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第1章『運命の出会い』

第2話 拝領

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 ……少女はまばたきひとつせず、俺を見詰めている。 

 黒目勝ちな瞳の周辺に、わずかにのぞく白眼はくがんは澄み切って、あおく見えた。


貴様きさま何奴なにやつ。 ……所属と階級をもうせ」

 …と、少女は、アニメみたいな可愛らしい声で俺にいた。 ……『ショゾク』と『カイキュウ』?

「俺は『オジカ事務用品』所属の『たいら 盆人はちひと』だ。 階級?は…『平社員ひらしゃいん』だ」

 すると、少女は、「あたしは『衛鬼兵団えいきへいだん 司令官??????大将』だ」

 名前は聞き取れなかったが、なんとか兵団の司令官?らしい。

「その司令官が、何の用?」

 少女は無言で、俺の胸に付着したバッヂを指差した。

「あ、ごめん! これ、君のか! 返すよ。 ただ、取れないんだ」 ……また力を込めて引っ張る…が取れない。

「それは、貴様のだ。 持っておれ」

 …拾い物の持ち主があらわれて、そいつが『持ってろ』……って言ってるんだからネコババにはならないだろう。 ……ただ、がし方は是非ともおかせ願いたい。

 と……!

 少女が視界から消えた。 辺りを見回すが、何処どこにも居ない。

 ……ま、良いか……。 腹も減って来たし、帰ろ……。 

 ……と思った瞬間、また少女が現れた。 

 ちょっと腹が立ち「何だよ! 出たり消えたり……」 と言うと、少女が初めて表情をゆるめた。

 可愛らしい微笑みを浮かべ、一言ひとこと重畳ちょうじょう」とつぶやいた。

「チョウジョウ……?」……と聴き返そうとした時、全身に激痛が走った!
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