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葵の章
葵の章㉑
しおりを挟む実際車を見ると、白い高級車は間違いなく自分の愛車だった。
ただ出発前と違ったのは、パンパンに膨らんだキャリーバッグが後部座席に置かれていた。
これは一体??
「あ、それ私の荷物。黄玉に頼んで纏めておいて貰ったの」
「じ、準備が良いね・・・」
「決まり次第出発する予定だったからね。あ、ミハエルの荷物は後から黄玉が持って来てくれるから。楽しみよ!私の知らない世界を沢山見せてくれるんでしょう?」
「ああ。任せておいてよ」
鳥の国にはゆっくり帰ろう。
葵の望むまま、見たい景色を全て見せよう。
二人は車に乗り込むと、ミハエルはエンジンを掛けた。
アクセルを踏んで出発しようとした時、神殿側から声が聞こえた。
「「ミハエルさ~~~ん!」」
「ミハエル殿~~~!」
「ミハエル!良くやったな!」
空とイフラース、ユアンとレオンハルトだ。
きっと黄玉から聞いたのだろう。急いで駆け付けた四人は正門前で手を振っていた。
「ミハエルさん、葵さん、お幸せに!」
「またお会いしましょう!」
「ご祝儀は後ほど振り込みますね~~!」
「また顔を見せに来いよ!お前なら大歓迎だ!」
ミハエルはちょっと泣きそうになった。仲間達の見送りがこれ程嬉しいなんて思わなかった。
『俺達、この先長い付き合いになると思うんだよね』
あの言葉には願望も込められていた。
疑り深い自分が信頼できた友人達。
異種族だろうが関係ない。俺も彼らが大好きだから!
「ありがとう!皆も頑張れよ~~~!!また会おう!」
「空~~!じゃあね~~!」
グッと親指を立て、ミハエルはアクセルを踏んだ。
葵は身を乗り出して四人に大きく手を振った。
二人が乗った白いオープンカーは鳥の国を目指して出発した。
車が見えなくなるまで、四人は手を振って見送ったのだった。
ミハエルが神殿を去るのは寂しいが、また会おうと彼は言ってくれた。
彼は嘘をつかない。再会の日は直ぐ来ると空は思った。
「本当に行っちまったねぇ。嵐のようだ」
屋上では若紫と朝顔が葵を見送っていた。
「別れの挨拶は昨夜に済んでいますからね。ふふ、賑やかで葵らしい門出です」
結婚相手が決まり次第即出発。
そう決めた葵は昨夜、若紫に別れの挨拶を告げに来た。
『相手が誰になろうと、そのまま出発します。王女様、本当に楽しかったです。あの日私を選んで下さってありがとうございました』
晴れやかな笑顔を浮かべる葵は若紫の目から見ても美しかった。
自由を求める美しき娘に、大きな翼と広い心を持つ鳥族の青年。
誰が見ても似合いの夫婦になるだろう。
ミハエルなら葵の望む景色を全て見せてくれるだろうから。
「私の方こそありがとう。葵、貴女は正しい相手を選んだわ」
若紫は葵を乗せた車が見えなくなると、朝顔と共に大神殿の最深部に戻ったのだった。
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