67 / 201
朧月夜の章
朧月夜の章㉒
しおりを挟む朧月夜が目を覚ますと、両親が誰かと話をしていた。
「私が責任を取ります。朧月夜と結婚させて下さい」
「何を馬鹿な!!朧月夜は第一王子への輿入れを目指しているのだぞ!」
「・・・ですが、痕が残ると医者も言っていたじゃないですが。傷物を第一王子が娶るとでも?」
「傷物にしたのはお前だろう!いつの間に初音との婚約を解消した!私達は知らなかったぞ!」
「仕方無いじゃないですか。朧月夜を愛してしまいましたから」
この声は、初音の婚約者だ。ほんの数回言葉を交わしただけで一体自分の何を愛したというのだろうか。
姉達が凶行に及んだ切っ掛けは間違いなくこの男が作った。
朧月夜は男に対して嫌悪感しか湧かなかった。結婚など冗談ではない。朧月夜を溺愛する両親は断るだろうと思っていたが、流れは変わった。
「・・・あなた。朧月夜の傷は深く、醜い跡が残るのは確かです・・・。一応確認しますが、初音から朧月夜に変更した場合、婚約の条件はどうなります?」
「当然、初音以上の条件を提示させて頂きますよ。朧月夜にはその価値がある」
「まぁ。素晴らしいじゃないですか。あなた、初音はあの有様ですし、もう少し柔軟に考えても宜しいのではないですか?傷物でも好条件で貰って下さる方がいるのです。前向きに検討されても良いのでは?」
「・・・むう。確かにそうか・・・・」
朧月夜は絶句した。
実の親が娘を売り飛ばすのか?
私の意思はどうでも良いのだろうか?
利用価値がなくなった娘はもう、愛して貰えないのだろうか?
・・・私は都合良く動く人形ではない!!
両親の愛が全部、偽りだったと気付いた朧月夜は激痛を堪えて立ち上がった。フラフラとした足取りだが、意地で前に進んだ。
実家を飛び出した朧月夜は夜空にぽっかり浮かぶ大きなお月様を見上げた。
キラキラ輝く銀色の月は美しい。朧月夜は気が付いたら泣いていた。
これは背中の痛みからくる涙だ。自分を傷つけて、裏切った彼奴らのために流す涙なんて無い!
涙を乱暴に拭い、ただ只管前に進む。
行く当てなんて何処にもないし、頼れる人もいない。どれだけ歩いたか分からないが、闇雲に進む朧月夜に限界が近づこうとしていた。
ポタポタと背中から流れる血。痛みで吹き出す汗が気持ち悪い。
人気の無い裏道に辿り着いた朧月夜は力尽きて倒れ込んだ。
・・・もう、動けない。
「あらあら。こんな所で倒れていたら襲われますわよ」
凛とした声に目線だけ上に向けると、月を背後に微笑む美女が朧月夜の前に立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った
しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。
彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。
両親は彼の婚約者を選定中であった。
伯爵家を継ぐのだ。
伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。
平民は諦めろ。
貴族らしく政略結婚を受け入れろ。
好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。
「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」
待ってるだけでは何も手に入らないのだから。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる