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浮舟の章
浮舟の章㉗
しおりを挟む大神殿門前。
連絡を貰った空とユアンはイフラースにお祝いと、別れの挨拶をしていた。
「イフラースさん、おめでとうございます!すっごく嬉しいです」
「良かったですねイフラース殿。浮舟殿は本当に見る目がある」
親友達からの祝福がこれほど嬉しいとは思わなかった。イフラースは自然と笑顔を浮かべていた。
「空くんとユアンさんのお陰です。ありがとうございました」
「何言っているんですか。イフラース殿が浮舟殿の心に真正面から向き合ったからこそ、今があるんですよ。あ、これご祝儀です」
毎回恒例、ユアンのご祝儀だ。
分厚いご祝儀袋の存在感は半端ない。イフラースは恐縮しながら受け取った。
「ユアンさんも頑張って下さい。きっと上手くいきます」
「強敵揃いですが、頑張ります」
「空くんも。私は空くんと友達になれて良かったです。あの日声をかけて貰って、本当に嬉しかった。空くんの結婚が決まったらすぐに駆け付けますから」
空とイフラースの友情は二次審査の待合室。
ブルブル震えるレオパに声をかけたのが始まりだ。
「俺もイフラースさんが大好きです!絶対遊びに行きます。お見合いに失敗して一人で行く可能性もありますけど、気にしないで下さいね」
空はニコッと笑った。
逆に慌てたのはイフラースとユアンだ。
「そ、空くんは大丈夫ですよ!イケメンですし!」
「そうですよ!空くんは格好いい!」
ユアンも同意するが、「イフラースのほうが綺麗よ」と低い女性の声が割って入った。
「浮舟さん!」
浮舟の後には灰簾も控えていた。
灰簾ともここでお別れだ。彼は最後まで付いていこうとしたが、浮舟が断った。
『貴方の人生を私は抱えきれない』
冷たいとは思わなかった。
これまで一人で過ごし、孤独に慣れていた浮舟は最初こそ灰簾の存在を受け入れられなかった。
灰簾は敏い。
浮舟が許容できる範囲で任務をこなし、徐々に主との距離を詰めていった。
一定の距離を保ちながらもしっかりと浮舟を見守る。
いつしか浮舟もそんな灰簾を信頼するようになっていった。
自分に生涯尽くすなど勿体ない。誰よりも有能な灰簾は天界でその能力を発揮すべきだ。
淡々と告げられた言葉だが、浮舟なりの感謝が込められていた。
それでもう、充分だ。
「お友達に人型を見せていないの?」
空とユアンは驚いていた。イフラースは常に「レオパの方が楽」と言っていたから。
「いや~~、その、何というか・・・」
ごにょごにょ言い訳するイフラースの顔を浮舟は覗き込んだ。
「まぁ、私だけ知っていれば良いか」
イフラースの頬がポッとピンクに染まった。
モジモジするレオパの何と愛らしいことか。空とユアンは二人から出る甘い空気にほっこりした。
ユアンは正直、不安の方が大きかった。
今の浮舟の顔を見て不安は払拭された。彼女の顔はこの短期間で柔らかくなっていた。
イフラースの横に立つとそれが顕著だ。
彼女は気付いているだろうか?冷たく刺々しかった瞳は夫を見るときだけは優しく凪いでいる。
・・・もう、心配はいらない。二人は大丈夫だ。
「お幸せに」
ユアンはイフラースと浮舟を心から祝福した。
同じように感じた空も二人を祝福し、イフラースと浮舟は旅立った。
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