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第4章『駐留』

第6話 消滅

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 「 …クローン!?」俺は、驚きの声を上げた。

 「左様さようでございます。 諜報の鉄則は、ちりひとつ残さず敵のデータを根刮ねこそぎ奪取すること。 襲撃などしたら軍法会議ものです」と通信参謀。

 続けてユイが…「クローンの良いところは、単一細胞のみでの培養が可能な事だ。 これだけの枚数データ、複写ではかなりの質量になるが、クローンなら、虫でも運び出せるからな」と付け加えた。
 

 …なるほどね~。…それにしても、あれだけの枚数、全ての短冊のクローンを造るとは! しかも、『紙のクローン』って…。

 「さあ、検索せい」

 …え? 目で探すの?

 「当たり前だ。 あたし達をかぶるな」

 …はい。すんません。

 通信参謀が「総司令閣下、本来クローンは有機物から作りますが、今回は無機物…。あまり長い時間は細胞結合を維持できませぬ。 …お早めに…」と言い残して消えた。


 衛鬼兵団えいきへいだん会議室に、手の空いている兵士達が集められた。

 正面の大型モニターには『鷹音 野華』と『ようおん ひろか』 という文字が表示されている。

 「司令官は、貴様だ。 指揮してみよ」…ユイに促され、初めての号令をかける事になった。

 「コホン、 え~、み、な、の足元にぃ~」しまった! 『な』の時、声が裏返っちゃった。 「足元にある『短冊』に、この文字があったら、すぐに報告せよ!」 

 「なお、その『タンザク』は、時間が経つと消滅する。総員、迅速に検索せよ」とユイがつけ加えてくれた。

 衛鬼兵えいきへいたちが、モニターと短冊を懸命に見較べている。 俺たちも、必死に探すが、時間だけが過ぎてゆく…。

 「閣下ぁ!」兵士の一人が立ち上がった!

 あったか!!

 …見ると、『野華ひろかさんみたいに、綺麗になれますように』 と書かれていた。 残念! ニアピン賞!


 「おい、兄! これは如何|《いか》に!」

 あったか!

 間違いない! 鷹音ようおんさんの署名だ!

 ユイ! でかした!

 …願いを目にした刹那、手の中で短冊が消滅した。他の短冊も、全て消え去った。

 …俺はその場に立ち尽くし、一筋の涙をこぼした…。

 ユイが肩を落として近づき「すまん…。間に合わなかったか…。」

 俺は、首を横に振り、今でも目に残っている文字を口にした…。

『すてきな かれしができますように ようおん ひろか』
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