あるクズ人間の奇譚

ひいらぎ

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高校生編(通信制高校編その五)

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 お祝いとして家族と食事をしているときに、彼女からある相談を受けることになる。

 いつも僕と香織さんと悟と萌の4人が同じ教室で勉強していることが多かった。そこは自習室のような場所で、静かに勉強するための部屋という決まりだった。しかし、僕や悟はよく話をしたりしていたし、それ以上に悟と萌は私語が多くよく揉めたりしていた。それが嫌だったらしい。

 僕は家族に怒られながらも、相談に乗った。怒られるのも当然だ。せっかく祝ってくれているのだから。家族にも彼女にもできるだけ気を遣って、どちらも嫌な気分にならないように立ち振る舞っていた。

 先生にも相談したらしいのだが、何も変わっていなければこれから学校に通うのはやめるとのことだった。とりあえず、僕はそのことを悟に相談し、それを理解してくれた悟はこれからできるだけ注意するとのことだった。僕と同じで、少し騒がしい自覚はあったらしい。

 あんなことがあった日に、こんな相談をするのはほんとうに申し訳なかった。

 香織さんいわく、駅の隣の施設の中に勉強できるスペースがあるらしく、月曜日以外はやっているので授業がない日はそこに通って勉強すると言った。相談して僕もときたまそうすることにした。

 受験の次の日、僕は家族とさっそく一人暮らしの物件を探した。そして、意外にもあっさりと住む場所は決まった。駅と学校から徒歩20分ほどの場所で、家賃もちょうどよかった。

 物件を選ぶにおいて幸いだったのが、僕の距離感覚が異常だったことだった。毎日駅まで5kmの距離を自転車で通っていたせいでかなり慣れていた。1kmだと思っていた距離が実際は3kmほどあったときもあった。これは田舎あるあるではなかろうか。だからこそ、徒歩20分と聞いてとても近いように感じた。

 合格発表から数日経った。そんななか学校の帰り際に、家に帰りたくないという相談を悟から受けた。

 二人で駅の構内を歩き回りながら、受験の話をひたすらにした。解散になって帰ることになったのだが、彼はまだ帰らないとのことだった。僕は一度電車に乗り込んだものの、乗り遅れたと嘘をついて電車を降りた。そしてまた当てもなく歩き回りながら、二人で受験の話をした。

 そして彼を僕の家に泊めるという話になった。彼は終始申し訳なさそうにしていた。友達を家に呼んで泊めたのは彼が初めてだった。僕の家はかなり散らかっていたからだ。次の日には彼は落ち着いたようで、なんとか家に帰ることができたようだった。受験というものは人をこんなにも悩ませるものだったのだ。

 いつものように学校に通っていたある日。つい彼女に厳しい言葉をかけてしまった。

 彼女は僕に色々なことを話してくれていた。人見知りなのにも関わらず他の人に言えないようなことをたくさん僕に話してくれた。それでも未だに彼女は塞ぎ込んでいるところもあった。

 そのときは勉強に集中できず、何をどうすればいいのか悩んでいてLINEで相談してきたのだ。しかし、それを僕だけでなく先生や他の人に話さず、誰かが何とかしてくれるものじゃないと塞ぎ込んでいた。そんな彼女に、僕はそのままではだめだと辛い言葉をかけてしまった。

 しかし、そのあとハッとして彼女の異変に気づき、教室にいると言った彼女を探し回った。

 とある教室で彼女は一人で倒れこんでいた。いちばん彼女に寄り添わなければならない僕が、いちばん厳しい言葉をかけてしまった。そのことに強く後悔した。

 ハンカチを渡し、謝りながら優しく背中を撫でてあげた。僕と少し話したあと彼女は落ち付きを取り戻して、すっきりした様子だった。

 そのあと僕らはいっしょに勉強した。僕は合格したものの、特待生としての合格を目指し勉強を続けるつもりだった。これからも、もし辛いときがあったらいっしょに勉強しようと2人で決めた。

 そして迎えたクリスマスイブのことだ。前々から予定していたデートの日だった。

 最初は映画を見に行った。彼女がアナ雪2を見に行きたいとのことで、そもそもアナ雪を見たことがなかった僕は、彼女からアナ雪のDVDを借りて予習をしていた。内容はところどころしか覚えていなかったが、あの映画館の雰囲気はやはり圧倒されるものがあった。

 その後いっしょにお昼を食べ、買い物を楽しんだ。正直何をして具体的に何が楽しかったか全く覚えていない。彼女が途中で本屋で本を読みはじめてしまって、これは果たしてデートなのか?と思ったとき以外は。

 しかし、楽しかった。信じられないほど。時間があっという間に過ぎていった。晩ご飯を食べる前に解散する予定だったため、ほんとうにあっという間だったのだ。

 帰る前にお互いのクリスマスプレゼントとして、お揃いの手袋を選んで買った。

 そして帰り際に駅前の一目につかないところで、僕らは初めてハグをした。ものすごく照れている彼女の姿を見るのは、幸せ以外の何ものでもなかった。

 そんな今までの人生で一番幸せなクリスマスイブを過ごした。僕らの絆は一層深まっていた。

 毎年大晦日にはお母さんの実家に帰るという習慣があった。好きなテレビも見れず、遅くとも10時には就寝する。毎年、布団の中で一人で年越ししていた。

 案の定、今年もそうなったのだが、大晦日にも香織さんは駅の近くのカフェで勉強しているとのことだった。

 僕はサプライズで彼女に会いに行った。お母さんの実家に向かう途中だったが、駅で下ろしてもらい、後で電車で向かうことにした。

 彼女はものすごく喜んでくれていっしょにゆっくりした時間を過ごした。勉強をがんばっていた彼女を全力で励ました。

 そんなこんなで色々あった一年が終わった。闇期が終わり、初めての彼女と出会い、ひとまず受験が終わった。振り返れば長いようで短い一年だった。

 そのときは幸せばかり感じていた。全てがいい方向に向かっていっている気がしたのだ。受験の辛さから少しでも解放され、肩の荷が降りた気がしたのだ。
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