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葵の章
葵の章⑥
しおりを挟む満面の笑みは美しい。
だが、言葉の端々に何とも言えぬ威圧感を感じたのも事実だった。
「大天災後に鹿族は腑抜けちゃったみたいだからさ。僕みたいなタイプは珍しがられるんだよね」
紅茶を飲んでいた空は思わず顔を上げた。
「ユアン先生から何か聞いている?それともサイベリアン運輸の社長とか」
空は何も答えなかった。表情も無を貫いた。ただ、視線は真っ直ぐエドワードに向けた。
その対応が正しかったのは分からない。ただ、エドワードはずっと笑っていた。
「空くん達さ、自分達が思っている以上に目立っているんだよね」
「・・・目立っている、ですか?」
「うん。異種族で固まって仲良しこよししているのって空くん達のグループぐらいだから。皆注目していたよ」
・・・確かに。空に絡んできた三馬鹿も同種族で連んでいた。
他種族で話し合うとすれば顔見知り同士の挨拶か商談くらいだ。空達のように常に一緒に行動はしていない。
自覚はなかったが、周りから見るとかなり珍しい光景だっただろう。
「メンバーも凄い豪華だしね。サイベリアン運輸の社長、鉱山王、ユアン先生にレオンハルト王、結婚が成立したフォルクバングの領主。顔が知られていないのは君くらいだ」
「まだ学生なので」
「まぁ、それを聞いて納得したよ。久是グループの関係者っていうのは分かっていたし」
エドワードはカフェオレに砂糖をたっぷり投入した。
一口飲むと口元に笑みが浮かぶ。ただ、目線だけは決して逸らさない。空の反応を見ているのだろう。
「だからさ、サイベリアン運輸の社長と他人の振りなんかしなくて良いよ。始めから意味がないからさ」
「・・・確かに。目立っていた自覚がありませんでした」
「本当に?だとしたらヤバいね」
エドワードは呆れたように笑った。
確かにこれは失敗だった。エドワードを警戒していると態々自分達からバラしたようなものだ。
「サイベリアン運輸の社長にもよろしく伝えておいてよ。二人に直接何かを仕掛けることはないからさ」
それだけ告げると、エドワードは伝票を持ってレジへ向かった。
そのまま空に何も告げず、エドワードはカフェから出て行ってしまった。
何か仕掛けることはない、そう言っていたが本当にそうだろうか?空はミハエルに急ぎ、連絡をした。
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