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明石の章
明石の章⑦
しおりを挟むその頃、明石は朱寧と美術館デートをしていた。
朱寧は明石をさり気なくエスコートし、彼女を敬っているのが言葉だけではなく態度でも伝わる。
優しく誠実で、虐げられた女性を救おうと精力的に活動する朱寧。
そんな彼を明石は心から尊敬していた。
「明石姫、そこのソファーに座って話をしませんか?」
「はい、喜んで」
明石が微笑むと、朱寧も嬉しそうに笑う。
並んでソファーに座ると、紅茶とスィーツが運ばれてきた。
「本来なら美術館内での飲食は禁止なのですが、ここでなら構わないと許可を得ています」
薫り高いダージリンティーに、フワフワのシフォンケーキ。
朱寧の心遣いが嬉しく、明石は早速ダージリンティーを一口飲んだ。
「美味しいです!」
「それは良かった」
美味しい紅茶とケーキを楽しみながら、美しい美術品を鑑賞する。自然と会話も弾んだ。
「朱寧様が暮らす龍の国とは、どのような所なのですか?」
「緑豊かで海洋資源が豊富です。音楽を愛する種族なので、楽団に所属していた明石姫にも合うと思います」
「本当ですか?それは嬉しいです」
「大昔には龍族による楽団もあったそうなのですが、残念ながら消失してしまいました。龍族の総人口は九十八人。・・・七種族で最も数が少ないのです」
産声が響かぬ国。
幼かった頃、誰かがポツリと呟いた。
悲観的な言葉を朱寧は今も強烈に覚えていた。
子が生まれず死に行くのみ。最後に龍の子が生まれたのは50年も前だ。
龍族の惨状を聞いた明石は絶句した。
龍族は長命故に繁殖能力が低く、プライドも天より高い。
犯した罪の大きさも相まって、龍族の人口減少率は七種族一となっていた。
朱寧は伏家に次ぐ名家、朱家の跡取り息子として生まれた。
聡明な朱寧の父は龍族の現状を憂いていた。今のままでは龍の国は存続すら危うい。
危機感を抱いた彼は一人息子を鳥の国へ留学させた。
鳥の国で学び始めた朱寧は大きな衝撃を受けた。
充実した福祉に、自由な流通。学びの幅も広く、絶対的な身分差もない。
全てが新鮮で目新しい。
三年の留学を終えた朱寧だが、まだまだ学びたい気持ちがあった。
そこで朱寧は父に頼み込み、全国を回って見聞を広めた。
全ての国を回り終えた朱寧の心に大きな影響を与えたのは、一人の女性だった。
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