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葵の章
葵の章⑯
しおりを挟む空とミハエルがそれぞれの部屋で予習をしていると、イフラース、ユアン、レオンハルト+黒猫秘書官が交代で差し入れを持って来てくれた。
大変有り難く、空は差し入れを全て完食した。
今日はユアンが見るからに高そうなヒレカツサンドを持って来てくれた。
「うわぁ!美味しそうですね!」
「一緒に食べましょう!私も一度で良いから食べてみたかったんです!」
赤味の分厚いステーキ肉が挟まれたサンドウィッチに空はかぶり付く。
上質な肉の旨味が口いっぱいに広がる。思わず笑顔になる美味さだ。
「「ん~~~~!!」」
空をユアンは同時に声を出していた。
「ユアンさん!最高です!」
「お肉は正義だからね!」
「はい!」
「空くんに喜んでもらえて良かった。また持ってくるからね」
「優しいユアンさんが大好きです!」
「空くん・・・!!」
優しくてイケメンな弟分が可愛すぎる。
ユアンは感動してお小遣いも渡そうとしたが、流石に現金は断られてしまった。
カードの予習に勤しむ空の邪魔にならないようにユアンは早々に退出したが、心境は複雑だ。
仲の良い親友と、可愛い弟分。
まさか二人が一人の女性を巡って争うことになるとは思わなかった。
どちらも応援しているが、必ず一人は失恋する。
・・・まぁ、どちらも失恋する場合もあるが、その時は仲良し組で励ます会を盛大に開催しよう。
ただ、これだけは確信している。
どちらかが成就し、失恋しても。自分達の仲は決して変わらない。
長い付き合いになる。他ならぬミハエルがそう言ったのだから。
五日後、遂に最終審査の日がやって来た。
厳正なるくじ引きの結果、空、エドワード、ミハエルの順番で対戦が行なわれることとなった。
一対一の真剣勝負。候補者が鉢合わせないように時間を空けてゲームが開始された。
一番手として部屋に入った空は緊張した面持ちで椅子に座った。
「ねぇ、空。カードのルールって天界も下界も似たような感じだった?」
「いえ、この『ワンダフルワールド』は俺が知っているカードと違ってルールが複雑でした」
「ありゃ、そうなんだ」
「ガイドブックがまだ必要な初心者ですが、頑張ります」
「真剣勝負だから初心者でも手加減しないよ?はい、先ずはジャンケンね」
先行、後攻を決めるジャンケンだ。
空がグーを出して葵がパーを出したので、葵は先行を選択した。
「これが私の布陣よ!」
葵はプレイマットにカードを置いていく。
基本の二枚には槍を持つ『正義の犬神』に琵琶を持った『雅楽の犬神』。
呪具・武具の四枚には『無双の槍』『静寂の琵琶』『無音の孤独』『鳳凰』のカードだ。
空も考え抜き、今の自分に最善だと思ったカードを置いていく。
基本の二枚には二刀流の『剣聖の犬神』に水を操る『水神の犬神』。
呪具・武具の四枚には『雷雨』『双極剣』『玄武』『人魚の涙』を選択した。
「これが俺の布陣です」
「へぇ~~!面白いね!」
「秒で負けないように頑張ります」
「うん!頑張ってね!」
葵は嬉しそうに笑った。空の考えた布陣は初心者にしては上出来だ。
この三日間、真剣に考えてくれたのだろう。それが嬉しくて堪らなかった。
(あと、やっぱりイケメンね!)
頑張るイケメンは大好きだ。
手を抜いたら失礼になるだろう。葵も全力で戦うことにした。
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