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明石の章
明石の章㉟
しおりを挟むその日のうちに明石は辞表を出し、神官を辞めた。
傷付いた明石は部屋に引き籠もるようになり、何も話そうとはしなかった。
心配した楽団のメンバーが尋ねて来てくれたが、明石は面会を拒否した。
もう何もしたくない。
何も考えたくない。
私は一体何のために頑張っていたのだろう?
両親は心療内科でのカウンセリングを奨めたが、明石は部屋から出てこなかった。
妹と弟は一生懸命明石を慰めてくれたが、心に響かない。
布団に丸まり、世界を拒絶した。妹弟が気をつけないと明石は食事も摂らなかった。
生きる屍と化した姉を見た常磐は怒りで涙がこぼれた。
『絶対あの女が何かやったんだ・・・!!待っていて明石姉さん。私が仇を討つから!』
そして常磐は明石が受けた陰湿ないじめを知った。
怒りに震えた五人の妹弟は覚悟を決め、大神殿へ向かった。
ベッドの上から動けない。
体が重い。
何もしたくない。
抜け殻になった明石は天井を眺めていた。
お腹が空いた感覚も無く、水も欲しくない。
このまま飢え死にしたら楽になるだろうか?いや、常磐がいる限りそれは無い。
常磐は愛情深く、自分と違ってしっかりしている。
毎日決まった時間に常磐は食事を作り、明石の部屋まで運んでいた。
・・・そういえば、今日はまだ朝食を食べていない。
珍しいと思っていたら、一階からバタバタと大きな足音が聞こえた。
足音は明石の部屋に向かって来ている。
何事かと起き上がると、両親が叫びながら明石の部屋をノックした。
『明石・・・明石ッ!!大変だ!!常磐と御影と吹雪、愛宕と出雲が貴族に怪我を負わせて留置所に送られた!!』
『・・・え?』
明石は急いで着替えると、両親と留置所へ走った。
そこで明石は妹と弟が大神殿で乱闘騒ぎを起こし、明石を追い詰めた雀鷂と送火、菖蒲と室長を病院送りにしたと知った。
特に常磐の怒りは凄まじく、雀鷂を見つけた直後に強烈な一発を放った。
そのまま倒れた雀鷂に常磐は馬乗りになってビンタし続けた。
『この馬鹿女!!よくもやってくれたわね!明石姉さんが受けた痛みを思い知れ!』
『ゆ・・許して・・・!!』
雀鷂の顔は判別がつかないほど腫れ上がり、歯も抜けた。
何度も赦しを乞うていたが雀鷂だが、怒り狂った常磐に届かない。
現場は明石の元職場だが、周りは常磐の剣幕に怯え何も出来なかった。
護衛官の後に隠れていた送火、菖蒲も常磐と愛宕によって引きずり出され、たこ殴りの刑が執行された。
貴族の娘を守る為に配置されていた護衛官は弟の御影と吹雪、出雲が相手をして大乱闘に発展した。
そのどさくさに紛れて明石の三つ下の弟、御影は姉を裏切った室長をぶん殴った。
吹雪と出雲も一発づつお見舞いした。室長はその場で気絶した。
酷い噂を流した同期達も乱闘に巻き込まれ、軽くはない怪我を負った。
騒ぎを聞きつけて突撃した武官が場を制圧し、常磐と御影と吹雪、愛宕と出雲は現行犯として捕らえられた。
私のせいだ。
私が逃げたから、妹と弟が捕まった。
あのまま辞めなければ妹と弟は仇討ちなんて考えなかった。
明石は己の罪に震え、事件担当の警察官に土下座した。
『私が牢に入ります!罰も私が全て引き受けます!お願いです!常磐と愛宕を!御影と吹雪と出雲を解放して下さい!お願いします!』
『・・・お嬢さん。残念だけど相手が悪い。貴族に怪我を負わせた場合、最悪死刑判決が下される。宰相様も厳しい処罰を望んでおられる』
『そんな・・・!!』
その日から毎日、明石は宰相の屋敷前で土下座し赦しを乞うた。
水をかけられ、すれ違い様に蹴られても耐えた。
残飯を浴びせられ、犬をけしかけられても諦めなかった。
死刑判決が下る前に何とか宰相様の赦しを得たい。明石は雨の日も風の日も土下座を続けた。
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