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明石の章
明石の章③
しおりを挟む猫の国は生まれで全てが決まる。
どれだけ駄目な奴でも上級貴族に生まれれば生涯安泰で、どれだけ頭が切れても市民の出では出世は見込めない。
地方を治める領主も世襲制で、領主ガチャに外れたら領民はとんでもない目に遭う。
ならばとレオンハルトはリコール制度を設けようとしたが、悉く却下された。
貴族達の批判をかわしながらも、やっとの思いで成立させたのは国家公務員の条件緩和だ。
国家公務員になるためには馬鹿みたいに厳しい条件が盛り込まれており、中種以下の一般市民は受験さえ認められなかった。
条件を緩和して初めて行なわれた国家公務員試験。
一番の成績で合格したのは、貧しい家庭出身の小さな黒猫だった。
彼は今、レオンハルトの秘書官として立派にお役目を果している。
重種が何だ。軽種が何だ。身分や貧富の差で振るいに掛けていては本当に優秀な人材は得られない!
「それらを変えようと戦っている最中だ。だからこそ、いつ何が起るか分からん」
特殊部隊時代の同僚達が守ってくれているが暗殺の心配は付きものだ。
例え襲われても獅子のプライドをかけ、全力で叩きのめしてやる。
「・・・つまらない話をしたな」
「そんな事はありません。レオンハルト様はご立派です。私も一般家庭出身だから分かります。『王』が民の味方である事がどれほど心強いか。レオンハルト様に希望を見出している人々は大勢います」
『レオンハルト様、ありがとうございます。レオンハルト様のお陰で私の家は貧困から抜け出すチャンスを掴めました。ご恩は一生掛けてお返し致します。本当にありがとうございました』
任命式の日、黒猫秘書官のイーサンは涙を流しながらレオンハルトに感謝した。
・・・ああ、己の行動は決して間違ってはいなかったのだと実感した瞬間だった。
言葉通り、イーサンはレオンハルトに忠誠を誓い自分を一番近くで支えてくれている。有能な彼にどれだけ助けられたか。
『レオンハルト様!神殿の速報をご覧になりましたか!?これは運命です!レオンハルト様を支えて下さる美しくて聡明な奥方様を見つけましょう!』
前のめりになるイーサンに押される形で、レオンハルトは見合いに応募した。
応募したと同時にイーサンは講師を呼んで恋愛指南塾を始めた。
何故かレオンハルトは強制参加となった。
あの時は納得できなかったが今なら分かる。女性に気遣えず、思った事は馬鹿正直に口に出すレオンハルトは悉く見合いに失敗した。
全敗して国に帰る覚悟が出来た頃、明石が最終候補の一人として選んでくれた。
今更だが自分の何処が気に入ったのだろう??
「・・・その、一つ聞いても良いか?」
「はい、何でしょう?」
「どうして俺を選んでくれた?散々やらかした男なのに」
バツが悪そうに目を逸らすレオンハルトを見て明石は笑った。
「嘘をつかない所が素敵だと思いました。レオンハルト様は何でも正直に話して下さいます」
「馬鹿正直な所が気に入ったのか?変わっているな」
「そうですか?私は取り繕わず、ありのままに気持ちを伝えてくれるレオンハルト様に魅力を感じました。迷惑でなければ嬉しいのですが」
「迷惑な訳あるか!!嬉しかったぞ!」
「本当ですか?」
明石は嬉しそうに微笑んだ。
女性を喜ばせた経験が一度もないレオンハルトは嬉しくなり、更に彼女を喜ばせたくなった。
そして見事に失敗した。
「本当だ!明石は美人で優しい上に胸も大きい!今まで見てきた中でダントツだ!あの時は偽物と疑って済まなかったな!!」
明石は恥ずかしそうに胸を隠した。
後から殺気が漂う。ちらっと後ろに視線を向けると、透輝が恐ろしい顔でレオンハルトを睨み付けていた。
・・・あれ?俺、またやらかした???
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