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明石の章
明石の章㉖
しおりを挟む「「で、聞きたい事って何?」」
「黒狐族は六種族を恨んでいないのか?」
「六種族?ああ、悪い奴らだね」
「大罪を犯した最低な奴らだ」
子どもに非難されると落ち込む。
レオンハルト自身は何もしていないが、彼らから見れば虐殺の罪を犯した猫族のおじさん。もれなく大悪党の一員だ。
「・・・ごめんな」
レオンハルトは先祖に代わって双子に謝罪した。
まさか謝罪されるとは思わず、双子はレオンハルトの服の袖をギュッと掴んだ。
「おじさんは何もしていないじゃん」
「王女様も言っていたよ。六種族は重い罰を受けて反省しているって。おじさんは?呪いは解けたの?」
そこはお兄さんと呼んで欲しい所だが、幼子の優しさに心が浄化される。
レオンハルトは訂正せず、双子の頭を優しく撫でた。
「呪いは解いて貰ったから大丈夫だ」
「良かったね。ねぇおじさん。僕たちが帰ったら猫族と仲良く出来るかな?」
「皆僕たちを受け入れてくれるかな?」
レオンハルトは目を丸くした。
緊急特番の時に文官も言っていた。黒狐族は帰還を拒んでいると。
千年前に彼らが受けた仕打ちを考えると、『復讐』よりも『恐怖心』が大きいのかもしれない。
帰還しても昔のように殺されはしないか。
呪いの腹いせをぶつけられはしないか。
他種族と上手くやっていけるのだろうか。
この双子達のように、不安を抱える者が圧倒的多数なのだろう。
六種族を憎み、復讐したい者がいることも忘れてはならない。
自分達はそれだけのことをしている。彼らが帰還したら刃を向けられるのも覚悟しなくてはいけない。
もしその時が来たら。
いや、そうならないように今から土台を作るべきだ。
他ならぬ自分が作る。
王として猫族と黒狐族を繋ぐ道しるべとなるのだ。
やっと王座に就いた意味を見出した気がした。
「安心しろ。猫族は黒狐族を傷つけたりしないし、俺が全力で守る。猫族の王が約束する」
レオンハルトは双子の手を優しく握って約束した。
「レオンハルトの名にかけて誓う。千年前の悲劇は繰り返さない。繰り返してはならないんだ!」
王の誓約は絶対だ。
レオンハルトは王として、黒狐族との和解に全力を注ぐ。
簡単な道のりではないだろう。足を引っ張る者は必ず現われる。
それでも。
「俺が遣り遂げてみせる。信じてくれ」
双子は目の前にいる青年が本物の王だと知らない。
幼いながらも彼が只者ではないと本能で感じた。
双子はレオンハルトの美しいエメラルドの瞳を見て強く頷いた。
「うん。信じるよ」
「もう仲良くなれたしね。おじさんが最初の友達だよ」
「ああ。友達だ」
レオンハルトがニカッと笑うと、双子もつられて笑った。
「帰還したら猫の国に遊びに来い。待っているからな」
「「うん!」」
双子はバイバイと手を振って走り去った。
これも立派なタイムロスなのだろうが、後悔はしていない。
『王』として黒狐族と今後どう接していくか、今決めた。
隣に明石がいてくれたら心強い。レオンハルトの決意を明石もきっと喜んでくれるだろう。
「よし、今から考えるか」
レオンハルトは宿舎の長椅子に座るとマップを広げ、テーブルに三枚のカードを並べる。
楽団に黒いフルート、天帝。
黒いフルートのイラストには小さな白い花が密集して描かれている。
じっと花を見ると、花弁が綿毛だと気付いた。まるで蒲公英だ。
だが蒲公英のように大きく纏まっていない。一つ一つの花は独立している。
「ん?」
俺はこの花を見たことがある。
でも、何処で見た?思い出せない。
無理矢理記憶の扉をこじ開けてもぼんやりとした光景が広がるだけだ。
思い出せないレオンハルトはとりあえず神殿に向かう。
楽団も天帝も、安直だが神殿しか浮かばない。
「よし、行くか」
レオンハルトは立ち上がると、神殿へ向かった。
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