85 / 201
葵の章
葵の章⑨
しおりを挟む「葵さん、今日もお美しいですね」
「嘘っぽ~~い。それ、本心?」
「勿論ですよ。僕にとって一番美しい姫君は葵さんですから」
「ふ~~ん」
素っ気ない口調だが、葵は満足そうな笑顔を浮かべている。
ここまでは正解だ。エドワードも笑みを浮かべる。
葵は褒められるのが好きな女性だ。
子どもっぽい一面が全面に出ているが、話してみると教養があり馬鹿ではないと分かる。
ただ、八人の美姫の中で扱いやすそうなのは誰かと問われれば、答えは間違いなく彼女だった。
「昨日、久是空くんとお茶をしたんです」
「へぇ~~。そうなんだ」
「僕って何か誤解されているみたいで。一度ちゃんと話し合おうと思っていたんです」
「誤解ってどんな?」
「仕事上で起きたトラブルを相手が面白おかしく大袈裟に語る事ってあるでしょう?空くん達はそれを鵜呑みにしちゃったみたいで」
「あ――・・・。あるあるよね。出る杭は打たれるって諺もあるくらいだし」
「ええ。僕はただ、命懸けで仕事に向き合っていただけなんです。悲しくて・・・」
エドワードが悲しげに目を伏せると、葵は黙り込んでしまった。
「葵さんにこんな話はしたくなかったんですけど、空くんとミハエルさんって仲が良いでしょう?二対一だと勝ち目がないから不安で・・・」
「え、そうなの!?」
「え?知らなかったんですか?」
葵は驚いた。まさか二人が友達だったとは。
つまり、指名の時に空が言っていた『葵推しの友人』はミハエルだ。なんたる偶然。
自分を巡って友人と戦うと宣言した空の言葉に嘘は無いだろう。
空は最終候補の一人として足繁く自分の元に通って話をしたり、プレゼントや花を贈ってくれる。だが。
「・・・何か、気に入らないなぁ・・・」
友人がミハエルだと黙っていたのはまぁ、分かる。恋の戦は駆け引き必須。望む女を手に入れるために策を使いライバルを蹴落とすやり方は否定しない。
しかし二人で結託してエドワードを陥れようとするのは違うだろう。
そんなの、フェアじゃない。
「二人は悪くないですよ。だって誤解だったんですから」
「・・・でも、ペナルティは必要よね?後は私に任せて。エドワードは何も悪くないんだから」
「葵さん・・・!ありがとうございます!」
エドワードは感動し、両手で葵の手を握った。直ぐに黄玉の制止が入り、お叱りを受けたが気にしない。
本当に扱いやすい女だ。
表裏のない性格は嫌いじゃない。正義感が強いくせに深く考えない所は利用しやすくて大好きだ。
エドワードにとって重要なのは『如何に自分の利になるか』だ。
葵は極上の美人で、オマケに実家が太いなんて最高だ。結婚時手として申し分ない。
ただ、エドワードが見据えるのはその先。いずれ解放されるであろう黒狐の国の、巨大市場だ。
「葵さん、カフェでチョコレートケーキを買ってきたんです。一緒に食べませんか?」
「チョコレートケーキ!私大好きよ!」
「美味しいですよね~~!」
本当に、美味しい。
エドワードは目を細め、カフェオレにたっぷりの砂糖を入れたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った
しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。
彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。
両親は彼の婚約者を選定中であった。
伯爵家を継ぐのだ。
伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。
平民は諦めろ。
貴族らしく政略結婚を受け入れろ。
好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。
「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」
待ってるだけでは何も手に入らないのだから。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる