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episode1 ウチのクラスの転校生は俺のいとこ

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俺の名前は武田 冬治(たけだ とうじ)。私立桜之岡(さくらのおか)高校に通っている高校2年生である。家族は父と母と姉、そして妹の5人。父は仕事の都合上、現在大阪へ単身赴任中。ゲームしか取り柄がなく、運動も苦手であり、勉強の成績はお世辞でもいい方ではないが、なんとか進級することができた。そしてこの日は夏休みが終わり、2学期の始業式の日である。そして、彼のクラスの担任である松本 奈々果(まつもと ななか、満30歳)先生が
「今日は皆さんに転校生を紹介します!」と開口一番に言う。
「高校で転校する人とかいるの?」
「どんな人だろう? 美人かな?」
などの会話がクラス内に響く。
「転校生か。まぁ大した奴じゃないだろ、ハハハ」と心の中で笑い飛ばす冬治。しかし彼の笑いは一瞬にして消え去った。松本先生は黒板に転校生の名前を書く。そこには
「中島 夏菜」の文字があった。
「えぇぇーーー!!!」と心の中で絶叫する冬治。
「中島さん、入って」と松本先生。
「はい。」
「私は東京から来ました、中島夏菜(なかじま かな)です。よろしくお願いします!」
そう、冬治は夏菜とはいとこ同士だったのだ。「なんで、なんで夏菜がこっちに来たの?」と心で叫ぶ冬治とは裏腹に周囲は
「めちゃめちゃ美人じゃん!」
「え、待って、カワイイんだけど!」
と、クラスはお祭り状態になる。
「中島さんの席はそこよ。」と松本先生。だがその席はまさかの冬治の横だったのだ。
「クソォ、なんでよりによって俺の横なんだ!」とうつむく冬治。彼は夏菜とは初対面のふりをしようとしたが、
「あ、冬治じゃん!なんでここいるの!?」と夏菜は大声で言う。そして再びクラスはざわつく。
「武田、お前夏菜ちゃんと知り合いだったのか?」と冬治の前の席の杉浦 陽人(すぎうら はると)が問い詰める。
「いや、俺と夏菜が知り合いな訳ないだろ」と否定する冬治。だが、
「お前今、夏菜ちゃんのことを下の名前で呼び捨てにしたな!絶対関係ある!」と杉浦は再び問う。すると、
「ええ、私と冬治はいとこ同士よ。」と夏菜。
「みんなー、武田と夏菜ちゃんはいとこ同士なんだって!!」とクラス中に言いふらす杉浦。
「ああ~~、俺終わったわ」と自嘲気味にぼやく冬治。こうして、冬治の高校生活は夏菜の乱入で大きく変わり始めたのだった。
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