二匹の冒険

ユウ6109

文字の大きさ
1 / 1

二匹の冒険

しおりを挟む



二匹の冒険


大きな体をした、茶色い毛並みのラブラドールレトリバー、レオン。彼は、飼い主の男の子、ゆうたと毎日公園で遊ぶのが日課だった。ボールを追いかけ、全力で走る。それがレオンの喜びだった。

一方、小さな体で白い毛のポメラニアン、マロン。彼女は、レオンとは違い、おっとりとした性格だった。散歩のときは、ちょこちょことゆうたのお母さんの足元を歩く。レオンが走るたびに、小さな声で「クン」と鳴いて、心配そうにレオンを見守る。

レオンとマロンは、同じ家で暮らす犬同士。だが、性格も遊び方も全く違っていた。レオンがボールをくわえてマロンに遊びを誘っても、マロンは首を傾げるばかり。レオンは、マロンと遊ぶことができず、少し寂しい気持ちを抱えていた。

ある日の夕方、ゆうたがいつものようにボールを投げた。レオンは勢いよくボールを追いかける。しかし、その日はいつもと違った。ボールはフェンスを越え、森の奥へと転がっていってしまったのだ。

「ああ、ボールが!」

ゆうたが叫ぶ。レオンはボールを取りに行こうとするが、ゆうたが「危ないからダメだ」と止めた。レオンはフェンスの前で、ボールが消えた方向を見つめる。大切なボールが、遠くへ行ってしまった。レオンは、しょんぼりとうなだれた。

その夜、レオンは夢を見た。ボールが森の奥で、寂しそうに転がっている夢だ。どうしてもボールを取り戻したかったレオンは、夜中にこっそりと家を出ることを決意する。

レオンが玄関のドアを鼻で開けようとしていると、後ろから小さな足音が聞こえた。マロンだ。

「クン…」

マロンはレオンの足元に体をすり寄せ、不安そうに鳴いた。

「マロン、心配するな。ボールを取ってくるだけだ」

レオンはマロンに話しかけるが、マロンは首を振った。レオンが一人で行くのが心配なのだろう。

「わかったよ。じゃあ、一緒に行こう」

レオンはマロンを誘った。マロンは嬉しそうに尻尾を振った。

二匹は、夜の道を歩き始めた。レオンの大きな足と、マロンの小さな足が、交互に音を立てる。森の中は、昼間とは違う雰囲気だった。風が吹くたびに、木々がザワザワと音を立てる。マロンは怖くなって、レオンの体に体を押し付けた。

「大丈夫だ。俺が一緒だから」

レオンは優しくマロンに話しかける。その声に、マロンは少し安心したようだった。

しばらく歩くと、ボールが見えてきた。木の根元で、ひっそりと転がっている。レオンは嬉しくなって、駆け寄ろうとした。その時、マロンが突然立ち止まり、低い声で「ウー…」と唸った。

「どうした、マロン?」

レオンが振り返ると、マロンは草むらをじっと見つめていた。レオンも草むらに目を凝らす。すると、草むらの奥で何かがうごめいていた。それは、大きなイノシシだった。

「クゥン…」

マロンは怯え、レオンの後ろに隠れた。レオンも、大きなイノシシを前にして、少し足がすくむ。だが、大切なボールを諦めるわけにはいかない。それに、マロンを守らなければ。

レオンは勇気を振り絞り、イノシシに向かって吠えた。だが、イノシシは怯えるどころか、逆にレオンに向かって突進してきた。

「ワンワン!」

レオンは必死に吠え、イノシシの気を引く。その隙に、マロンがイノシシの足元に素早く走り込み、「キャイ!」と鳴いた。そのけたたましい鳴き声に、イノシシは驚き、一瞬動きが止まった。

その隙に、レオンはボールをくわえ、マロンと一緒に全速力で走り出した。イノシシは追いかけてきたが、二匹は無我夢中で走り続け、なんとか逃げ切ることができた。

ボールを取り戻し、二人で家路につく。夜空には満月が輝き、二匹の足元を照らしていた。

家に着くと、レオンは疲れてグッタリしていた。だが、ボールは無事に戻ってきた。レオンは、くわえたボールをマロンの前に置いた。マロンは、誇らしげなレオンの顔を見て、優しく尻尾を振った。

次の日、公園でボール遊びをするレオンの横に、マロンがちょこんと座っていた。レオンがボールを追いかけるたびに、マロンは「クン!」と一声鳴いて、レオンを応援する。レオンは、マロンの応援を聞くたびに、嬉しそうに走り回った。

レオンとマロンは、冒険を通して、特別な絆で結ばれたのだ。性格も遊び方も違っても、二匹は大切な家族。これからも、二匹の冒険は続いていく。

(おわり)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

処理中です...