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明石の章
明石の章㊻
しおりを挟むその頃、大神殿正門前にはレオンハルトを見送るために空、ユアン、イフラースが集まっていた。
ユアンは毎回恒例、分厚いご祝儀袋を差し出していた。
「レオンハルト王、少ないかもしれませんが、ご祝儀」
「金はいい」
レオンハルトは秒で断るとグイッとユアンに迫った。
間近に迫った猫族の王にユアンは「ひぇ!」と声を上げた。
「金の代わりにアスティズ病院と提携したい。猫の国に『福祉』を教えてくれ」
「は、はひぃいい!」
震える子鹿となったユアンは何度も頷いた。
空も思い出した。
最初に出会った時、レオンハルトは猫族に不足している『福祉』を充実させるためにアスティズ病院との提携を考えていると。
即答が嬉しかったレオンハルトは満足そうに笑い、ユアンの背中を叩いた。
「楽しみにしているぜ!お前も頑張れよ!」
「は、はぃいい!!」
知らない者が見たら今の光景は猫族の王によるカツアゲの現場だろう。
空とイフラースは震える子鹿となったユアンを咄嗟に支えた。
「夢だったんだよな。鳥の国の自由な流通と、鹿の国の手厚い福祉を国に取り入れる。それに黒狐族との和平交渉もある。はは、休む暇も無いな」
「・・・倒れないで下さいよ、レオンハルト王」
「明石さんが悲しみますよ」
空とイフラースがお土産にとプリンを渡すと、明石が出てきた。
レオンハルトは己の花嫁の美しさに目を奪われた。
今まで白い神官服を着た姿しか見ていなかった。
華やかな花嫁衣装を着る明石は何と美しいのか。レオンハルトは自分の頬を抓った。
「え、女神か・・・?俺は死んだのか??こんな美人地上に絶対いないだろ」
「レオンハルト様はちゃんと生きていますよ」
夫の賞賛に照れた明石は頬をピンクに染めていた。
女性に気遣えないポンコツ王は妻だけに気遣える愛妻家王に進化を遂げたのだろう。
空達に気付いた明石は丁寧に礼をしてくれた。
そしてイフラースを見ると、菓子のお礼の他に何かを囁いていた。
内容は聞こえなかったが、イフラースは強く頷いた。
「ささ、レオンハルト様、明石様、行きましょう」
迎えの車が到着すると、イーサンは笑顔で二人を促した。
レオンハルトは明石の手をとり、先に車に乗せる。
「空、ユアン、イフラース、じゃあな、また会おう!」
「「「はい!」」」
レオンハルトと明石を乗せた車が見えなくなるまで、三人は手を振り続けた。
彼は伏雅に目を付けられた空を心配し、猫族の見張りを残しておいてくれた。
優しいお兄様には感謝しかない。
見合いが終了次第、お礼を言いに猫の国へ行こう。
隣に彼女がいてくれれば良いが、それはこれからの努力次第だ。
「俺も頑張ります」
レオンハルトを見送る空の後ろ姿を、彼女はじっと屋上から見つめていた。
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