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明石の章
明石の章㉘
しおりを挟むその頃、レオンハルトはブラブラと神殿内を散策していた。
大神殿内にある天帝廟を見たり、立ち入り禁止の宝物庫に入って文官に叩き出されたり、神官長室に突撃して叱られたりした。
考えが纏まらず、小腹が空いたレオンハルトは休憩所を目指した。
休憩所は仮想都市に二カ所しかなく、内一つは大神殿二階のカフェテラスに設置されていた。
レオンハルトは何とか無事に休憩所へ辿り着くと、差し入れのサンドイッチを手に取る。
中身はフィレ肉サンドだ。以前ユアンと一緒に食べて気に入っていたサンドイッチだ。
もう一度食べられるとは思わず、レオンハルトの尻尾は嬉しさでユラユラと揺れた。
サンドイッチを食べながら黒いフルートのカードを見る。
この花を思い出さなければ先へ進めない気がした。
何処だ。俺は何処でこの花を見た。
記憶を必死で辿るが答えは出ない。
印象のある花なんて明石と見た黄色の薔薇以外はあやふやだ。
・・・いや、もう一つあったはずだ。
レオンハルトはふとフィレ肉サンドを見た。
これと同じくらい、いや、それ以上に美味しかった肉料理が浮かんだ。
リアーナの手作りミートパイ。
優しい彼女の顔が浮かんだ瞬間、レオンハルトの記憶の靄が一気に晴れた。
最初見た時は花とは思えない見た目だった。
リアーナはそれを摘んで、ラビオリにしていた。
母はそれが好きで、レオンハルトもリアーナと一緒に雪を掘って探した。
摘み取れなかった蕾は長く伸びて成長し、白い花が咲いた後に綿毛となる。
幼いレオンハルトはリアーナと一緒に綿毛の花を見つめた。
『花が咲いたらもう食べられないの?』
『ええ若様。ここまで育っては固くて食べられません。でも、綿毛の花は可愛いでしょう?』
『うん!』
思い出した。あれは!!
思い出してもそれが何を意味するか分からない。
レオンハルトは急いでフィレ肉サンドを完食すると、走る。
通路を曲がった先に可愛らしいマルチーズの文官がてくてくと歩いていた。
小さな彼の肩をレオンハルトは鬼気迫る表情で掴んだ。絶対に逃がさない圧力にマルチーズ文官は叫んだ。
「ここに図書室はあるか!!」
「ヒィイ!!」
「教えてくれ!!あるのか?ないのか!」
「あ、ありますぅぅううう・・・」
「どこだ!?教えて・・・いや、連れて行ってくれ!」
「は、はひィィい・・・!!」
哀れなマルチーズ文官はレオンハルトの勢いに圧倒され、ぷるぷる震えながら図書室まで案内した。
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