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三次審査編
三次審査㉑
しおりを挟む三次審査の最終日、空は『螺鈿の間』にいた。
螺鈿と黄金で作られた豪華な部屋は、五百年前に六種族が天帝に許しを請おうと捧げた物だ。しかし魂胆が見え見えの捧げ物は天帝の機嫌を逆に損ねてしまい、受け取りを拒否された。
ならばと六種族は黒狐族に対する謝罪文と多額の賠償金を提示したが、許される日は来なかった。
残された螺鈿の間は朽ちることなく、虚しく輝くばかり。虚無の象徴ともなったが当時としては一級の建築物。今でもこうして大切に保管されていた。
螺鈿の輝きにも劣らぬ美女が空を待っていた。葵は白の絹地に薔薇の刺繍が施された豪華な着物を着ていた。
彼女は空をチラチラ見て、頬を染めてそわそわしていた。
「久是空様でいらっしゃいますね。わたくしは葵様の側仕え兼護衛の黄玉と申します。これより、葵様とのお見合いを開始致します」
ドーベルマンの武官は恭しく頭を下げた後、葵の直ぐ後ろに控えた。
「久是空です。今日はよろしくお願いします」
「ふ、ふん!勘違いしないでよ?私は仕方なくお見合いをしてあげているだけなんだから!」
扇で半分顔を隠した葵は顔を真っ赤に染めて空を見た。目が合うと、バッと扇を上げて顔全体を隠してしまった。
「み、見るんじゃないわよ!イケメンの癖にっ!」
「あ、ありがとうございます・・・?」
貶されているのか褒められているのか分からない。
反射的に礼を言ってしまったが、果たして正解なのだろうか??
葵を見ると艶やかな黒い耳はピコピコ動き、尻尾はブンブン揺れていた。
・・・何か可愛い。
言葉と態度がちぐはぐだ。これが所謂『ツンデレ』かと空は解釈した。
「仕方なくても嬉しいです。ありがとうございます」
「わ、分かれば良いのよ!」
葵は口元まで扇を下ろし、空を見た。
改めて見ても美しい女性だ。大きなアーモンド型の瞳はややつり目で、気の強そうな顔立ちをしている。
黒い耳には大きな宝石が目を引くピアスがキラキラと輝き、腕にも一目で高価と分かる金細工のブレスレットを嵌めている。
裕福な家の出とは聞いていたが、実家はかなりの資産家なのだろう。
「黙ってないで何か質問をしなさいよ!それとも私に興味がないの!?」
「そんな事はありません。綺麗だなと思って見ていたので、不快に思われたなら申し訳ありませんでした」
葵の顔は一瞬で真っ赤に染まり、再び扇で顔を隠してしまった。
艶やかな尾はビッタンビッタンと椅子に叩き付けられている。痛くはないのだろうかと空は心配になった。
「そ、それがアンタの手口な訳ね!?騙されないんだから!」
「て、手口・・・」
「言っておくけど、私に駆け引きは通用しないんだからね!」
プイッと横を向かれて空はどうして良いのか分からなくなる。
駆け引きなどしているわけがないし、その技量もない。困り果てる空に助け船を出したのは黄玉だ。
「葵様。折角のお見合いなのですから、先ずは趣味のお話など如何ですか?」
武官が間に入るのは珍しい。
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