Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

文字の大きさ
65 / 201
朧月夜の章

朧月夜の章⑳

しおりを挟む

 大神殿の最深部。
 八人の姫君とその関係者が滞在する一角は神殿史上類を見ない最高レベルの警備体制が敷かれていた。鼠一匹すら通さない厳重な警備を、朧月夜専属の侍従兼護衛の玻璃は顔パスで進んでいく。

 彼は一人の男を連れて歩いていた。今宵の任務は朧月夜の部屋まで彼を案内する事。
 この日をどれだけ待ち侘びていたか。玻璃の顔は晴れやかだった。

「朧月夜様、お連れ致しました」

「・・・入って頂戴」

「どうぞ、お入り下さい」

 最終審査を突破した男は朧月夜の部屋に入った。部屋には贈り物の花が沢山飾られていて、仄かな香りが漂う。テーブルの上には彼女の占い道具とカード、お茶とクッキーが置いてある。朧月夜の姿を探すと、薄い天幕に覆われたベッドに彼女は座っていた。

「狡賢い人。何で分かったの?」 

 彼女は少しだけムスッとしていた。その反応が愛らしくて男は笑った。

「・・・君は嘘をつかないが、本心を隠すのがとても上手だ。だから、逆を考えた」


 丸い耳に縞々の尻尾。朧月夜が最後に選んだのはフォルクバングの領主・ディアゴだ。

 ディアゴは跪き、白い手を取って朧月夜に結婚を申し込もうとした。だが、朧月夜は制止した。

「その前に、私の話を聞いてくれる?全て話すわ。・・・最後は、貴方が決めて」

「分かった」


 答え合わせの時間が始まる。


 朧月夜は高名な占い師一家の三女として生まれた。

 幼き頃より際立った美貌は瞬く間に評判となり、両親は朧月夜に期待した。教育に金を掛け、美しく着飾らせる。
 その上朧月夜は才能もあり、地頭も良かった。何処へ出しても恥ずかしくない自慢の娘だと、両親は朧月夜のみを溺愛した。
 それに対して上の姉達は地味な見た目で才能も凡庸だった。朧月夜に全てを懸ける両親から愛情も金も掛けられず、放棄された。両親による理不尽な仕打ちも全て、朧月夜が生まれた所為だ。

 彼女達は妹への憎しみを募らせていった。
 ただ、家の立場が悪くなるのを恐れて表面上は仲良し姉妹を演じていた。それ程に朧月夜の影響力は大きかった。

 腹は立つが長女の須磨は跡取り娘の自負がある。必死に両親の機嫌を伺い、朧月夜の顔を立てた。

 次女の初音は容姿も才能も人並みで、朧月夜への劣等感は増すばかり。それでも爆発せずに済んだのは、自慢の美しい婚約者がいたからだ。

 須磨の婚約者は同じ一族出身の占い師で、あくまで血筋重視。初音の婚約は利害関係が絡んでいた。
 千年続く名門一家と、上昇志向が強い成金一家。両者の結び付きを強くするために必要な縁談であったが、幸い初音と婚約者は仲睦まじく順調に愛を育んでいた。

「また朧月夜が番付一位!?凄いわね」

「才能もある上、あの美貌!本当に憧れるなぁ」

 月に一度、朧月夜の実家では占い師の指名本数と売上金額をランキングで発表していた。目的は占い師のモチベーション維持のためだが、須磨と初音は良い気がしなかった。

 二人はこれまで一度も朧月夜に勝てたことがない。一門の弟子達が朧月夜を褒め称える度にイライラが募る。両親の愛情も、美しさと才能も、占い師としての腕も、何一つ敵わない。
 同じ両親から生まれたのに何故こんなに違うのか。余りにも不公平だと思った。

 だが、当の朧月夜は姉達の負の感情に気付かず占いの研究に没頭する毎日。
 初代、有明の秘術を解き明かそうと寝る間も惜しんで書物を読み漁る。ひとつ、ひとつと解明されていく術式に朧月夜は喜びを感じていた。

「朧月夜、贈り物があるんだ。受け取ってくれないか?」

 その日、突然声を掛けてきたのは初音の婚約者だ。背が高く、大きく形の良い瞳が印象的な美男子だ。
 彼が持っていたのは古代に使われていた星座と星の名が記された絶版の書物。書物を見た朧月夜は目を輝かせた。

「凄い!図書館にもなかったのに、どうやって手に入れたの!?」

「代々文官を務めている家の蔵にあってね。譲って貰ったんだ」

「お金は払うわ。幾ら?」

「要らないよ。これは君へのプレゼントだから」

「本当?ありがとう、お義兄さん!」

 輝くような笑顔を見た男は、スッと目を細めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った

しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。 彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。 両親は彼の婚約者を選定中であった。 伯爵家を継ぐのだ。 伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。 平民は諦めろ。 貴族らしく政略結婚を受け入れろ。 好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。 「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」 待ってるだけでは何も手に入らないのだから。

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

処理中です...