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葵の章
葵の章⑳
しおりを挟むこれはむくれていると気付いた黄玉だが、口を出すのも無粋というものだろう。
「ふ~~~ん・・・。じゃあ、何個か条件があるんだけど」
「え!?何何!!??」
「私、狭い世界しか知らないの。色んな所へ連れて行って!」
「俺比較的自由が利くから!!何処にでも連れて行くよ!」
「車かバイクの免許が欲しいな」
「自動車学校だね!良いよ、俺のオープンカーで毎日送迎するから!」
「レジャーランドに行ってみたい」
「鳥の国に有名なレジャーランドがあるから!葵ちゃんチュロス好き?何本でも買うから結婚しよう!」
「結婚式には家族を呼びたいんだけど」
「勿論!!・・・・ん?」
「子どもは沢山欲しいな」
ニカッと笑った葵を見てミハエルは泣きそうになった。
葵は立ち上がると、スタスタ歩いてミハエルの横に立った。
「一旦とかないから。私が選んだのは貴方よ!」
ミハエルは衝動のままに立ち上がり、葵を抱きしめた。
初めての抱擁に葵はドキドキした。前から思っていたが、ミハエルは良い匂いがする。
温かくて力強くて、その上良い匂いがする。葵は嬉しくなってミハエルを抱き返した。
「嬉しい?」
「凄く嬉しい。葵ちゃん、絶対幸せにするから!」
「うん。よろしくね!」
笑い合った二人の顔は徐々に近づき、ミハエルと葵は触れるだけのキスをした。
「へへ」
頬を真っ赤にして笑う葵が溜らなく可愛い。
ミハエルはもう一度キスしようとしたが、葵はスルリと躱してミハエルの手を取った。
そして何故か窓に向かった。
「??」
「よ~~し!このまま出発よ!飛んで私を連れて行きなさい!」
「は!!??いや無理無理!人型で飛べないから!」
「え!?そうなの!!??」
「よく誤解されるけど俺達は鳥型でしか飛べないよ。あ、詐欺呼ばわりは止めてね!」
何度か言われたのだろうか?葵は笑った。
しかし出発の意思は変わらない。
さてどうしようかと悩む葵に、黄玉がススッと音を立てずに近寄ってきた。
「葵様、丁度良いオープンカーが今しがた到着した所です。あ、これ鍵です」
葵に手渡された鍵を見てミハエルはギョッとした。
「いや、それ俺の車の鍵じゃん!」
長期滞在になるので、大切な愛車は盗難防止を兼ねてガレージに入れておいた。
パスワードも自分しか知らないはずなのに、一体何故ここに愛車があるのだろうか!?
鍵も自宅のケースに入れていた。
考えれば考えるほどミハエルは怖くなった。
「ミハエル様、余り気にしない方が良いですよ」
「無理があるだろ!気にするわ!!」
「ふふ、これで移動手段は手に入れたわ!さぁ、行くわよ!」
葵はご機嫌にミハエルの手を取り、走って車へ向かった。
もう滅茶苦茶だ。だがこれで良い。ミハエルも声を出して笑っていた。
『お相手は若様を振り回してくれるような、我が儘で明るいお嬢様がピッタリだと思いますよ』
爺やの言葉を思い出した。
嗚呼、本当にその通りになった。爺や。俺は今、凄く幸せだよ。
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