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朧月夜の章
朧月夜の章㉙
しおりを挟むディアゴも出来るだけ早く皆に朧月夜を紹介したかった。
車が止まると、領民達は一斉に静かになる。先ず降りてきたのは玻璃だ。
見たこともない犬の武官に子ども達は恐ろしくなり、慌てて親の後ろに隠れた。
次に出て来たのはディアゴだ。我らが領主様の帰還に領民達は歓声を上げた。
「皆、ありがとう。皆のお陰で妻に出会えた。感謝しても仕切れない」
「何言ってるんですか!」
「感謝しているのは私達です!」
次々出てくる感謝の言葉にディアゴは胸が一杯になった。
自分は名士と言われているが、本当に素晴らしいのは彼らだ。優しい彼らが協力してくれたから、フォルクバングはかつての勢いを取り戻せた。
「心のこもった歓迎に妻も感動している。・・・皆に妻を紹介したい。名は、朧月夜だ」
玻璃がドアを開き、ディアゴが手を差し出す。
夫の手を取り、車から出て来た絶世の美女に皆言葉を失った。
「・・・凄い・・・・」
「・・・きれい」
やっと出て来た言葉はこれだけ。皆が朧月夜の美しさに魅入られた。
煌びやかな花嫁衣装を身に纏い、濃厚な色香漂う朧月夜は柔らかく微笑んだ。
「朧月夜です。よろしくお願いします」
下界に降りて間がないので、朧月夜は猫族の風習を知らない。フォルクバングの伝統もだ。
「慣れないことも多いでしょうが、夫と共にフォルクバングを盛り上げてきたいと思います。職業は占い師です。悩みがあれば是非、相談に来て下さい」
「はい!」
元気よく返事をし、ぷにぷにの腕を上げたのは茶トラの女の子だ。
女の子はそのまま朧月夜の足下に駆け寄ると、桃の入った籠を差し出した。
「私はライラ。よろしくね、お嫁様!」
「ええ。よろしくね」
桃を受け取った瞬間、女性陣が一斉に贈り物を差し出した。異種族の朧月夜は無事、フォルクバングの民に受け入れられた。
大きな歓声が上がる中、全領民参加の結婚式が執り行なわれた。広い式場はあっという間にギュウギュウになったが、誰も文句は言わない。
皆が見守る中、ディアゴと朧月夜は指輪を交換し永遠の愛を誓い合ったのだった。
「・・・朧月夜、少しだけ抜けないか?」
「?」
結婚式が終わり、二次会に突入して時間が経った頃。ディアゴは朧月夜を連れて会場を抜け出した。
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