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朧月夜の章
朧月夜の章⑲
しおりを挟むハッと目を覚ませば見慣れたホテルの天井が視界に入った。
咄嗟に起き上がって辺りを見回すが、ネモフィラの花は見当たらない。夢にしてはリアルだった。・・・いや、あれは夢ではない。
息子を応援するために、態々会いに来てくれたのだろう。一度も墓参りに行かなかった薄情な息子なのに。
「・・・終わったら、行くか」
その時は朧月夜も一緒に連れて行く。明日に全てが決まるが、迷いは不思議と消えていた。
父のお陰なんて思いたくないが、心で小さく「ありがとう」とだけ呟いた。
伝える方法は言葉だけではない。
確かに朧月夜は伝えようとしていた。想いを告げたあの日。彼女は珍しく考え込んでいて、結局言葉を飲み込んだ。
あの不安そうな表情は今でも忘れられない。彼女は拒絶を恐れたのだろう。
ディアゴという男はまだ信頼されていない。それが悔しくもあり情けなかった。もっと伝えるべきだった。伝わるように努力すべきだった。
まだ間に合う。ディアゴは挽回すべく便せんを取り出し、ペンを取って手紙を書き始めた。
多くを書く必要はない。
朧月夜が求めている答えは、きっとこれだ。
最終審査『花調』回答提出日。
玻璃は三通の手紙を持って朧月夜の部屋に入ってきた。
朧月夜は手紙を受け取ると、綺麗に机に並べた。右端に置いた手紙を手に取ると、早速読み始めた。一番最初に読んだ手紙は便せんの枚数がそれなりに多く、一生懸命朧月夜に向き合おうとしたのが分かる。熱烈な愛の言葉も綴られており、とても嬉しかった。
次に中央。理知的な彼は花言葉と朧月夜の心証を丁寧に記していた。一見素っ気なさそうに見えるが彼の情熱的な一面が見られた。それだけでも嬉しかった。
朧月夜は最後に左端の手紙を手に取り、開封する。最後の手紙は直ぐに読み終わってしまった。朧月夜は顔を上げた。その顔は今までに無いほど真剣で、美しかった。
「・・・決まりましたか?」
「ええ。今晩、彼をここへ呼んで頂戴」
「畏まりました」
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