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花散里の章
花散里の章⑫
しおりを挟む「彼女達の中に記憶持ちはいると思いますか?」
空はふと疑問に思った。
記憶持ちは黒狐族では珍しくない。
ならば、八人の美姫で一人か二人存在してもおかしくはなかった。
「生まれる確立が高いのなら、一人はいるでしょう。誰かまでは分かりませんが」
空は若紫の顔が浮かんだ。
虐殺された記憶なんて忘れた方がマシだ。
若紫が前世で味わった恐怖を覚えていて、誰にも話せず苦しんでいるなら。
空は年若く人生経験も少ないが、寄り添いたいと思った。
かつて朧月夜に言われた言葉を思い出した。
『尽くしたいタイプでしょう?』
当たっている。
八人の美姫達と交流して自然と芽生えた感情だ。
好いた女性に尽くしたいし、守りたい。
未熟な自分では出来る範囲が限られているだろうが、全力を尽くす。
自分だけは絶対に離れないと約束しよう。
何があっても裏切ったりしない。
翌朝、目覚めたユアンは黒曜に呼び出され慌てて待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所は大神殿一階審判室。
ライバルのウィリアム、ポールも同時に到着した。三人はお互い顔を合わせて黙り込んだ。
・・・これは一体どういう状況だ??
三人が集合したと同時に、扉が開いて黒曜が出てきた。
「突然お呼び立てして申し訳ありません。予告無しで申し訳ございませんが、これより最終審査を開始致します」
最終審査。
その言葉にユアンはギョッとした。
これまでの美姫達と違い、何の予告も情報もない。まるで騙し討ちではないか!
心の準備など出来ている筈がない。
それはウィリアムとポールも同じだろう。
チラッと二人を見ると、ウィリアムは機嫌悪そうに眉間に皺を寄せていた。
ポールに至っては気合いの叫び声を上げていた。
嗚呼、グリーンイグアナの強メンタルが羨ましい。ユアンの胃はキリキリと痛み始めていた。
「それでは中にお入り下さいませ。花散里様がお待ちです」
ユアンが審判室に足を踏み入れると、そこはかつての審判室ではなかった。
まず眩しい。前方に三つあった机の並びは変わっていないが、奥に巨大なスクリーンが設置されている。
床は無駄に明るく光り、蜂の巣のように六角形の割れ目が入っている。
これは一体何なのか??
唖然としていると、花散里が入ってきた。
ただ、花散里一人ではない。彼女の後に続いて女性が二人入ってきた。
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