休みの日に電話したこっちが悪いよ……で、急で申し訳ないんだけど、明日って予定開いてる?』
「あ、はい。大丈夫です。えーと……番組調整の都合で、しばらくALIA関係の放送って休みでしたよね? 何かありましたっけ……?」
どうやらALIA関係のようだ。つまり、社長——カミーユは彼らが所属している芸能事務所の社長なのかもしれない。
『そうだね、しばらく放送は無いんだけど、急な打ち合わせが……アンジェちゃんに任せると、大惨事になりそうだから……』
(社長も……頭抱えてるんだなぁ……)
この人は多分、奴隷とかその辺に関しては大丈夫な人だ。
ラザラスに対する対応といい、アンジェリアの件で頭を抱えている件といい、悪人臭は皆無だ。ロゼッタの中で、カミーユ社長に対する評価が勝手に上がった。
ラザラスもラザラスでカミーユに対して思うところは無いようで、穏やかな様子で微笑んでいる。
「あはは、分かりました。行ってきます……が、すみません、社長。
スタッフさんに連絡取れるのであれば……『ヤバい外見してますけど、大丈夫なので気にしないでください』って伝えといて頂けたら……」
『えっ? 何か……あったの……?』
そう問われ、ラザラスの時が止まった。この短期間で必死に言い訳を考えているらしいことが、露出した口元を見るだけで分かる。
当たり前だ。相手が芸能事務所の社長である以上、殴られて毒を入れられたという真実をそっくりそのまま伝えるわけにはいかないのだ。
「えっと……その……」
『ラザラス君?』
「階段から落ちまして……今、顔が包帯と湿布でほとんど隠れてて……多分、初見だと驚かれる見た目になっているというか……」
『えぇえ!? 一大事じゃないか!? 打ち合わせ、僕の方でどうにかした方がいいかい!?』
電話の向こうでカミーユが慌てている。
しかし誇張表現ではなく、本当にラザラスの顔は包帯と湿布でほとんど隠れているのだから仕方がない。
「いやー……声は聞こえますし、魔術でどうにか動き回れてるんで。放送局にも行けますし、大丈夫ですよ。ほら、アンジェに行かせるわけには、いかないわけで……」
カミーユが声にならない声を発し続けている——彼のことは何も知らないが、流石にちょっと不憫になってしまった。
『……。本当に、任せて大丈夫? 明日から僕はスピネル王国に用事があって……』
「そんな忙しい時に気を遣わなくて大丈夫ですから! 任せてください、とまでは言えないかもしれませんが……何とか、してきます」
駄々をこねれば、カミーユはどうにかしてくれたのかもしれない。
しかし、ラザラスがそれをすることは無かった。その後、少しのやり取りを経て、電話が切れる。
「なあ、ロゼッタ。今の……聞いてたか?」
部屋の中にいる、しかも影に隠れてすらいないストーカーと話すことに一切の抵抗を持っていない男は、少しだけ弱った様子でロゼッタに声を掛ける。
「あ、はい! 聞いてましたよ~」
「……助けて欲しい」
ラザラスが素直に助けを求めてきた。その事実に、ロゼッタは自身の姿が彼には見えないことを理解しながらも微笑みかける。
「もちろんです。『感影』と『聴力強化』……んー、認識阻害目的で道中はレヴィさんが使ってる『幻貌』も重ね掛けしましょうかね。
その、それだと目立つと思うんで……放送局だと素顔晒さないと駄目なんだろうな、とは思うんですが……」
「あ、あー……助かるよ。道中は屋根の上走る気ではあったんだけど……」
「ラズさん。軽率に屋根の上走るのは、正直やめた方が良いと思います……」
今でこそラザラスは『運動神経がチートなことを活かして物理的に人に見られないようにしている』と理解できるのだが、一目でも見られてしまえば逆に目立つと思う。そして何より、普通に危ない!!
「昔から運動神経には自信があってさ。昔はパルクールが趣味だったくらいで……今はもはや、仕事みたいなもんだけど……」
「そういう問題じゃ! ないです!」
ロゼッタはパルクールが何かは知らないのだが、これは十中八九、本来人がいない場所を走り回るスポーツのようなものだろうと判断していた。それこそ、屋根の上とか。
無茶をたしなめられ、ラザラスは少しだけ決まりが悪そうだ。
彼は「あ、そうだ」と呟き、話を変える。
「助けてもらうんだから、ちょっと説明しておこうかな。俺、LIANって名前で芸能事務所に所属してるんだ。事務所は『Novalis Studio』っていうんだけどさ……明日は、それ関係の仕事が生えた」
「……。アンジェさんの代打ですね、分かります」
「そうなんだよなぁ……アンジェだと打ち合わせが成立しないから……風属性って微妙に珍しいから、『精神感応』ゴリ押し作戦も通用しないことが多いし……」
「やろうとしたことあるんだ……」
言われてみれば、ロゼッタの周りにいる人間で風属性を持っているのは恐らくラザラスとクロウだけである。
いなくはないが、持っていない人間の方が多い——だからこそラザラスは微妙に珍しいという表現をしたのだろうが。
「いやー……本当、このタイミングで番組調整入ってくれて良かった……」
番組調整、というのは放送局で放送スケジュールを見直したり、新番組を導入したりするタイミングのことを指す言葉らしい。
番組調整が無ければ、来週に何かしら控えていたようだ……ありがとう、番組調整。ロゼッタは心の底から習ったばかりの単語に感謝した。
「あとは再来週までに、片目だけでも見えるようになっててくれれば……」
「そういえばALIAの番組って、視聴者さんのコメント見ながらお話ししてますもんね」
「そうそう。いくら炎上芸人とはいえ……コメント読めなきゃ、流石に詰む……アンジェに独り言を言わせ続けるだけの番組が爆誕する……」
闇属性魔術の感影はあくまでも周囲の気配を探る術だ。出力を上げれば『目の前にいる相手が誰か』程度は分かるかもしれないが、流石に画面に出ている文字を見ることはできない気がする。
良さげな術に心当たりが全くない以上、収録までにラザラスの目が治ってくれることに賭けるしかなさそうだ。
「まあ、とりあえず明日を突破しなきゃな。アンジェは……置いていくか。新曲作りで忙しいだろうし」
「ALIAの番組なのに!?」
「いや、うん……居ても、置物確定だろうしさぁ……」
とりあえず、早いところALICEさんとやらに帰ってきて欲しい。
ロゼッタはラザラスと顔を見合わせて苦笑しつつ、彼に掛ける感影の調整を始めた。
エスメライ、ルーシオ、ヴェルシエラが会議室で頭を抱えていた、まさに同じ日のこと。
控えめに言っても“とんでもない目”にあっただけに、案の定ラザラスは寝込んでいた。
影から抜け出し、ロゼッタは彼の顔を覗き込む。
(うーん……毒は抜けたって言ってたし、多少はマシになってるの、かなぁ……?)
彼の顔は包帯と湿布で隠されており、本当に、露出している部分の方が少ないと言ってもいいほどだった。しかし、毒々しく変色していた肌は、ほんのわずかではあるが、元に戻っているようにも感じられる。
(元々が色白さんだから、余計に目立っちゃうのもあるんだろな)
ラザラスの家には種族の違いだけでなく、各国の情報が載った書物も置いてあった。
彼の父親の出身地であるアズラ聖国は北の地にある宗教国家で、特有の神を崇めているらしい。それ以外にも独特な文化があるようだが、ロゼッタは「民族衣装が可愛いなぁ」くらいの感想しか持っていない——というより、書籍自体が難しすぎたのである。
(他にも難しそうな本、いっぱいあったし……ラズさんって頭が良いんだろうなぁ。ちょっと、羨ましい……)
他の国に関する書物もあった筈だ。次は、時々話題に出てくる“オブシディアン共和国”に関する本でも読んでみようか?
そんなことを考えていると……ふと、クロウが言っていた言葉が、脳裏を過る。
『普通に生きていける人間が、悪戯にこっち側に踏み込んでくる……オレはそれが、とにかく嫌いだ。迷惑だ』
「……」
当然、ラザラスに悪戯の意図は無いだろう。絶対に無い、と断言さえできる。
だが彼は明らかに『普通に生きていける人間』であった筈だと、ロゼッタも感じている。
しかも彼が過去に負った傷を今もなお引きずり、日常生活にすら支障が出てしまっていることを考えれば、残酷な裏社会の現実を見せつけることが、決して良いとは思えない。
クロウがラザラスに対して「納得がいかない」という気持ちを抱いてしまうのも、理解できる。
(まあ、それはそれで何か、腹が立つんだけど……まあいいや……)
ラザラスが寝ていると、何もすることがない。
暇な時間を有効活用しようと、ロゼッタはオブシディアン共和国に関する記載のある本を探すため、影の外に出る。
『識読』を使用し、本棚を眺める。指で本の背をなぞっていると——ふいに、ラザラスのスマートフォンが『ムー、ムー』という音を立てて震え始めた。
「!?」
その音を聞き、ラザラスが慌てて飛び起きた。ロゼッタも慌てて影に飛び込むが……はたと、気づく。
(ラズさん、何も見えてないんだし……今は『感影』使ってないし……覗き込んでも良いんじゃないかな……)
にゅるりと影から出て、ラザラスの様子を眺める。
スマートフォンの画面には『カミーユ社長』という文字が表示されている。
「もしもし? ……どうされましたか?」
ロゼッタはすかさず自身に『聴力強化』を発動させ、盗聴を開始した。
『その声……ラズ君、寝てたね?』
「すみません、社長……」
声からして、中年の男——ラザラスが「社長」と呼んだその人は、どうやら穏やかな人柄らしい。
社長が偉い、というのはロゼッタも何となく知っている。それこそ、奴隷を購入するような人間もいるはずだ。
だが、ラザラスと交流がある時点でその可能性は無いと言いきっても良いほどに薄いだろうとロゼッタは判断した。
『いやいや、休みの日に電話したこっちが悪いよ……で、急で申し訳ないんだけど、明日って予定開いてる?』
「あ、はい。大丈夫です。えーと……番組調整の都合で、しばらくALIA関係の放送って休みでしたよね? 何かありましたっけ……?」
どうやらALIA関係のようだ。つまり、社長——カミーユは彼らが所属している芸能事務所の社長なのかもしれない。
『そうだね、しばらく放送は無いんだけど、急な打ち合わせが……アンジェちゃんに任せると、大惨事になりそうだから……』
(社長も……頭抱えてるんだなぁ……)
この人は多分、奴隷とかその辺に関しては大丈夫な人だ。
ラザラスに対する対応といい、アンジェリアの件で頭を抱えている件といい、悪人臭は皆無だ。ロゼッタの中で、カミーユ社長に対する評価が勝手に上がった。
ラザラスもラザラスでカミーユに対して思うところは無いようで、穏やかな様子で微笑んでいる。
「あはは、分かりました。行ってきます……が、すみません、社長。
スタッフさんに連絡取れるのであれば……『ヤバい外見してますけど、大丈夫なので気にしないでください』って伝えといて頂けたら……」
『えっ? 何か……あったの……?』
そう問われ、ラザラスの時が止まった。この短期間で必死に言い訳を考えているらしいことが、露出した口元を見るだけで分かる。
当たり前だ。相手が芸能事務所の社長である以上、殴られて毒を入れられたという真実をそっくりそのまま伝えるわけにはいかないのだ。
「えっと……その……」
『ラザラス君?』
「階段から落ちまして……今、顔が包帯と湿布でほとんど隠れてて……多分、初見だと驚かれる見た目になっているというか……」
『えぇえ!? 一大事じゃないか!? 打ち合わせ、僕の方でどうにかした方がいいかい!?』
電話の向こうでカミーユが慌てている。
しかし誇張表現ではなく、本当にラザラスの顔は包帯と湿布でほとんど隠れているのだから仕方がない。
「いやー……声は聞こえますし、魔術でどうにか動き回れてるんで。放送局にも行けますし、大丈夫ですよ。ほら、アンジェに行かせるわけには、いかないわけで……」
カミーユが声にならない声を発し続けている——彼のことは何も知らないが、流石にちょっと不憫になってしまった。
『……。本当に、任せて大丈夫? 明日から僕はスピネル王国に用事があって……』
「そんな忙しい時に気を遣わなくて大丈夫ですから! 任せてください、とまでは言えないかもしれませんが……何とか、してきます」
駄々をこねれば、カミーユはどうにかしてくれたのかもしれない。
しかし、ラザラスがそれをすることは無かった。その後、少しのやり取りを経て、電話が切れる。
「なあ、ロゼッタ。今の……聞いてたか?」
部屋の中にいる、しかも影に隠れてすらいないストーカーと話すことに一切の抵抗を持っていない男は、少しだけ弱った様子でロゼッタに声を掛ける。
「あ、はい! 聞いてましたよ~」
「……助けて欲しい」
ラザラスが素直に助けを求めてきた。その事実に、ロゼッタは自身の姿が彼には見えないことを理解しながらも微笑みかける。
「もちろんです。『感影』と『聴力強化』……んー、認識阻害目的で道中はレヴィさんが使ってる『幻貌』も重ね掛けしましょうかね。
その、それだと目立つと思うんで……放送局だと素顔晒さないと駄目なんだろうな、とは思うんですが……」
「あ、あー……助かるよ。道中は屋根の上走る気ではあったんだけど……」
「ラズさん。軽率に屋根の上走るのは、正直やめた方が良いと思います……」
今でこそラザラスは『運動神経がチートなことを活かして物理的に人に見られないようにしている』と理解できるのだが、一目でも見られてしまえば逆に目立つと思う。そして何より、普通に危ない!!
「昔から運動神経には自信があってさ。昔はパルクールが趣味だったくらいで……今はもはや、仕事みたいなもんだけど……」
「そういう問題じゃ! ないです!」
ロゼッタはパルクールが何かは知らないのだが、これは十中八九、本来人がいない場所を走り回るスポーツのようなものだろうと判断していた。それこそ、屋根の上とか。
無茶をたしなめられ、ラザラスは少しだけ決まりが悪そうだ。
彼は「あ、そうだ」と呟き、話を変える。
「助けてもらうんだから、ちょっと説明しておこうかな。俺、LIANって名前で芸能事務所に所属してるんだ。事務所は『Novalis Studio』っていうんだけどさ……明日は、それ関係の仕事が生えた」
「……。アンジェさんの代打ですね、分かります」
「そうなんだよなぁ……アンジェだと打ち合わせが成立しないから……風属性って微妙に珍しいから、『精神感応』ゴリ押し作戦も通用しないことが多いし……」
「やろうとしたことあるんだ……」
言われてみれば、ロゼッタの周りにいる人間で風属性を持っているのは恐らくラザラスとクロウだけである。
いなくはないが、持っていない人間の方が多い——だからこそラザラスは微妙に珍しいという表現をしたのだろうが。
「いやー……本当、このタイミングで番組調整入ってくれて良かった……」
番組調整、というのは放送局で放送スケジュールを見直したり、新番組を導入したりするタイミングのことを指す言葉らしい。
番組調整が無ければ、来週に何かしら控えていたようだ……ありがとう、番組調整。ロゼッタは心の底から習ったばかりの単語に感謝した。
「あとは再来週までに、片目だけでも見えるようになっててくれれば……」
「そういえばALIAの番組って、視聴者さんのコメント見ながらお話ししてますもんね」
「そうそう。いくら炎上芸人とはいえ……コメント読めなきゃ、流石に詰む……アンジェに独り言を言わせ続けるだけの番組が爆誕する……」
闇属性魔術の感影はあくまでも周囲の気配を探る術だ。出力を上げれば『目の前にいる相手が誰か』程度は分かるかもしれないが、流石に画面に出ている文字を見ることはできない気がする。
良さげな術に心当たりが全くない以上、収録までにラザラスの目が治ってくれることに賭けるしかなさそうだ。
「まあ、とりあえず明日を突破しなきゃな。アンジェは……置いていくか。新曲作りで忙しいだろうし」
「ALIAの番組なのに!?」
「いや、うん……居ても、置物確定だろうしさぁ……」
とりあえず、早いところALICEさんとやらに帰ってきて欲しい。
ロゼッタはラザラスと顔を見合わせて苦笑しつつ、彼に掛ける感影の調整を始めた。
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