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三次審査編
三次審査③
しおりを挟む一時間後、イフラースが中央展示室から出て来た。
イフラースは空とミハエルの元に駆け寄り、二人纏めてギュッと抱きしめた。
「うぅ~~~・・・!!本当に、ありがとう。ありがとうございます!」
「イフラースさん」
「上手く行ったようで何よりだ」
イフラースはポロポロ涙をこぼしていた。空はそっとハンカチを差し出すと、イフラースは遠慮がちに受け取って涙を拭いた。
「指名を使わなくてもあと二回会えるんだ。イフラース、頑張れよ」
「はい。ここからは、自力で頑張ります。本当に何とお礼を言ったら良いのか・・・」
「友達じゃないですか。お礼なんて要らないです」
「で、でも・・・」
「そうだな、だったら飯でも奢って貰うか」
「ミハエルさん・・・」
空は不満そうな視線を送るが、ミハエルは気にせず笑った。
「空、この場合は素直に礼を受け取った方が良いぞ。友達だからこそ、イフラースに引け目は残したくない」
イフラースからすれば、貴重なお見合い枠の一つを二人から奪った形になる。
空とミハエルは気にしなくても、もし二人が見合いに失敗したらイフラースは一生後悔するだろう。だからこそ、枠の譲渡は『謝礼と引き換え』という形を取った方が後腐れなくて済む。ミハエルの思いに気付いた空は俯いた。
自分の考えの甘さを痛感せざるを得なかった。
彼らに比べると、矢張り自分はまだまだ子どもだ。
「・・・美味しいお店を、ミハエルさんなら沢山知っていそうですね」
「知ってる知ってる。任せとけ」
ミハエルは空の頭に手を置き優しく撫でる。自分はまだ子どもだが、導いてくれる大人が近くにいるのは幸せだ。空は照れくさそうに笑った。食事で決着は付いたが、イフラースは未だに申し訳なさそうだ。
「ほ、本当に良いんですか?」
「良いって。でも俺が連れて行く店はお高めだよ?」
「か、覚悟しておきます」
言葉に対して、表情は嬉しそうだ。ユラユラ揺れるイフラースの尻尾を見て空は笑った。
美術館フロアから出た三人はカフェスペースに戻った。ユアンは既に戻っていて、三人の姿を確認すると手を振った。
「じゃあ、私はこれで」
ユアンの向かいに座っていた鹿族の青年は席を立った。筋肉質な体付きをした青年は、背が高く精悍な顔つきをした男前。眼鏡がよく似合い、如何にも出来るビジネスマン風だ。
「ああ。また話をしよう」
「お互い良い結果が得られるよう、最善を尽くしましょう」
鹿族の青年は三人に会釈し、そのまま去って行った。
「ユアン、彼は?」
「彼はオークションの会社を経営しているルークです。彼自身も優秀なバイヤーなんですよ」
「へぇ・・・」
何となく、イフラースはルークの後ろ姿を見た。
もしかすると予感があったのかも知れない。彼は最終審査で再びイフラースの前に現れる。
浮舟を巡る最大の恋敵として顔を合わせるとは、この時はまだ誰も予想できなかった。
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