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明石の章
明石の章㊷
しおりを挟む「暗い話を聞かせてすまない。これが本当の、俺の話だ」
想像以上に重たいレオンハルトの過去を聞き、明石は涙を流した。
猫族の王様は傷だらけの心を隠し、がむしゃらに前に進んでいただけだ。
自信満々な笑顔と前向きな言葉は、きっと自分自身にも言い聞かせていたのだろう。
自分達は似ている。
似ているが、レオンハルトは自分のように下を向いたりしない。
守る国と民がいる彼は立ち止まることすら許されないだろう。
許されなくても、レオンハルトはかつての自分のように逃げたりしない。
全部背負った上で戦う強い王様だ。
どれだけ強くてもレオンハルトは人間だ。完璧ではない。
『国』という重圧と『国民』への責任。一人で背負いきれず立ち止まる日も来るだろう。
どうにもならなくなって押しつぶされそうになった時、自分が隣で支えよう。一緒に背負って歩こう。
一人では抱えきれない不安も、二人で半分こにすれば良い。
傷つけられた心も二人で慰め合えばいずれかさぶたになり、傷跡すら残らなくなるだろうから。
彼の身分は貴く、自分では到底釣り合わない。
・・・それでも。
こんなに繊細で優しくて、愛情深い男性は他にいない。
「本当に私で良いんですか・・・?」
「明石じゃないと駄目なんだ。他の女なんかいらない。一緒に帰ろう」
明石は手を伸ばすと、そっとレオンハルトの頬に触れた。
拒絶も覚悟していたが、レオンハルトは優しく笑った。
「・・・嫌じゃないですか?」
レオンハルトは明石の手に自分の手を重ねた。
「ああ、嬉しい。明石の手は温かいんだな」
触れられても気持ち悪くない。
温かさと、どうしようもない愛おしさが心に広がるだけだ。
明石は嬉しそうに微笑むと、レオンハルトの額に触れるだけの口づけを落とした。
驚いたレオンハルトが明石の顔を見ると、彼女はこれまで見たことがないような美しい微笑みを浮かべていた。
「これからずっと、よろしくお願いします。レオンハルト様」
「ああ!!」
レオンハルトは元気よく返事をすると、明石を姫抱きにした。
明石を姫抱きにしたままレオンハルトは階段を上がる。
徐々に日の光が届き、二人は明るく照らされていく。
やっと暗いトンネルから抜け出せた気がした。
明石とレオンハルトは見つめ合うと、晴れやかな気持ちで刑務所から出た。
門の前には透輝が立っていて、二人が出てくるのを待っていた。
気に入らない男が勝利したが、幸せそうな明石を見ると小言は引っ込んでしまう。
透輝は恭しく頭を下げた。
「明石様、レオンハルト様、おめでとうございます」
「ありがとう、透輝さん」
嬉しそうに微笑む明石は美しい。
彼女はこれから猫族王家に嫁ぐ。
味方は一人でも多い方が良いだろう。透輝も玻璃と同様、明石に生涯仕えると決めていた。
「出口へ案内致します。此方へ」
「朱寧とオマールはどうなる?」
「お二方は時間をずらして出口へ案内します。まぁ、急かす必要も無いでしょうし」
「「??」」
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