Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

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明石の章

明石の章㊱

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 毎日屋敷前で土下座をする明石を哀れみ、止めるよう促す者もいた。

 明石を支援するかのように、匿名で雀鷂達のいじめを告発する者も現れた。

 これまで明石に救われた母子達も署名を集め、助命嘆願書を送ったが宰相に動きは無かった。

 判決前日。

 大雨が降る中も明石は土下座をしていた。
 両親は心を痛め、床に伏してしまった。
 動けるのは自分しかいない。もし今日で動きがなかった場合、明石は己の命に代えてでも死刑判決を止めるつもりだった。

 体を打ち付ける雨が止む。

 顔を上げると、美しい姫君が明石に傘を差し出していた。

『風邪を引きますわよ』

 この顔は知っている。
 黒狐族自慢のプリンセス、若紫だ。

『・・・王女様?』

『ねぇ明石、今貴女の前には二つの選択肢があります。一つ。妹君と弟君を解放する代わりにある重要なお役目を引き受けること。二つ。今の話を忘れ、明日下される厳しい判決を受け入れること。健気な貴女にチャンスを差し上げますわ。お好きな方を選んで下さい』

 ニコッと若紫は笑った。

『・・・本当に、本当に妹と弟を解放して下さるのですか?』

『ええ。勿論』

 若紫はあっさりと答えた。


『相手は宰相様ですが、本当に・・・?』

 宰相の地位は王に次ぐ序列二位。
 王の子女といえども、宰相の決定を覆すのは難しいのではないだろうか?
 明石の不安が伝わったのだろう。若紫は柔らかく微笑んだ。

『問題ありませんわ。何故なら黒狐族において、私より立場が上の者などいないからです』

 明石は現黒狐族王の顔が浮かんだ。

 黒狐族で誰が一番尊いかと問われれば、答えは間違いなく王だ。

 王より上の立場とは一体・・・?

『さあ、哀れで美しい明石。貴女はどちらを選びますか?』

 何故王女が自分を知っているかは分からない。

 不安はあるが、頼れるのはもう若紫しかいない。明石は若紫に土下座して懇願した。

『お願いします。妹と弟を助けて下さい!私はどうなろうと構いません!』

『賢明な判断で何よりですわ』

 若紫は満足そうに目を細めると、宰相の屋敷に入っていった。その後を朝顔がぴったりとついて行く。
 
 気が付くと雨は止んでいた。

 その日のうちに妹と弟は全員釈放され、厳重注意と神殿での無料奉仕一ヶ月の処罰が下された。

 明石の辞表も取り消され、神官の籍は残ったままとなった。
 これまで明石が受けたいじめも調査され、雀鷂と送火、菖蒲は謹慎処分を受けた。

 明石の名誉は回復されたが、神殿はもう彼女の帰る場所ではない。

 明石は荷物をまとめると、王城へ向かった。
 家族には全て話した。若紫の提案を受け入れ、呪われた六種族との見合いに応じると。

 自分達の釈放と引き換えに姉が六種族に嫁ぐ。話を聞いた妹弟は俯いて泣いた。
 ただ、常磐だけは泣かなかった。

『姉さん。嫌じゃないの・・・?』

『不思議と嫌悪感はないの。同族の方が怖いなんておかしな話よね』

『そんなことないよ。あの馬鹿女、もっとひっぱたいておけば良かった』

『牢屋暮らしはもう懲り懲りでしょう?』

『はは、確かにもう遠慮したいわ』

『常磐、大好きよ。姉さんの妹に産まれてきてくれてありがとう』

『うん』

 明石は家族に別れを告げ、笑顔で生まれた家を去った。
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