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指名編
指名編⑥
しおりを挟む「あ、久是空様。おかえりなさいませ」
空がホテルに戻ると、待っていたのは朝顔の侍従兼護衛の翡翠だ。翡翠は恭しく頭を下げた。
「久是空に指名でございます。朝顔様がお待ちです」
「本当ですか?嬉しいです」
「ええ。末摘花様達も一緒です。ささ、どうぞ付いて来て下さいませ」
空は喜んで翡翠の後を付いて行った。連れて来られたのは神兵訓練所の休憩室。
畳の部屋で朝顔と末摘花、親衛隊のお姉様方が揃って空を出迎えた。
「「「「空!!」」」」
「良く来たね!」
「さ、こっちに座りな」
空が朝顔の隣に座ると、親衛隊のお姉様方がお菓子や軽食をテーブルにどんどん置いていった。
「ほら、これ食べて!」
「これは私が作ったの」
「美味しいわよ~~~」
「ありがとうございます。手作りなんて凄いです!」
柏餅、おはぎなどの和菓子に、おにぎりと唐揚げ、お漬物。どれも美味しそうで空は目を輝かせた。
「お礼さ。こんなに綺麗な金細工のピアスを貰っちまってさ、何もしないわけにはいかないだろ?」
末摘花の耳には空が贈った金細工のピアスが付いていた。彼女の雰囲気に合うと思って購入したが、己の見立て通り、末摘花によく似合っていた。
「私も!嬉しいわ!」
「大切にするわね!」
私も、私もと次々と声が上がりる。見返りを求めていたわけではないが、実際身に付けて喜ぶ姿を見ると嬉しくなる。
プレゼントを贈って良かったと、心から思えた。
「手紙まで付けるなんて律儀な男だね。嫌いじゃないよ」
朝顔も空が贈ったサファイアのブローチを胸に付けている。気に入って貰えたようで何よりだ。
「でも、ここまでされたら他の男が霞んで見えてねぇ。罪深い男だよ」
「え、ええ!?」
「フフ。本当に」
「朝顔お姉様の言う通りですわ!」
親衛隊のお姉様方がクスクス笑う。末摘花もだ。
「実はねぇ、この子達にも声が掛かっているんだ。ぶっ飛ばされたのに惚れた!って男が何人もいてね」
「凄いじゃないですか!!」
確かに親衛隊のお姉様方は末摘花含め全員美人だ。彼女達に声が掛かるのも当然だと空は頷いた。
「でもねぇ、年下のうんとイイ男に夢中だから皆断っているのさ」
「ええ。それに私、ドM男は嫌よ」
「プレゼントを贈っとけば靡くでしょっ!て下心が見え見えなのよ」
「君の瞳に惚れたって、いや貴方誰?って感じだし」
「物陰からジッと見つめられるのはちょっとね・・・」
末摘花が何度も後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
ひょっとしてストーカー被害に遭っているのだろうか?
「・・・誰ですか?末摘花さんを困らせているのは。俺が護衛になります」
護衛に名乗りを上げる空だが、末摘花は辞退した。
「自分の身は自分で守れるから良いんだけどさ、意味が分からなくてね・・・。あたいの何処が良いのかさっぱり分からないよ」
「何度も言いますが、末摘花さんは綺麗です」
空の真っ直ぐな讃辞に末摘花は頬を染めた。親衛隊のお姉様方もキャ~~ッと悲鳴を上げている。
「もっと自分に自信を持って下さい。貴女は華やかな美人なんですから」
「見る目があるねぇ、私もそう思っていたよ」
朝顔が同調すると、親衛隊のお姉様方もうんうんと頷く。
末摘花の顔は真っ赤に染まり、乙女の顔になっていた。
可愛いなと思った瞬間、恐ろしいまでの殺気が空の背中に突き刺さった。背筋も凍るような冷気にゾクッとした。
「え!?」
思わず振り返ると、気配は煙のように消えてしまった。朝顔と末摘花、親衛隊のお姉様方も気配を感じたのだろう。
またか!とお姉様方は怒っていた。
「陰気な奴だねぇ。本当に何処の誰だか」
「誰か分からないんですか?」
「末摘花と対戦した人物、というのは間違いないんだろうけど」
正体が掴めないまま今に至っているらしい。これといった被害はないが、空に殺気を向けたのは許せない。
朝顔、末摘花、親衛隊のお姉様方は犯人検挙に向けて動き出すそうだ。
「ま、謎のつきまとい野郎は置いておいて、食べようかね」
「そうですね。折角のお料理が冷めてしまいますし」
「たんと食べな!」
親衛隊のお姉様方の料理はどれも美味しく、空は箸が止まらなくなった。特に気に入ったのは唐揚げとおやきだ。
唐揚げを作ったのは鈴虫、おやきは蛍が作ったようで、二人はとても喜んでいた。
「あの・・・残った料理は持って帰っても良いですか?」
「「「「勿論!!」」」」
お姉様方はご機嫌に全ての料理をタッパーに入れて風呂敷に包んでくれた。風呂敷を洗って返すときに、タッパーに美味しいお菓子を詰めて返そう。皆の反応が楽しみだ。
「朝顔さ・・・。これは指名と言うより女子会?みたいじゃないかい?」
「それより『空を愛でる会』の方がしっくりくる気がするねぇ」
朝顔の発言に空が吹き出すと、親衛隊のお姉様方はキャラキャラ笑った。
「「「朝顔お姉様の言う通りですわ!」」」」
指名という名の女子会もとい『空を愛でる会』は笑顔でお開きとなった。空は持ち帰った料理をホテルの冷蔵庫にしまい、大切に食べきったのだった。
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