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三次審査編
三次審査㉓
しおりを挟む頬を染め、嬉しそうに空を見る葵の美しさから目を逸らせない。気の強そうな葵が見せる、可愛らしい一面にドキッとした。
「言ったわね。約束を破ったら承知しないんだから!」
「勿論です」
葵は顔を真っ赤にした後、ぷるぷる震えながらそっぽを向いた。形の良い唇には笑みが浮かんでいるので、気を悪くしたわけではなさそうだ。
「葵さんの好きなタイプを伺っても?」
「イケメンで優しい人!・・・だから」
「・・・だから?」
「あ、貴方の顔は好きだから、最終候補に入れてあげても良いわよ!光栄に思いなさい!」
きゃ~~っと悲鳴を上げて葵は扇で顔を隠した。尻尾もブンブン揺れている。
そう、空の顔は葵の好みのど真ん中。一番好きな顔なのだ。
突然の告白に空は正直、戸惑った。パッとミハエルの顔が浮かんだからだ。葵推しを表明しているミハエルになんと言えば良いのか。慌てる空を葵は怪訝な顔で見つめた。
「何よ・・・嬉しくないの?」
「違います。驚いてしまって」
「・・・もしかして、もう誰か決めているとか?」
「いえ、まだです」
これは本当だ。だが葵は信じなかった。体が震えだし、アーモンド型の綺麗な目にジワッと涙が浮かんだ。
「~~~!!何よ!他の女に決めているならどうして私と会ったりしたの!?馬鹿!!大っ嫌い!」
空は先ず、葵が手に持っていた扇を投げ付けられた。次はテーブルの上のカップや皿、スプーンにお菓子。果てはクロスまで投げ付けられ、黄玉は慌てて葵を押さえつけた。
「葵様!落ち着いて下さい!」
「放して~~!私はこのクズに弄ばれたの!女の敵!最低!!」
ワッと泣き出されて空は立ち尽くすしかなかった。
葵を傷つけてしまった。
矢張り自分はあの父親と同じだ。そんなつもりはなかったが、女性を傷つけてしまった。空は深く頭を下げて誠心誠意お詫びをしたが体の震えが止まらない。黄玉も空の異常に気付き、お見合いは続行不可と結論づけた。
こうして葵とのお見合いは最悪の結末を迎えたのだった。
最後の見合いが終わっても空の心は沈んだままだった。
誰とも会う気が起きず、滞在先のホテルに引き籠もった。チャットの通知音が響くがスマホを手に取れない。引き籠もる空を心配したミハエル、イフラース、ユアンは時間を見ては尋ねて来てくれるが、相手をする余裕がない。レオンハルトとディアゴも来てくれたが、丁重にお断りした。
一人の女性を傷つけた自分が、何もなかったかのように友人と楽しむなんて出来ない。
十日間の見合いが終了し、四次審査のための選考、『指名』の期間が始まったが空はベッドから動けずにいた。
コンコン、と部屋をノックする音が聞こえた。
無視しようとしたが、若紫の側仕え兼護衛である瑠璃の声が聞こえた。気乗りしなかったが、空は扉を開いて瑠璃と対面した。
「久是空様。お久しぶりです」
沈んだ空を見た瑠璃は驚いた顔をしていたが、敢えて何も聞かなかった。瑠璃は優しく微笑んだ後、恭しく頭を下げた。
「『指名』でございます。若紫様の元へご案内致します」
美しきプリンセスの顔が浮かんだ。彼女に会う資格なんて無いのに、無性に彼女と話したくなった。
滲んだ視界を乱暴に拭い、空は着替えて外に出た。
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