124 / 201
明石の章
明石の章㉔
しおりを挟む仮想都市入り口ゲートは薔薇園の奥にひっそりと設置されていた。
朱寧・オマールもレオンハルトと同時刻に到着し、最終候補者は全員揃った。
「レオンハルト王・・・無人島にでも行かれるのですか?」
「重装備ですね」
朱寧とオマールは台車をじっと見た。
どう思われようが構わない。レオンハルトはムンッと胸を張った。
「友人達からの差し入れだ」
「残念ですが、全て置いて行って貰います」
「うわっ!!」
透輝がレオンハルトの真後ろに立っていた。
気配は感じなかった。正直心臓に悪い。
「折角の差し入れだ。どうしても駄目か?」
「不正があってはいけません」
「はぁ・・・だったら弁当は今食うから待ってくれ。空の気持ちを無駄にしたくない」
そう言うとレオンハルトは弁当を手に取る。
今日の分なので弁当は全部で二つ、軽食のサンドイッチが一食分入っていた。
「折角だし皆で食べないか?勿体ないし」
透輝ははぁ、とため息をついた。
「食べ物を粗末にするのは私の本意ではありません。食品のみ、休憩スペースに配置します。それでよろしいですか?」
「助かる。あ、これだけは明石に渡して貰えるか?友人が明石にって用意してくれた」
「失礼ですがご友人の名前を伺っても?」
「イフラースだ。鉱山王の」
「ああ、浮舟様の」
明石と浮舟は仲が良い。浮舟の側仕え兼護衛の灰簾と話す機会も当然多くなる。
伝説の土下座求婚は護衛達の間でも賛否両論で意見は真っ二つに分かれているが、透輝は嫌いではなかった。
「最終審査終了後に、明石様にお渡しいたします」
「そりゃ助かる。俺の腹に入ったなんて知ったらイフラースは悲しむだろうからな」
いや、恐らくイフラースは気にしない。
それよりもプレゼントの菓子に手を付けなければならなくなったレオンハルトの状況に涙するだろう。
透輝は腕時計を確認した後、視線をゲートに向けた。
「・・・さぁ、いよいよですね。ゲートが開放されます」
ゲートは一見すると、白い柱が二本建っているようにしか見えない。
ブンッと音が鳴ると同時に青白い電流が走り、二本の柱の間に真っ黒な球体が浮かび上がる。
この球体こそが仮想空間への入り口なのだろう。
入り口が人一人通れる大きさに拡大すると、中からミニチュアシュナウダーの文官が出てきた。
「ゲートが無事通過しました。中へお入り下さい」
「その前に、お三方のスマホと電子機器はここで全て回収します。最終審査が終了次第、返却しますのでご安心を」
レオンハルト、朱寧、オマールは透輝にスマホ、イヤホンを手渡す。
透輝は持ち主の名前が書かれた付箋を回収したスマホ等に貼ると、ミニチュアシュナウダーが持って来た袋の中に入れた。
ミニチュアシュナウダーの文官はギュッと袋を縛ると、透輝と最終候補者三人に一礼して薔薇園から出て行った。
「それでは、お三方は私の後を付いて来て下さい。決して離れないように」
「ああ」
「ええ」
「分かりました」
レオンハルト、朱寧、オマールの順番で透輝の後を一列になってついて行く。
電流の影響か、静電気が酷い。レオンハルトの髪と尻尾は一気に逆立った。
「「・・・・・」」
チリチリ逆立つ髪の毛と尻尾を真後ろにいる二人は笑いをこらえながら見る。
レオンハルトも気付いているが、恥ずかしくて何も言えなかった。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った
しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。
彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。
両親は彼の婚約者を選定中であった。
伯爵家を継ぐのだ。
伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。
平民は諦めろ。
貴族らしく政略結婚を受け入れろ。
好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。
「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」
待ってるだけでは何も手に入らないのだから。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる