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明石の章
明石の章㊼
しおりを挟む猫の国王城では王の婚礼準備諸々で正に「猫の手も借りたい」状況に陥っていた。
イーサン、クラウスの連絡によりレオンハルト王が王妃を連れて帰る事が国中に広まった。
待ちに待った国王の結婚。
家臣だけではなく猫の国全領主、貴族は末席に至るまで王城に駆け付けた。
祝いの品で一つの部屋が埋まり、二つ目の部屋を開放したが贈り物の列は途切れず長くなる一方だ。
王へ祝いの品を贈るのは貴族だけではない。
レオンハルト王の母は庶民出身。
彼に親しみを感じる国民は多く、大地震では彼に救われた者もいる。
王を慕う者達は身分関係なく、心を込めて贈り物を用意した。
ディアゴも赤いドレスを着た朧月夜を伴って駆け付けた。
朧月夜も八人の美姫の一人。初めて見る者も多く、当然だが注目を浴びていた。
ディアゴに大切にされ、愛される喜びを知った朧月夜の美しさは更に磨きがかかっていた。
美しい妻を支えるようにディアゴは立っていた。
仲睦まじい大領主夫妻も王と新たな王妃へ沢山の贈り物を用意していた。
鳥の国にいるミハエルにも吉報は届いていた。
サイベリアン運輸社長としてではなく、友人の一人としてミハエルは沢山の贈り物を用意してトラックに詰め込んだ。葵も明石への贈り物を沢山購入した。
気が付いたら普通のトラックでは間に合わず、急遽引っ越し用の大型トラックに変更された。
やり過ぎたかなと思ったミハエルだが、減らすつもりはない。そのまま出発させた。
結婚式当日にサイベリアン運輸社長から届いた贈り物の山。
それを見た担当官のチーターは白目を剥いて倒れそうになったのだった。
舞台裏では様々な阿鼻叫喚はあれど、皆が今か今かと王の到着を待ち侘びていた。
車の中では緊張し、震える明石をレオンハルトが肩を寄せて抱きしめていた。
温もりに明石の震えは少しずつ治まっていった。
「安心してくれ。皆明石を歓迎している。何があっても必ず俺が守るから」
「はい。私も早く慣れて、レオンハルト様を支えたいです」
「無理はしなくていい。明石に負担はかけたくない」
間近で見るレオンハルトの真剣な顔はとても格好良くて、明石は少しだけ視線を逸らした。
「?何で逸らすんだ??」
「・・・その、素敵で・・・」
「ん?」
「レオンハルト様はお顔も格好いいのです」
レオンハルトは目をパチパチさせた。
・・・顔が良い??俺が??
空、ミハエルなど身近に分かりやすい美形がいた為か、レオンハルトは自分の顔を普通だと思っている。
実際、顔を褒められた事はない。
ただそれは男だらけの特殊部隊にいたからであって、レオンハルトの顔はとてもハンサムなのだ。
自覚のないハンサム。
気付いた空達は非常に残念がっていた。
「いやいや、それは無いだろ?空やミハエルみたいな顔が格好いいって言うんじゃないか?」
「その、実は・・・レオンハルト様はお顔も性格も、私のタイプなんです。だから最終候補で選びました・・・」
明石は恥ずかしそうに着物の裾で顔を隠した。
自分のタイプ。
だから最終候補で選んだ。
レオンハルトは顔を真っ赤にしながら、明石の言葉を何度も頭の中で繰り返し再生した。
「そ、そうだったんだな。凄く嬉しいぞ」
「はい・・・」
「でもな、子どもが出来たら俺よりも明石に似た方が良いと思う。確実に美形だ。明石がこの世で一番綺麗だ!」
子ども。
この世で一番綺麗。
明石は茹で蛸のように真っ赤になり、緊張が解れても顔を隠したままだった。
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