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第2章『願望』

第5話 肉迫

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 う~ん! さっぱりした! ……無精ぶしょうひげも剃って、爽快そのものだ。

 カーテンをくぐり、居間に入る。

 ユイが俺を見て、こちらに向き直り「ほぉ、男前になったではないか」 ……と、お世辞を言った。

 せやい! 照れるじゃん。 

 ……って、おい! 頼むから、ボタン閉めろ! ……ってか、更に付け加えさせて貰うが、その前に、下着くらいけろ!

 明後日あさっての方向を見ながら、俺が貸してやったYシャツのボタンを閉めつつ……

 「ところで、君は何で『友結ゆい』を知ってたんだ?」 ……といた。

 「貴様が『司令徽章きしょう』を拾得したと同時に、情報参謀に命じて、貴様のすべてを調べげた。 万が一、我々とあいたいする思想があらば、まずい……からな」

 なるほど。 ……親しい友人にすら話した事が無い友結ゆいの事まで調べ上げるとは…… こいつら、本当にすげぇな。

 「さて、我が衛鬼兵団えいきへいだんの全貌を知り得たであろう。 改めて問う。 何か願望はあるか?」

 俺は少し考えて……

「……今、切実な願望は、『君の服を買いたい』……って事だよ。 そんな格好かっこうで動き回られたら気が散って仕方ない!」 と言った。

 ほんと、マジでお願いしたい。

 ユイは、目を丸くして俺を見ていたが、一呼吸おいて…… 可愛らしい声で笑い出した。

 あまりにも楽しそうにコロコロと笑うので、何だかこっちもられて笑ってしまった。

「心得た。」

 ……笑い終えたユイが真顔になり、真剣な眼差しを俺に向けた。

 ……俺が息を呑んで固まっていると、ユイはにじり、俺のデリケートな対人距離パーソナル・スペースを踏み越えて急接近して来た! そして、俺の両腕を掴み

「動く……でない……」

ささやいて……顔を近付ける……。

 な、なに? やだぁ! キ、キス? はじめてのチュウ?

 ユイが俺の胸にある『司令徽章』に何かをつぶやくと同時に、まばゆい光が目の前に広がった。

 くらんでいた視界が戻ると……ユイが秋めいたよそおいを着こなしていた。 ざっくりした栗色のブルゾンと亜麻色のパンツ。 加えてベージュのベレー帽。 ゆるふわ感あふれるコーデだ。 初めて会った時より、遥かに大人びて見える。 俺は、もう一度、息を呑んだ。

「これなら、如何いかに?」……と言って、俺の前でクルリと回り、ポーズを決めた。 

 完璧かんっぺきだ。 完璧な美少女だ。 ……口調さえ普通であれば……。
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