『カフェ・カメリアの恋模様』

ユウ6109

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カメリアが咲く場所:私が見た、パパとママの物語

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私にとって、カフェ・カメリアは特別な場所だ。朝、パパとママと一緒に、カメリアの香りがするこのカフェで過ごす時間が、一番好き。ママが淹れてくれるコーヒーのいい匂いと、パパが作るチョコレートケーキの甘い匂い。二つの匂いが混ざり合って、私を優しい気持ちにさせてくれる。
ママは、いつも白いエプロンをつけている。カフェのロゴと同じ、カメリアの花が刺繍された、可愛らしいエプロンだ。ママは、おばあちゃんから受け継いだという、大きなコーヒーミルをいつも大事にしている。
「このミルはね、おばあちゃんとの思い出が詰まってるのよ」
ママは、私にそう言って、ミルを優しく撫でる。その手は、いつも温かかった。
パパは、真っ白なコックコートを着ている。パパは、私に、いつも素敵なスイーツを作ってくれる。特に、カメリアの花の形をしたチョコレートケーキは、私の大好物だ。
「パパ、新しいケーキ、できた?」
私がそう尋ねると、パパは、いつもとびっきりの笑顔で、私に答えてくれる。
「うん、できたよ。カメリアの花の、チョコレートケーキ」
私は、パパの言葉に、嬉しそうに飛び跳ねた。パパとママは、いつも楽しそうだ。時々、二人が真剣な顔で、新しいメニューについて話しているのを見かける。パパが「このコーヒーには、このケーキが合うんじゃないかな」と言うと、ママが「それなら、このコーヒー豆に変えてみましょうか」と答える。そのやり取りは、まるで音楽のようだ。
私が一番好きなのは、夕方、カフェの営業が終わった後の時間。パパが、私を膝に乗せて、昔の物語を話してくれる。
「むかしむかし、このカフェに、二人の魔法使いがいました。一人は、美味しいコーヒーを淹れる魔法使い。もう一人は、美味しいスイーツを作る魔法使い。二人は、最初はケンカばかりしていたけれど、だんだんと、お互いのことが好きになっていきました」
パパは、私にそう言って、ママと顔を見合わせ、二人で笑う。その笑顔は、私にとって、最高の宝物だ。
ある日、私は、パパとママが、カフェの裏庭で、カメリアの花を植えているのを見かけた。
「ねぇ、パパ。なんで、こんなにたくさんのカメリアの花を植えるの?」
私がそう尋ねると、パパは、優しく答えてくれた。
「この花はね、ママとパパの、大切な思い出の花なんだ」
パパは、ママと出会った日のこと、二人が一緒に、カフェを救った日のこと、そして、この花に込められた「誇り」と「理想の愛」という花言葉のことを話してくれた。
私には、まだ難しい話だけど、パパとママが、このカフェと、カメリアの花を、とても大切に思っていることは分かった。
そして、私も、このカフェが、パパとママにとって、とても大切な場所だということを知った。
私は、このカフェが大好きだ。パパとママが、いつも笑顔でいられる、この場所が。
大きくなったら
私は、大きくなったら、このカフェを、パパとママから受け継ぎたい。
そして、今度は、私が、美味しいコーヒーを淹れる魔法使いになって、パパが作ったスイーツと一緒に、たくさんの人を笑顔にしたい。
「ママ、私、大きくなったら、ママみたいに、美味しいコーヒーを淹れる人になりたい!」
私がそう言うと、ママは、私の頭を優しく撫でてくれた。
「ありがとう。でも、それよりも、大切なことがあるのよ」
「大切なこと?」
「うん。コーヒーを淹れるとき、コーヒーを飲む人の笑顔を想像しながら、心を込めて淹れること。それが、一番大切なことなの」
ママの言葉に、私は、胸が温かくなるのを感じた。
このカフェは、私にとって、ただのカフェではない。パパとママが、愛し合った場所。そして、私が、たくさんの愛に包まれて育った、大切な場所。
これからも、ずっと、カメリアの花が咲き誇る、このカフェで、私は、パパとママの物語を、見守っていく。
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