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指名編
指名編⑩
しおりを挟むでも、そんな抜けている所に人間味を感じる。ディアゴのように彼を支えたいと思う家臣が集まってくるのだろう。
「レオンハルト王、ありがとうございます」
「気にすんな。友達だろう?」
「はい!」
嬉しそうに笑うレオンハルトに空は髪の毛をワシャワシャかき混ぜられるように頭を撫でられた。その手はとても大きく、頼もしかった。
翌日、空の部屋のドアチャイムが鳴った。
昨夜の話もあるので、空は警戒しながら扉を開いた。扉の外には葵の側仕え兼護衛であるドーベルマンの黄玉が立っていた。
「久是空様、指名でございます」
「・・・本当にですか?」
「ええ。わたくしの後を付いて来て下さい」
空は大人しく従い、黄玉の後を付いて行く。連れて行かれた先は螺鈿の間ではなく、何と審判室。罪を犯した神官が裁かれる場所だ。
重厚な扉を開くと、中央の裁判長席に葵が座っていた。
「そこ、座って!」
「は、はい・・・」
空が立つよう促されたのは被告人席だ。葵はムスッとした顔で空を見下ろした。
「勘違いしないでよ!今日は女心を弄んだゲス野郎を裁くために呼び出したんだから!」
「はい。葵さんの気が済むまで裁いて下さい」
真顔の顔が心底好みだったのか、葵はやや後ろに仰け反った。その体はぷるぷると震えている。黄玉の位置から葵の表情はよく見えており、美しい顔は真っ赤に染まっていた。
やっぱりこの顔が好き!!
しかし今は弾劾の時間。この男をこれ以上つけ上がらせないためにも、厳しい姿勢で挑まなければ。
葵はシュッと態勢を元に戻し、背筋を延ばした。
「調子に乗るんじゃないわよイケメン!」
「調子には乗っていないです・・・」
「く、く口だけは達者ね!先ずは手紙!読んだわ!」
「はい」
「相手が決まっていないなんて嘘でしょ!」
「嘘ではありません」
空は秒で返事をした。ミハエルとユアン、イフラースのように特定の相手を決めているわけではない。選ぶのはあくまで姫君達。空はそのスタンスを崩してはいなかった。
「選ぶのは姫君達なので。当然、葵さんに権利があります」
「ふ~~~ん。じゃあ何で私には嫌な顔をしたんですかぁ~~?」
完全に拗ねた口調だ。頬も膨らんでいる。不満を顔全体で表わすハムスターみたいで可愛く、空の表情は自然と優しくなった。
「生暖かい目で見るんじゃないわよ!」
「済みません・・・。可愛くて」
「そ、そう?いやだ~~!じゃないわよイケメン!!」
完全なノリツッコミに黄玉は笑いを堪えるのに必死だ。葵も恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。
「わ、私が納得する理由を話しなさい!今すぐ!でなきゃ私の権限でアンタなんか追い出してやるんだから!」
追い出す。即ち退場だ。
以前の自分だったら仕方ないと諦めていただろう。
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