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第7章『本土決戦』
第6話 『拳《けん》』
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…夢見心地のまま、電車に乗った。
車内から、駅前駐車場が見えて、鷹音さんとお父さんが両手を振ってくれていた。
…別れ際に鷹音さんは「父の、人を見る目は確かです。 その父が、平さんの『誠実さ』を見抜いたんですから、間違いありません」…と耳打ちしてくれた…。
「腑に落ちんようだな…」ユイが口を開いた。
「俺は、人が言う程《ほど》、バカ真面目じゃないし、言うて自分が可愛いし、司令官の務めだって、ちゃんと果たして無い。 そんな俺が『誠実』なんて、ちゃんちゃらおかしくないか?」…と言うと…
「一つ聴くが、兄は我が衛鬼兵団を『悪用』した事があるか?」と聴かれた。
ユイが、『司令徽章』に何かを呟いた。
「通信参謀に、兄と出会ってからの我が兵団の戦歴を『すまーとふぉん』に送らせた。視てみよ。」
『浮遊玩具帰送戦』
『本次元潜伏用衣服転送』
『航時ニヨル学区変更戦』
『短冊情報複写細胞培養及ビ解読戦』
『地球外殻反転法ヲ用イタ対台風戦』
…懐かしい文字が並んでいる。
「なっ? 何れも『悪事』ではなかろう。」
…ま、まあ、狭義ではそういう事になるかも…な。
最寄り駅に着いた。
時間的に、かなり遅くなったので、人通りは無い。 …まるで世界が二人きりになってしまったような錯覚を覚えながらアパートまで並んで歩く。
ユイが続けた。
「共に『八瀬の国』に行った時、『もし細河が我らと連むのであらば、細河氏を滅ぼすつもりだった』…と言ったのを覚えているか?」
…確かに、初めて聴いた時は、背筋が寒くなった。
ユイは、「我らは誇り高き衛鬼兵団だ。 断じて悪事には手を染めぬ。 兄が、我らを顎で使ったり、私腹を肥やすような計画を立てようものなら、我らは、兄の記憶を消して、別の者を探したであろう …それに…」
…と言った後、立ち止まった。
俺が不思議に思っていると…ユイが…
…俺に抱きついた。
…しばらく、時がそのまま流れた。 ユイの鼓動が早くなるのを感じる。
ユイは、出会った頃と全く変わらない、澄み切った瞳で、俺を見詰めた。
…その瞳は、一切の澱みが無い、純粋な涙を湛えている。
潤んだ瞳は街灯を映し、それはまるで穏やかな海の夜景のように、優しく輝いていた。
そして、俺の肩に手を回し、つま先立ちになり…その透き通る様な眼を軽く閉じた後…ツンと尖らせた桜色の唇を俺の顔に近付けた。
俺は、心配になって、ユイの手を振り解き、ユイの額に手を当てた。 …熱は無いようだが…。
その途端、ユイの表情が変わった。いつもの不敵な笑みを浮かべ…
「…これで理解したであろう! 兄が『誠実』と言われた理由を!」
こいつ~、引掛けやがって~
人差し指で、ユイのひたいを突っついた。
ユイは舌をペロッと出して「てへっ」
…と笑う
かと思ったが、極真空手でいう『中高一本拳』で、みぞおちを素早く正確に突かれ、四~五日ズキズキ痛む羽目になったのは、言うまでもない。
油断していた…流石は司令官に昇り詰めただけの事はある。もう、金輪際止めて欲しいと嘆願書を提出する程の、良い突きだったぜぇ。
車内から、駅前駐車場が見えて、鷹音さんとお父さんが両手を振ってくれていた。
…別れ際に鷹音さんは「父の、人を見る目は確かです。 その父が、平さんの『誠実さ』を見抜いたんですから、間違いありません」…と耳打ちしてくれた…。
「腑に落ちんようだな…」ユイが口を開いた。
「俺は、人が言う程《ほど》、バカ真面目じゃないし、言うて自分が可愛いし、司令官の務めだって、ちゃんと果たして無い。 そんな俺が『誠実』なんて、ちゃんちゃらおかしくないか?」…と言うと…
「一つ聴くが、兄は我が衛鬼兵団を『悪用』した事があるか?」と聴かれた。
ユイが、『司令徽章』に何かを呟いた。
「通信参謀に、兄と出会ってからの我が兵団の戦歴を『すまーとふぉん』に送らせた。視てみよ。」
『浮遊玩具帰送戦』
『本次元潜伏用衣服転送』
『航時ニヨル学区変更戦』
『短冊情報複写細胞培養及ビ解読戦』
『地球外殻反転法ヲ用イタ対台風戦』
…懐かしい文字が並んでいる。
「なっ? 何れも『悪事』ではなかろう。」
…ま、まあ、狭義ではそういう事になるかも…な。
最寄り駅に着いた。
時間的に、かなり遅くなったので、人通りは無い。 …まるで世界が二人きりになってしまったような錯覚を覚えながらアパートまで並んで歩く。
ユイが続けた。
「共に『八瀬の国』に行った時、『もし細河が我らと連むのであらば、細河氏を滅ぼすつもりだった』…と言ったのを覚えているか?」
…確かに、初めて聴いた時は、背筋が寒くなった。
ユイは、「我らは誇り高き衛鬼兵団だ。 断じて悪事には手を染めぬ。 兄が、我らを顎で使ったり、私腹を肥やすような計画を立てようものなら、我らは、兄の記憶を消して、別の者を探したであろう …それに…」
…と言った後、立ち止まった。
俺が不思議に思っていると…ユイが…
…俺に抱きついた。
…しばらく、時がそのまま流れた。 ユイの鼓動が早くなるのを感じる。
ユイは、出会った頃と全く変わらない、澄み切った瞳で、俺を見詰めた。
…その瞳は、一切の澱みが無い、純粋な涙を湛えている。
潤んだ瞳は街灯を映し、それはまるで穏やかな海の夜景のように、優しく輝いていた。
そして、俺の肩に手を回し、つま先立ちになり…その透き通る様な眼を軽く閉じた後…ツンと尖らせた桜色の唇を俺の顔に近付けた。
俺は、心配になって、ユイの手を振り解き、ユイの額に手を当てた。 …熱は無いようだが…。
その途端、ユイの表情が変わった。いつもの不敵な笑みを浮かべ…
「…これで理解したであろう! 兄が『誠実』と言われた理由を!」
こいつ~、引掛けやがって~
人差し指で、ユイのひたいを突っついた。
ユイは舌をペロッと出して「てへっ」
…と笑う
かと思ったが、極真空手でいう『中高一本拳』で、みぞおちを素早く正確に突かれ、四~五日ズキズキ痛む羽目になったのは、言うまでもない。
油断していた…流石は司令官に昇り詰めただけの事はある。もう、金輪際止めて欲しいと嘆願書を提出する程の、良い突きだったぜぇ。
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