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三次審査編
三次審査①
しおりを挟む「お願いします!結婚してください!」
土下座するレオパを空はミハエルと共に抱き起こそうと必死になっていた。男二人掛かりでもイフラースの体を持ち上げられない。長身のレオパは想像以上に重くて力が強かった。
「どうかこの通りです!私を!このイフラースを選んでください!何でもします!!」
「ちょっ・・・!!イフラース!!ヤバいって!!相手を見ろよ!引いちゃってんじゃん!!」
「イフラースさん~~!!これは違います!!違う意味で印象に残ってしまいます!」
「何でも言うことを聞きます!!お願いします!!」
嗚呼、何故こうなったのか。空は泣きたくなった。
一時間前、それぞれの最初の見合い相手が判明した。
運命だとすっかり舞い上がったイフラースは浮舟、ミハエルは朝顔、ユアンは朧月夜、空は若紫だ。
「これは気を引き締めないとね」
「?君のタイプだろ?気の強そうな美人じゃないか」
ユアンが不思議そうに首を傾げる。
「彼女は違うよ。ありゃどう見ても誇り高い騎士タイプだ。「自分より弱い男なんてゴミ以下」な感じがヒシヒシ伝わってきただろ。俺が好きな『我が儘なお嬢様』とは真逆だよ」
下手をすると此方のプライドがへし折られかねない。ミハエルの言葉に空とユアンは妙に納得した。
「私はちゃんとお話しできるか不安ですよ・・・」
「朧月夜ちゃんか。見事なセクシー系美女だったな」
「圧倒されて真面に話が出来る気がしません・・・」
ユアンは痛みを堪えるように胃を押さえた。不安が増すので止めて欲しい。何故なら空は若紫の次に朧月夜とお見合いをするからだ。
空のお見合いの順番は若紫→朧月夜→花散里→明石→玉鬘→朝顔→浮舟→葵だ。
三次審査は十日間掛けて、八人の美姫達と限られた時間だがお見合いをする。彼女達の負担は当然考慮されるので休憩時間が何度か挟まれる。それに伴い候補者達の待機時間は長くなる。実際、空と若紫の見合いは三時間後に開始される。
「俺も三時間後なんだよね。神殿内には待機室の他に、カフェスペースと食堂もあるから一旦そこに行こうか」
「「良いですね」」
「は、はい」
ミハエルの提案で空、イフラース、ユアンはカフェスペースに移動した。四人の他にも移動している者がそこそこいて、カフェスペースは混雑していた。聞こえてくる会話の内容はやはり八人の美女。誰狙いか既に決め、宣言している者さえいた。
「俺は絶対明石ちゃん!巨乳癒やし系美女こそ至高!」
「いやいや朧月夜ちゃんだろ。ああいうタイプが意外と男を立ててくれるんだよ」
「美しく才能ある浮舟ちゃんを崇め、創作を支援したい」
「朝顔ちゃん一択。誇り高き女騎士、最高じゃないか」
「知的で可憐な花散里女史と夜明けまで語り合いたい」
「葵ちゃんに踏まれたいわ―!」
「玉鬘ちゃんヤバすぎないか・・・?あんなに綺麗な女の子、見たことない」
「気高き王女、若紫様に心身共にお仕えしたい!」
浮舟推しの声にイフラースは慌て、葵推しのミハエルはライバルの顔を見て何処の者かチェックしている様だ。四人は空いていた隅っこのテーブルに座り、無料で提供されるコーヒーを飲んで一息ついた。
「この中じゃイフラースが一番か」
「は、はい」
イフラースの手は震えていた。自信は無いが、一目惚れした浮舟を何とか振り向かせたい。意を決してイフラースは顔を上げた。
「ミハエルさんに、お願いがあります!」
「え、どうしたの急に」
「わ、私は何としても浮舟さんを振り向かせたいのです」
その姿を見たとき、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。彫りの深い、野性味のある美しさはイフラースの心を掴んで離さなかった。もう彼女しか見えなくなる程に。
「ミハエルさんは社交的で、私よりも遙かに女性の心が分かると思うんです。わ、私は何としても最終候補の三人に入りたいです・・・。どうか、どうか・・・女性を振り向かせる秘訣を教えて頂けないでしょうか」
イフラースの真剣な思いに空は胸を打たれた。
自信がなさそうなレオパは変わろうとしている。足はやっぱり震えているが、真剣さは伝わった。自分も何か協力したい。それはミハエルとユアンも一緒だった。
「秘訣とまではいかないけど、何を心掛けているかは教えるよ!」
「私もお手伝いします!イフラース殿、頑張りましょう!」
「俺もイフラースさんの力になりたいです」
「皆さん・・・!!」
イフラースは感動して泣いた。
四人で話し合った作戦を胸に見合いに挑んだイフラースだが、現在。黄色のレオパは土下座していた。あの話し合いは何だったのか。作戦は取り返しが付かないほど滅茶苦茶になっていた。
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